アメリカの農場地帯で働く不法滞在の農夫たち、昨年の倍以上が逮捕

アメリカの農場地帯で働く不法滞在の農夫たち、昨年の倍以上が逮捕


 「犯罪を犯した不法移民を取り締まる」を公約のひとつに掲げたトランプ大統領が就任して半年以上が経ち、不法移民の拘留、強制送還が劇的に増えている。
 メキシコからの移民の多い農場地帯、ワイオミング州とコロラド州では、今年1月20日から4月29 日の間に拘留、強制送還された人々の数は昨年の倍になっている。その多くが不法移民とは言え、犯罪歴のない人々だ。同地域で昨年、犯罪歴がなく逮捕された不法移民は28人だったが、今年はすでに134人に上る。そして強制送還された人は、昨年1年間で121人だったが、今年はすでに299人に上っている。
 米国土安全保障省移民関税執行局(ICE)の取締官は、「犯罪歴のある者の逮捕を優先するが、不法移民がみつかれば犯罪歴がなくても逮捕する。不法に入国した時点で、すでに犯罪をおかしているのだから」と話している。
 アメリカ生まれの子供たちを残し、親だけが強制送還されるという悲劇が生まれている中、迫り来るICEの手に怯えて暮らす農民たち。トランプ大統領の移民政策に対するRedとBlueの見解はいかに?

出典『Wyoming News』
元記事「Increased ICE activity spurs worries in Wyoming farm country」
http://www.wyomingnews.com/news/local_news/increased-ice-activity-spurs-worries-in-wyoming-farm-country/article_576673f0-5fae-11e7-b306-13dc66c373dd.html

RED: 答えは単純。「ルールはルール」
The answer is “The Rule is the rule”

 「不法滞在であっても人権がある」、「アメリカは移民の国なのだから、不法であっても移民は守られるべきだ」。最近この国の多くは、幼稚園生にも教えられる単純な真実を忘れて、おかしな主張をする。遵守すべき法律を守るのは当たり前だ。人権論も、アメリカが移民で成立しているという事実も、争点が異なる問題である。それなのに、おかしな主張をする州や市町村の一部では増税をして、たとえ不法であっても移民を守るという動きがあるという。本来こうした論議の息つくべき先は単純で「ルールはルール」ということであるはずだ。

 アメリカの少なくない農業の現場で、不法にアメリカに滞在する人たちの労働力が不可欠な状態になっていることは当然知っている。安い労働力で働いてくれる人たちを取り締まれないという矛盾ある構図が成り立つジレンマが存在することも、理解しているつもりだ。このあたりの曖昧さを、アメリカでは長い間見て見ぬふりをしてきた。トランプ政権になってから「取り締まりが不当に強化されている」という非難をよく聞くが、当たり前の管理を始めただけに過ぎない話だ。

 不法滞在でも人権云々とか、問題の根本論ではない所に論点を置く議論は未成熟すぎる。本当に必要なのは「労働力を提供する外国人たちへのビザの整備とその管理」という根本の議論だ。もし既存のビザ規定では労働力確保がしにくい分野があるならば、本来もっと議論されるべきは、そのための法整備や新たな解決法などのはず。しかし本件に関して、そうした生産性高い議論が政治の現場からも今のところ聞こえてこず、別の論点がばかりが持ち出されて大騒ぎになっている点が、実に嘆かわしい。


BLUE:ちょっと、ドナルド。農夫を忘れていないか?
Hey, Donald, You Forgot the Farmers

 アメリカには季節労働者のためのH-2Bプログラムという特別な就労ビザがある。トランプ自身もこのプログラムを使って、自分の企業で働く人たちを雇っている。過去には同ビザはアメリカで働いた経験のある申請者を優先して発行されていたが、今年は競争が厳しくなっており、多くの会社や農場は、必要な労働者の人数を獲得できなくなっている。

 トランプ政権の移民に対する攻撃的な姿勢の問題点は、地域と産業に対する計画が、まったく考慮されていないことにある。トランプは製造業や炭鉱業の労働者を援助すると派手に宣伝してみせるが、農作物の収穫を外国人労働力に頼っている農家のサポートはどうなっているのだ? 喜んでこの仕事に就くアメリカ人は決して多くないし、H-2B プログラムで労働者が確保できなければ、不法移民を雇うか、または農場の作物を見捨てるかしかないのだ。今、不法移民たちは新しい政権のもとで、いつ捕まるかと恐れおののいている。このままだとノースカロライナ州では魚介処理場が廃業になり、全米の農場では農作物を失い、アメリカ人消費者は食品価格の高騰に直面することになるだろう。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者  
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

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