映画監督が教えてくれた、幸せを呼ぶ黄色いサンダル

映画監督が教えてくれた、幸せを呼ぶ黄色いサンダル


 日本でも何らかの「縁起担ぎ」を大事にする人は多いと思うが、それは万国共通なのかもしれない。私の顧客の某映画監督も、ある縁起担ぎを習慣にしていた。

 私が知り合った頃の彼はロサンゼルスで暮らしていて、ほぼ一年中、黄色いサンダルを履いていた。冬のちょっと寒い日でも、彼はいつもそのサンダル姿だった。一度だけ、真冬のニューヨークで彼と会ったことがあるが、その時も彼はサンダルを履いて登場した。しかも、その日の天気は大雪。さすがに驚いて、「まさか、そのサンダルで外を歩いて来たのですか?」と尋ねたが、彼は「それは内緒だよ」と笑っただけで、私の質問には答えてくれなかった。

 その代わりに彼が教えてくれたのは、「黄色い靴下」の話だった。黄色は彼にとって「ラッキーカラー」なのだと言う。以前、誰かから、「あなたは足元に黄色を身に着けると良い」という話を聞き、黄色いサンダルを履くようになったらしい。そして、そのサンダルを履くようになってからというもの、本当に何もかもが上手くいくようになったという。

 「運が良くなったので、いろいろ調べてみたら、このサンダル屋のオーナーがすこぶる運がいい男だと分かったんだ。なるほど、と思ったよ。幸せは伝染するからね」と、彼は言った。そして、「一度、“魔がさして”黄色いサンダルではなく、黄色い靴下を履いた日があったんだ。そうしたら、その日に僕は携帯をなくして、起用したかった役者に映画の出演を断られた。だから、その後に調べてみたら、その靴下のメーカーのオーナーは運が悪い奴だった。やっぱりな、って思ったよ」と、ふざけたように笑った。

 彼に限らず、身に着けるものにこだわるビックネームはたくさんいるが、彼らの多くがこだわるのは、何といっても、それを作った人の「幸せ度」だ。彼は私にとって最初のハリウッド関係者の顧客だが、彼と契約する際に、彼のエージェントから開口一番に聞かれたのは、「あなた、幸せ?」という質問だった。そして、担当の女性は当然のようにこう言ったのだ。

 「私の依頼人を含め、ハリウッドのセレブリティの多くは、本人が幸せではない運命鑑定人は絶対に雇わない。運命鑑定だけでなく アーティストやデザイナー、それから依頼人に手で直接触れるマッサージ師やネイリスト、ヘアースタイリストも、たとえ腕が良くても不幸な人はダメ。ジュエリー・デザイナーも、ネガティブな人は採用されない。世間で何と広告されていようが、自分が身に着けるものが、“本当は不幸な人”が制作したものだったら、そのマイナスのパワーが移るような気がするでしょう?」

 この仕事をしていると、成功している人ほど、運の悪い人やネガティブな人を嫌う傾向が強いと実感する。たとえば日本でも流行っているパワーストーン・ジュエリーにしても、「パワーストーンだから」という理由だけでセレブリティが品物を選ぶことは、ほぼない。彼らが何よりも気にするのは、品質はもちろんのこと、それを扱う人の持つエネルギーだ。私自身も彼らに倣い、身に着けるものの作り手が誰なのかは常に気にしているが、「よいエネルギーで作られたものを手にしている」と思うと、それだけで気分がよくなるから不思議だ。これは結構、大事なことだと思う。

 ニューヨークでその映画監督と会った後、数年経ってから再会した際には、彼は黄色いスニーカーを履いていた。「今日はスニーカーなんですね」と言ったら、「あのサンダル・メーカーは、オーナーが変わったんだよ。新しいオーナーは運が悪いんだ」と、彼は言った。そしてウインクしながらこう続けた。「このスニーカー・メーカーのオーナーは、運がいい奴なんだ」。

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