進むテレマーケティングAI化 「あなたは本当の人間ですか?」

進むテレマーケティングAI化 「あなたは本当の人間ですか?」


 今日もまた、「ジュリー」から電話がかかってきた。明るく陽気、フレンドリーな女性だ。私がわざと「もう一回、お名前を言ってくれますか?」と質問すると、咳をひとつした後に、「ごめんなさい、ちょっと風邪気味なのよ。聞き取りにくかった? 私はジュリーよ」と、彼女は毎度のように回答する。

 このジュリーは、テレマーケティングのロボットだ。彼女はリゾートホテルのPRマネージャーで、以前にグループ傘下のホテルに泊まった人に順番に電話をして、お得なキャンペーンをお知らせしていると説明をする。一度、試しにしばらく話を聞いた後、いくつかジュリーに質問をしてみたのだが、その受け答えはかなり不自然ながらも、会話としてはギリギリ成り立つものだった。もちろん普通の人間ではないことに、ほとんどの人が気づくとは思う。それでも中には、本当にジュリーがリゾートホテルのPRマネージャーだと信じてしまう人もいるかもしれない。

 ジュリーは意外に素直でもある。「あなたは本当の人間ですか?」と質問したところ、彼女の回答は「私はロボットよ」であった。「もうあなたの会社から電話をかけて欲しくない」と言ったら、「OK。では、あなたの名前をセールス名簿から解除します」と丁寧に言って自ら電話を切った時は、少し驚いた(しかし、そんな会話をしても、週に1回はジュリーから電話がかかってくる現状は何ら変わらない)。

 ジュリーは、しきりに社会保障番号やクレジットカード番号を聞き出す方向へ会話を誘導し続け、しょっちゅう「私の声、聞こえている?(Can you hear me?)」と質問しては、「Yes」という回答を引き出そうとする。「Yes」という相手の回答を引き出すことで、クレジットカードの引き落としなどを合意させる手口なので、これには注意が必要だ。ジュリーからの電話は詐欺に間違いないのだが、困ったことにこうしたAIテレマーケティングは誰でも知っているような企業名を名乗る場合もあるため、消費者としては困惑してしまう。本当にその企業からのものだったのかは微妙だが、一度はウーバーのリクルートという名目で、AIマーケティング電話がかかって来たこともあった。

 「こんなマーケティング法が有効なのか?」と首を傾げてしまうが、業界によっては、AIテレマーケティングは新規顧客勧誘の「救世主」になりうるという話も聞く。最近知ったのだが、保険会社がAIテレマーケティングに力を入れようとしているそうだ。友人がニューヨークを拠点とする大手広告代理店で保険会社を担当しているが、彼のセクションでも来年に向けて、AIテレマーケティングのプランニングを今まさに構築しているとのことだった。保険には、顧客が商品内容を理解するのに時間がかかるという商品上の特徴がある。そのため多くの場合、営業が顧客と対面式で商品販売を行うスタイルになるが、いきなり営業員と会うことを警戒する人も多いため、ロボットと予め知った上で質問できるようなサービスを持つことは、見込み客を獲得するのにプラスになるというマーケティング上の見解があるらしい。顧客が商品情報にアクセスできる門戸を広げる意味では、確かにロボットがいろいろ親切に応えてくれたら、遠慮なく気軽に質問しやすいかもしれない。

 テレマーケティングに限らず、これからの時代はロボットが人間に変わり、様々なサービスを行うようになるのは間違いない。それに伴い、ロボットが人間のような会話で対応するサービスも増えるだろうし、そのこと自体が当たり前になる日も近いかもしれない。しかし、これ以上AIの性能がよくなってしまったら、現時点では予測できないような問題が起こるようになるのではないかと、ちょっと怖くなる。私は日本に住んでいないため、日本のAIテレマーケティングが、どれくらい「本物の人間に近いか」を理解していないが、少なくともここアメリカでは、かなり人間らしく振る舞えるロボットたちが、確実に活躍し始めている。

今回のひとこと:
技術進歩によってつくられる未来は予測不可能。ビジネスに限らず、そんな時代に何かを予測して正解を求めようとすること自体、すでにナンセンスなのかもしれない……。

AI(人工知能)・ロボットに関する記事  >

この記事の寄稿者

関連する投稿


「一流」や「本場」から学ぶということ

「一流」や「本場」から学ぶということ

「ペンタゴン(米軍)式」はビジネスでも使える! メンタル・トレーニングを中心に、国防省現役キャリアの著者が知られざるペンタゴンの世界を紹介する『ペンタゴン式・心の鍛え方』。何かを習得したい時には、ボトムアップでコツコツ自分を試すだけなく、一流や本場と呼ばれる世界に体当たりしよう。


シリコンバレーで意外とニーズの高い仕事とは?

