歩道での白人女性の行動を「差別的か否か」と問い掛けた記事が炎上

歩道での白人女性の行動を「差別的か否か」と問い掛けた記事が炎上


 『NYタイムズ』紙のグレッグ・ハワード記者が、自身の体験をもとにして同誌のコラム欄『これは人種差別か(Was That Racist)』に寄稿した記事がソーシャルメディアに炎上を引き起こした。
 
 黒人男性であるハワード記者は、「ニューヨークの市街地を歩いて人とすれ違う時、ほとんどの人はお互いに少しずつ脇に避けるが、白人女性だけはまっすぐに歩いてきて、ときには自分は歩道から完全に降りなくてはならないこともある」と述べ、他の黒人男性も自分同様の体験をしているが、これは黒人差別からくるものか、と疑問を呈した。すると、たちまち保守系テレビ局Fox Newsを筆頭に大勢がソーシャルメディアを通して反論、瞬く間に炎上した。これは人種差別か、それとも被害妄想か? 微妙な社会問題、Red とBlueの意見はいかに?

出典『The HILL』
元記事:NY Times reporter accuses white women of racism on city sidewalks

RED: アメリカの左翼主義は精神障害
“American Leftism is a Mental Disorder”

 『NYタイムズ』誌のハワード記者は、ニューヨークの白人女性は歩道で彼を避けようとしないから差別主義だという。面白いじゃないか。差別主義とは、様々な理由から特定の人種を劣っていると考え、その人種を意識的に憎むことだ。しかし、本当にそうなのか? ニューヨーク市のすべての白人女性が黒人差別主義者なのか? 彼がすれ違った女性たちが、たまたま無作法だった可能性はないのか? 何かに気を取られていたとか、単なる不注意だったとか、無頓着だったとか? 他にもいろんな理由があったかもしれない彼女たちは、それだけで差別主義者だと言われなくてはならないのだろうか? 

 ハワード記者は「左翼主義という精神障害」の病にでもかかっている。アメリカの左翼主義は、アメリカを代表するものではない。むしろ彼らはアメリカ人をいろいろなグループにわざわざ分裂させて、人々の不安を餌食に政治的な支持を得ようとしている。ハワード記者は、左翼主義者からアメリカは人種差別の国だと教わったために、ニューヨーク市のすべての白人女性は差別的だと主張しているのだろう。しかも彼は、このバカバカしく中傷的な話を心から信じて新聞にまで書いたのだ。彼は現実の世界に生きていないようだ。アメリカは憲法修正第14条によって、すべての人種の平等が保証された自由国家である。それが事実で現実なのだ。反論する左翼主義者には、それを証明するよう要求する。


BLUE: 状況がすべてだろう
“Context is Everything”

 残念なことだが、アメリカにおいて人種間の関係はいまだに緊張状態にある。きっと同記者がこの記事を書くには、非常に勇気がいったはずだ。

 私もこれまでの人生で、道を歩いていて、向こうから来るグループを避けるために歩道から降りざるを得なかったという体験は何度もしている。世界中のいろいろな都市でそれに遭遇しているし、すれ違う相手もいろいろな人種だが、自分が歩道から降りなければならない相手が黒人のグループだったことは一度もない。

 同記者が書いた記事を読んだ悲観的な読者は、「記者の言う通りだ。同記者の体験は21世紀のアメリカにおける悲しい事実を世の中にさらけ出したのだ」と言うだろう。しかし、もっと楽観的な読者は、人々がグループで歩いている時には会話に夢中になっているから気づかないとか、歩道で人とぶつからないように歩くのは結構難しい、あるいは気づいたときには避けるには遅すぎたので、そのまま歩き続けるしかなかったなど、いろいろな理由をあげるだろう。

 旅行慣れしている読者は、「記事の中に出て来る白人女性たちは、おそらく米国北西部から来た女性だろう」というかもしれない。北西部の人は内気で他人と目を合わせるのが苦手で恥ずかしがり屋だと知られている。そういう可能性も考慮すると、同記者を歩道から降ろした白人女性たちの行為は差別主義者だからそうしたのではなく、内気ゆえに相手を確認しきれなかっただけかもしれない。

 同記者が次に白人女性のグループと遭遇した時には、お互い歩道を譲り合いながら「これも何かの縁だから一緒に飲みに行こう」とでもなるような、おおらかな社会になることを願いたい。アメリカではないが、外国のいろいろな街でそういう光景を見たことがある。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者  
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

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