「PC」:ポリティカル・コレクトネス(Political Correctness)という常識

「PC」:ポリティカル・コレクトネス(Political Correctness)という常識

アメリカに住んでいると、アメリカ人たちがしきりに「PC」という言葉を使うのを耳にする。ちなみにこの「PC」とは、「パーソナル・コンピューター」の略ではない。さて、アメリカでPCと言ったら何のこと?


 PCとは、ポリティカル・コレクトネス(Political Correctness)のこと。多様化が進む現代アメリカ社会では、昨今、非常に重要視されてきた考え方で、「公平、中立、差別、偏見がない表現を心がける」というものだ。公平や中立さに欠ける発言や、差別や偏見が少しでも含まれる発言は、人として口に出してはいけないという風潮は以前からあるが、そのハードルが年々高くなってきている。

 例えば椅子に座れないくらい太った人に、「太っているのは体に悪いから、食生活に気を付けて、運動をしたほうがいい」と助言した医者が、「人として否定され、心を傷つけられた」と、その人から訴えられることもあるのがアメリカ社会。これはかなり極端な例だが、PCに基づくならば医者は「太っているのは体に悪いから」という部分は言わず、つまり「太っている」と思っても一切、口には出さずに話を進めるのがPCにのっとった話し方となる。

 その他にもイスラム教徒の女性に「なぜ顔を隠さないのですか?」と聞いて訴えられた例や、ゲイの男性に女性は嫌いなのかと尋ねたり、生まれも育ちもアメリカである日系人に対して「日本人なのに英語が上手ですね」と言って絶交された例、洋服を着たままプールで泳いでいる人を監視員が注意したら「宗教上の理由なのに差別を受けた」と文句を言われる等、日本では考えられない程度の発言で相手を怒らせてしまうことが多いのは、さまざまな人種が暮らしている国だからであろう。

 しかし、昨今では行き過ぎたPCを問題視する人も多い。総体的にみると、マイノリティや人権重視を大切にするリベラル地盤の方が、保守地盤の地域よりもPCを求められる度合いが高いため、リベラル志向であってもPCに疲れてしまい、保守の土地へ引っ越す人などもいる。 どんな言葉をどんな場合に使うと、それが差別や偏見となり、PC的に正しくないのかなどは、ガイドラインを設定できる類のものではないが、PCに縛られすぎて疲弊してしまうのも、あまり良いことではない。人々が何もかもすべてをPCのせいにする傾向に走ってしまったら、それこそ他人との会話も簡単には楽しめなくなってしまうだろう。アメリカ社会におけるPCは重要だが、課題も山積みだと言えそうだ。

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