【Red vs. Blue】あのシェル石油がパリ協定を支持! 米国のロビー支援をやめると発表

【Red vs. Blue】あのシェル石油がパリ協定を支持! 米国のロビー支援をやめると発表

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は世界的な大企業のシェル石油が気候変動抑制を支持し、長年の米国でのロビー活動をやめると発表したことについて。


 トランプ政権が米国において強力な温室効果ガスであるメタンの排出規制を緩めている中、大手石油企業のロイヤル・ダッチ・シェル社は今月2日、気候変動抑制に関する多国間の国際的協定であるパリ協定の目標達成支持を理由に、米国でのロビー活動を2020年にやめることを発表した。
 同社のベン・ファン・ブールデン最高責任者は、パリ協定の締結以来、「気候変動に対応した緊急行動の必要性が明らかになり、シェルの見解も進化した」と述べ、ロイターは、「これは特に欧州において、石油会社に対する投資家の圧力が大きく影響していることの表れだ」と報じた。
 今後は、気候変動に多大な影響を与える石油・ガス業界が、シェル社の動きに続くかが注目される。気候変動について正反対の立場をとってきた本欄の保守派とリベラル派アメリカ人はシェル社のこの決断をどう捉えるのか。

Citing climate differences, Shell walks away from U.S. refining lobby
https://www.reuters.com/article/us-shell-afpm/shell-to-quit-u-s-refining-lobby-over-climate-disagreement-idUSKCN1RE0VB
出典:「ロイター」

Red: 妄想的な環境運動家に屈したシェル石油。企業としての気骨がない!

Shell Oil lacks a corporate spine, gives in to delusional environmental activists

 シェル石油の幹部らが2015年のパリ気候変動合意に関する考えの相違を理由に、米国を本拠とする石油ロビー団体からの脱退を表明した。AFPM(米国燃料石油化学製造者協会)との間で、気候政策に関してシェルの方針と「重大な不一致」があったと説明している。

 表向きには、これは気候警報者や過激な自由主義者たちにとってはシェル石油の勇気ある行動として好意的に受け止められたかもしれない。しかし悲しいかな、それは事実ではないだろう。私見だが、シェル石油は単に環境活動団体「Follow This」の要求に屈しただけだ。「Follow This」は最近、株主総会の決議を通して会社に圧力をかけたと言われている。もちろん同団体はシェル石油の競合他社(British Petroleum、Equinor Chevron)もターゲットにして、無意味で非現実的な株主動議を出しているが、ありがたいことに環境警告主義に負けない断固とした両社の経営陣は、これまでのところ団体の圧力を無視している。

 シェル石油の目標は、2050年までに温室効果ガスの排出量を半減させ、今世紀の終わりまでにカーボンネットをニュートラルにすることらしい(パリ協定の合意目標)。しかし、シェル石油のウェブサイトを見ると、すべてが冗談だということがわかる。去年1年だけを見ても、シェル石油(および同社に関連する世界規模の事業施設)は、7,300万トンを超える二酸化炭素(CO2)を生産している。彼らは「30年後にはCO2の排出を50%削減できる」と言っているが、それで石油生産事業に携わることができるという考えは噴飯ものだ。

 ここで忘れてはいけないのが中国だ。中国は2018年、CO2の排出量を2.5%増加させ、年に100億トンを超えるCO2を排出する世界最大の温室効果ガス汚染国となった。CO2を世界的な問題として考える場合、シェル石油が2018年に排出したCO2は、中国が去年、追加生産した2,500万トンのたった1/3にすぎない。気候変動が問題だと考えるかどうかは別として、CO2問題は石油業界のものではない。

Blue:トランプのアメリカはビリ争いに勝てるのか?

Trump's America: Winning the Race to Last Place?

 120年前、アメリカには2,400万頭の使役馬がいた。やがて自動車が道路を占領し始め、馬糞の汚れや臭いはエンジンの騒音や排気ガスに取って代わられた。自動車は、組み立てや修理工場、そして道路建設の分野で雇用を創出し、石油産業を生み出した。1926年には馬車メーカー・アメリカ協会による最後の会議が開催され、数年後に車が世界を一変させた。

 騒音や排気ガスにもかかわらず、1926年の時点では、内燃機関エンジンが地球にどんな影響を与えるかなど誰も考えなかった。しかし1960年代には知識が浸透し始め、今では、我々が使う化石燃料が地球温暖化を起こしているということは、あまりにもよく知られている。

 石油生産国にとっては政治的に居心地の悪い状態が続き、ときには道徳的に疑わしい貿易相手国とみなされるようになった。しかし、トヨタはハイブリッド・カーの技術を開放し、欧州諸国は非電気自動車を禁止する方向に向かっている。シェルのような大手石油会社でさえ、何年も前に変化の兆候を読み取り、再生可能エネルギーを受け入れている。

 だが残念ながら、世界が急速に再生可能エネルギーを取り入れている中、トランプ政権は科学者を解雇し、太陽エネルギーを笑いものにし、石炭を採掘することで気候変動を阻止できると考えている。

 技術革命の結果が馬車の崩壊だったが、再生可能エネルギーの開発も同じだ。トランプが「キャデラックが成功を意味し、ガソリン1ガロンが数セントだった頃の20世紀の偉大なアメリカの妄想」に固執している間、残りの人々は「電気自動車は臭いを出さず、地球を破壊することもない」という、シェルが理解していることをすでに知っている。もし我々が100年前の気の毒な馬車メーカーから学ぶことがあるとしたら、それは、古い技術に最後まで固執するのは決して勝利のビジネス戦略ではない、ということだろう。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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