読書の秋に問題勃発! 人気児童書は人種差別のプロパガンダか?

読書の秋に問題勃発! 人気児童書は人種差別のプロパガンダか?


 ここアメリカでも、この季節は「読書の秋」。アメリカの学校は通常9月に新年度がスタートするが、子供たちが最初に取り組む課題のひとつが「読書」だ。9月6日には「National Read a Book Day」という国をあげて読書を推奨する日もあり、それに合わせて学校や地域の図書館は様々なイベントを組む。

 ところが今年は、この「National Read a Book Day」をめぐり、問題が勃発した。事の発端は、メラニア・トランプ大統領夫人が、マサチューセッツ州の小学校に『Dr. Seuss』という絵本シリーズをプレゼントしたことだ。

 メラニア夫人が本を贈ったケンブリッジポート小学校は、優れた教育指導を行うことで知られており、過去に何度も様々な賞を受賞している名門校である。夫人は学校の教育指導を讃える丁寧な手紙を添えて、「是非、学校の図書室に」と、本をプレゼントしたのだが、なんと同校の司書担当教員が本の受け取りを拒否したのだ。

 拒否の理由は、すでに同校の蔵書は十分であること。そして、この本の主人公が「人種差別主義のサルであり、差別を肯定するプロパガンダだから」という理由だった。日本でも翻訳本が出版されているので、この本を知っている読者も多いと思われるが、アメリカでは『Dr. Seuss』を知らない子供はいないと言われるほど人気の高い児童書だ。この本を読んで、「人種差別の本」だと解釈した人は、限りなく少ないだろう。

 同司書はこの見解を学校のブログで公開した上で、メラニア夫人に対して「あなたには指先ひとつで優れた人たちにアクセスできる権限もある。良い本を選択したいのなら、近所に議会の図書委員とトップ、ヘイデン博士がいるので、彼に相談して助言をもらった方がいい」と書いた。当然これは騒ぎとなり、メディアが大きく取り上げる事態となった。

 同校を管轄するケンブリッジ学校区は、「教員たちの思想志向や活動関与は問題にすべきものではないが、学区が管理する公のブログ上での発言は、学区の見解として出されるべきものである。今回の発言は個人的な政治見解であり、学区としてはその発言を承認していない」と述べている。

 実はこの本のシリーズは、国民の人気の高かったミシェル・オバマ前大統領夫人も夫の在任中に、ファースト・レディの社会活動の一環として、好んで子供たちへの読み聞かせなどに使っていた。保守系メディアがこの事実を取り上げ、「Dr. Seussが人種差別主義で、メラニア夫人がそれに気づかない配慮に欠けるファースト・レディならば、オバマ夫人も同等だ」と騒いだために、ことはさらに悪化。複数のリベラル派メディアもこれに応戦し、「オバマ夫人の名前をここで取り上げるのは筋違い。彼女こそ、マイノリティーのために戦った英雄だ」と反撃している。

 BizSeedsが編集部を置くシアトル市は、リベラル支持が基盤のワシントン州にあるが、同州ポート・タウンゼント市の図書館で長年にわたり司書を務めるアンダーソン氏は、「こんなバカげた話は聞いたことはない」と、ため息交じりで編集部の取材に応じた。

 この問題が明るみに出て以来、トランプ政権への嫌悪感を持つ過激なリベラル派たちの一部が、Dr. Seussを図書館から完全撤廃すべきだと訴える行動に出ているという。同氏はこうした訴えにも対応しなければならず、「昨年の大統領選挙以降、過激なリベラル派と過激な保守派たちは、ことあるごとに対立し続けているが、暴れているのは“超”がつく極端な人たちだけだ」と、事態に呆れていた。

 アンダーソン氏は、「Dr. Seussは、アメリカの子供たちの誰もが愛する物語だ。キャラクターが白い顔をしたサルだとか、卵が緑とか、そういう理由でこの物語を人種差別だと言うのは、単なる言いがかりだ。私もトランプ大統領には賛成しかねる部分は大いにあるが、本の贈呈は政治には関係ない。大統領夫人がもしも、この図書館に本を贈ってくれたら、きっと有難くその気持ちに感謝するだろう」と話している。

 秋は、落ち着いて読書をするには最適の季節だが、この事態が落ち着くには、まだまだ時間がかかりそうだ。

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