国税庁を味方にトランプ大統領を窮地に追い込む民主党

国税庁を味方にトランプ大統領を窮地に追い込む民主党

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、政敵トランプ大統領に対し国税庁を使って追い詰めようとしている民主党のやり方について、保守派の見解を披露する。


ロシア疑惑が晴れても諦めない、米リベラル・メディアと民主党

 2年間にわたるモラー特別検察官の調査で、「トランプがロシアと共謀した証拠はない」と判明した後も、民主党は「納税申告書には、トランプがロシアと何らかの裏取引をしてカネが動いた履歴が記されているはずだ」と、トランプ大統領の過去6年間分の納税申告書の公開を要求している。

 これに対してトランプ側は、「疑惑が晴れたのに納税申告書を要求するのは理に適っていない。政敵を罰するために国税庁を濫用する民主党は、『どんな人間にも罪を着せることができる』と言ったスターリン時代の秘密警察署長のようだ」と反論。

 しかし、リベラルな米大手メディアは民主党の要求を擁護し、「政敵成敗のために国税庁を使う、というのはニクソン大統領(共和党)が使った手口。米政治史上で最悪のウォーターゲート・スキャンダル(ニクソンが民主党本部を盗聴した事件)に匹敵するロシア疑惑のさらなる捜査のために、民主党がニクソンと同じ手を使わざるを得ないことは皮肉だ」と言っている。

国税庁を使って政敵を罰するのは民主党のお家芸

 ニクソンが国税庁を濫用したのは事実だが、「政敵を倒すための常套手段として国税庁を武器化した」のは、金持ちに79%の所得税を掛けて富の再分配を行ったことで知られる民主党のフランクリン・ルーズヴェルト大統領だ。

 ルーズヴェルト元大統領は、政敵のヒューイ・ロング上院議員、ハミルトン・フィッシャー下院議員、彼を批判したシカゴ・トリビューン紙のロバート・マコーミック編集長、フィラデルフィア・インクワイアラー紙のオーナー、モーゼス・アネンバーグ、減税を唱えた実業家のアンドリュー・メロンなどに、政府の弾圧としか思えないような徹底的な会計監査を強行した。特にロング議員とメロン氏に対しては、エルマー・アイリー国税庁監査部長が長期間にわたる調査後に「不正行為は見つからなかった」と報告した後も、ルーズヴェルト元大統領は諦めず執拗な調査を止めなかった。結局ロングが暗殺され、メロンが癌で亡くなるまで徹底監査が続行されたのだった。

 その後はケネディ(民)、ジョンソン(民)、クリントン(民)、ブッシュ(共)元大統領も会計監査で政敵や政権に批判的な人物/組織を罰している。最近の例ではオバマ政権下の国税庁が保守派の草の根団体を潰すために画策し、「徹底的な会計監査をいくつも行い、彼ら(保守派の団体)を財政的に破産させよう」と言っていたことが情報公開法で開示された資料で明らかになっている。

 そもそも共和党は小さな政府と減税を目指す党で、民主党は政府の権力拡大と重税を望む党である。国税庁の役人には民主党派が多く、政府や大組織の権力濫用を調査する非営利団体「センター・フォー・パブリック・インテグリティ」の調査(2013年)によると、2012年までの20年間で国税庁の役人が行った政治献金の3分の2が民主党議員や民主党支持組織に対して行われている。政敵を苦しめる道具として特に民主党が国税庁を使いたがるのもうなずける。

 しかし、米大手メディアは民主党の汚点には滅多に触れず、常に悪者の代名詞としてニクソンを引き合いに出し続ける。そのため保守派は「あぁ、またフェイク・ニュースが共和党を悪く見せようとしている」と、大手メディアへの不信感をさらに深めているのである。

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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