訴訟大国アメリカでの心構え

訴訟大国アメリカでの心構え


 アメリカにいると、よく耳にする「Sue (スー)」という単語。日本語に訳すと「訴訟を起こす」になる。

 アメリカ人は「訴える」ということを簡単に口に出す人たちだということを、今日は皆さんにお伝えしたい。訴訟大国のアメリカでは、自分の身は自分で守るのが当たり前だ。納得のいかないことがあっても、困った事態に追い込まれても、すべて「自己責任」で処理しなければならない。だから、何かが起こった場合に最初にすることは「訴訟のプロ探し」なのである。アメリカで訴訟にのぞむためには、この国の法律の背景を完璧に理解できる、痛々しいほどに機械的な弁護士を味方につけることが必須である。

 特にビジネスをしている人であれば、お抱えの弁護士がいるのが通常だ。日本で弁護士を雇うと聞くと、なにか「物騒なこと」でも起きたような恐怖を覚えるかもしれないが、この国では弁護士を雇うことは一般的だ。しかも弁護士ごとに専門分野があるために、ケース・バイ・ケースで雇う弁護士を変えることも一般的である。様々な問題を相談できる「なんでも弁護士」に加え、会社法務専門や財務の弁護士、離婚弁護士、事故で怪我をした時の弁護士、移民弁護士など、専門をあげたらキリがない。 人口約3,985万人のカリフォルニア州だけでも今年6月時点で18万9500人以上のアクティブな弁護士がいるのだから、どれだけ多いか想像できるだろう。アメリカは契約社会で、口約束などあり得ないため、「言った、言わない」の議論を後からするなどは、もってのほかである。書面上の合意は何よりも重要であり、それがなければ何も先には進まないことを覚えておいてほしい。

 弁護士たちは、依頼を受けると「この訴訟をどうお金にするか」を考える。法律と向き合い、言いたい放題の喧嘩をする。訴訟に勝てる弁護士は優秀とみなされて、弁護士費用が高くなる。1時間平均$300〜の時給チャージに加え、高額な成功報酬を請求する。このように「儲かる仕事」だからこそ、この国には弁護士がやたらと多いのだ。弁護士は頭がいいだけではなく、口が達者であることが優位になるので、そうした資質がある人はプラスになる。この訴訟大国では、いかに自分が言い分を言い切るか、理由や言い訳を上手に口で説明して納得させられるかがお金の%を決める鍵となる。「言った者勝ち」とはよく聞くが、口で攻めてポジティブに持っていくことは、ビジネスの世界でも有効に使われている。

 ちなみに私が過去に経験した「言ったもの勝ち」は、運転中の罰金だ。本来は$900の罰金を取られるケースだったのを、過去すべての保険の内容のコピーなど、基本的な書類の提出に加え、法廷でことの経緯や諸々を裁判官に大きな声で訴え続けたおかげで、最終的に罰金を半額の$450にまで下げることができた。この国では訴訟を起こされて法廷に行ったとしても、置かれた状況を自分のプラスに持っていく姿勢や、自分には非がないと言い切ることがとても重要だ。口頭で話をポジティブに変えるのである。補足すると、そういう「言い切り」や「議論」に勝つ訓練というのは、この国では小学校の授業にすら取り入れられている。アメリカ人は議論に慣れている。後から移民する人は、それを前提に日ごろからディベート(議論)訓練が必須だろう。

 冒頭でアメリカでは全てが「自己責任」と書いたが、市民サービスと思えるものでも、アメリカではそれを利用する判断は「自己責任」だ。例えば、この国では病気になって救急車を呼んで病院に行くだけでも大金がかかる。救急車はタダではない。州によっては、救急車の利用料金が2000ドルの場所すらある。2000ドルを支払いたくない人は、どんなに具合が悪くても自分で運転して病院に行くのが常識なのだ(交通事故で駆けつけた救急車だけは別)。自己責任の国では簡単に第三者に頼ったり、依存できると思わない方がいいということも、覚えておくと良いと思う。

 アメリカでは、本当にくだらないことでも訴訟を起こす人がいるので、「それはあり得ないだろう」と思うようなことでも訴訟を起こされる危険性があることはお忘れなく。マクドナルドで買ったコーヒーを勝手にこぼして火傷(実際には超軽度)した人が同社を訴えて多額な賠償金を得た話あまりに有名だが、そんな信じられないような訴訟が起きるアメリカでは「何かあったら弁護士に直行」を徹底してほしい。

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