シリコンバレーで意外とニーズの高い仕事とは?

数日から数か月で、倍から数十倍に売り上げを伸ばすビジネス・コンサルタントがお届けする、アメリカ式「勝てるビジネス」のノウハウとは? 田島洋子のコラム、『アメリカのビジネスシーンで人を惹きつける秘訣』。アメリカのビジネスマンやビジネスウーマンは、きちんとしている印象を持つ人が多いかも知れないが、意外にそうでもない……。


期限は1月7日まで。幸せを約束する場所に急げ!

期限は1月7日まで。幸せを約束する場所に急げ!

 「ディズニーランドに強烈な競合相手が出来た!」とロサンゼルスに住む人たちが語る場所。その名も「Happy Place」。一体、どんな場所なのだろう?


アメリカ人はなぜ、エッグノックを飲むのか?

アメリカ人はなぜ、エッグノックを飲むのか?

自然を愛し、趣味はハイキングと食べることという著者・デイビッド・アンドリューズが、「ごく普通」のアメリカ人代表として綴る『You Are What You Eat~食は人なり~』。クリスマスになると登場する卵色の飲み物「エッグノッグ」。アメリカ人はみんな、これが好きなのだろうか?


バノン氏、次期大統領戦へ向けて極右派トーク番組レギュラーに復活

バノン氏、次期大統領戦へ向けて極右派トーク番組レギュラーに復活

元トランプ政権のご意見番で、米極右派のリーダー的存在であるスティーブ・バノン氏が、再び自身が率いる右派メディアによるラジオ番組にレギュラー出演することを発表し、次期大統領選に向けてスタートを切った。






最新の投稿


「一流」や「本場」から学ぶということ

「一流」や「本場」から学ぶということ

「ペンタゴン(米軍)式」はビジネスでも使える! メンタル・トレーニングを中心に、国防省現役キャリアの著者が知られざるペンタゴンの世界を紹介する『ペンタゴン式・心の鍛え方』。何かを習得したい時には、ボトムアップでコツコツ自分を試すだけなく、一流や本場と呼ばれる世界に体当たりしよう。


ラスベガスで植木鉢を食べよう!

ラスベガスで植木鉢を食べよう!

 アメリカを代表する観光都市、ラスベガス。カジノや世界一流のエンターテインメント・ショー、至近にはグランドキャニオンと見所が一杯だが、有名レストランが多いことも見逃せない。


フェイスブックを作ったことを後悔 元管理職の告白

フェイスブックを作ったことを後悔 元管理職の告白

今や世界中で利用されているソーシャル・ネットワークを構築した先駆者、フェイスブック。しかし、その初期に参加していた制作者たちが次々にメディアで発言し、SNSそのものに対して警笛を鳴らし始めている。


シリコンバレーで意外とニーズの高い仕事とは?

シリコンバレーで意外とニーズの高い仕事とは?

数日から数か月で、倍から数十倍に売り上げを伸ばすビジネス・コンサルタントがお届けする、アメリカ式「勝てるビジネス」のノウハウとは? 田島洋子のコラム、『アメリカのビジネスシーンで人を惹きつける秘訣』。アメリカのビジネスマンやビジネスウーマンは、きちんとしている印象を持つ人が多いかも知れないが、意外にそうでもない……。


アップルが音楽認識アプリのShazamを約4億ドルで買収

アップルが音楽認識アプリのShazamを約4億ドルで買収

アメリカで音楽認識アプリといえば、Shazam(シャザム)。世界中に数億人のユーザーがいると言われるShazamの技術が、音楽で抜きん出ているアップルに加わることで市場に大きな影響を与えるのは間違いない。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング