保守派がトランスジェンダー入隊に反対する真の理由

保守派がトランスジェンダー入隊に反対する真の理由


 米軍へのトランスジェンダー入隊を禁じたトランプ大統領の決断を、保守派は歓迎している。

 アメリカのメディア報道を鵜呑みにすると、これは「トランプも保守派も心が狭く、トランスジェンダーを差別しているから」だと思えるだろう。しかし、トランプ大統領がトランスジェンダーの入隊を禁じた最大の理由は「医療コストがかかるから」という経済的なものだ。

 軍事、安全保障、宇宙開発などの調査を専門としているシンクタンク、ランド・コーポレーションの調査結果によると、トランスジェンダーの現役米軍兵士は約2,500人で、性転換手術や手術前後のケアーのためにかかる医療費は240万~840万ドルと見積もられている。この額は総軍事予算の0.04~0.13%で全体の1%にも満たないため、リベラル派の市民たちや、その9割がリベラル派である主要メディアは、「そんな微々たる金額を出し惜しみするとは、保守派はマイノリティーに対する愛がない」と言って反発している。

 しかし、そう反発している人々は、イラクやアフガニスタンで戦っている米軍兵士たちが生き残るための必需品を自腹で買わねばならない羽目に陥っている、という悲惨な現実を知らないため(あるいは、知っていても無視している)、このような暴言を平然と吐けるのだろう。にわかには信じがたいことだが、前オバマ政権による軍事予算の大幅カット、さらに絶対にクビになる心配がない国の役人たちの非効率なお役所仕事のせいで、最前線で戦っている兵士たちに防弾チョッキやヘルメットなどが十分に支給されていない。役人の不手際により、迷彩服も砂漠や山岳地帯用の茶色と灰色のものではなく、ジャングル用の黒と緑のものが支給され、戦場でかえって目立ってしまうという愚かな結果に至ったケースもあるほどだ。

 そのため、兵士の家族たちが彼らの命を守るための必需品を買い、非営利団体「トゥループス・ダイレクト」などの団体を通して最前線に送っている現状がある。 兵士の給料は決して高くはなく、裕福ではない家庭の子供たちが兵士になるケースが多いため、兵士の妻や親族たちがなけなしの金をはたいて防弾チョッキなどを買い、アメリカという国のために戦っている配偶者や子どもたちに送っているのである。彼らにとっては240万ドル~840万ドルという金額は大金であり、多くの保守派が「そんなカネがあるなら、まずは戦場の最前線で命の危機にさらされている兵士たちに必需品を買って送るべきだ」と思うのも当然であろう。

 政府が運営する退役軍人病院で順番待ちをしている間に亡くなった退役軍人の遺族や、今も順番待ちをしている退役軍人たちも、「性転換するための手術費に当てる予算があるなら、負傷した退役軍人が私立の病院でも治療を受けられるようにしてほしい」と思っている。

 『ワシントン・ポスト』紙は、米軍が男性機能不全治療薬の購入費に4,160万ドルを割いていることを指摘して、240万~840万ドルを出し惜しみする保守派を叩いた。しかし、男性機能障害は兵士たちが入隊時に持ち込んだ障害ではなく、戦場での恐ろしい経験に起因する心的外傷後ストレス障害(PTSD)の副産物である場合が圧倒的に多く、トランスジェンダーの医療費と比較するのは筋道が通らない。前者は兵役の代償であり、後者は兵役とは無縁の費用だ。

 最前線で戦っている兵士たちの命や退役軍人の治療や健康維持よりも、トランスジェンダーの権利を優先するのは、ダブル・スタンダードではないだろうか? 保守派がトランスジェンダーの入隊に反対するのは、トランスジェンダーの人々に対する愛がないからではなく、戦場にいる兵士たちと、既にアメリカを守るために戦った退役軍人たちへの愛と同情心の方がそれよりも強いからだと思う。

 アメリカの多くのジャーナリストたち(=ホワイト・カラーのエリート)や、リベラル派の人々は、そもそも軍隊が嫌いな人がほとんどで、家族にも隣人にも友人のネットワークにも兵士が一人もいない人が多いため、兵士や兵士の家族の苦悩を理解できないだろうし、理解したいとも思わないだろう。アメリカのメディアが保守派の心境を公正な視点から報道する日が訪れることを願うばかりである。

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