自分の子供を愛せない子供を愛せるか

自分の子供を愛せない子供を愛せるか

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。日本よりも養子縁組や里親制度などが社会に浸透しているアメリカ。ふと見渡せば、養子や里親がいるという人も多いが……。


「その顔の傷、どうしたの?」

 先日、私が理事を務める子供劇団で、フォスターケア歓迎会があった。フォスターケアとは、虐待等を受けて実親とは暮らせなくなった、あるいは孤児になったような要保護児童救済のシステムで、どの地域にも大抵ケアセンターがある。この歓迎会は、そんな子供たちと彼らの里親になった大人たち(フォスター・ファミリー)を招いて、劇団体験をしてもらうという趣旨のイベントで、毎年たくさんのフォスター・ファミリーが参加している。

 自らも里親になっている友人の女性がこのイベントのリーダーだったが、その彼女が当日、片方の頬を横断する深い傷を作って会場にやってきた。「どうしたの、その顔の傷?」と聞くと、彼女は「3ケ月ほど預かっている里子に噛まれたのよ」と答えた。

 「私はいいの。でも彼は娘のことも噛んでしまったの。自分や自分の愛する家族を噛んでしまう子供を、愛をもって受け入れるって、とても大きな学びの機会よ。」――彼女は淡々と、そう続けた。

里親をリベラルの州で探すのは大変?

 彼女の里子の噛みつき癖に限らず、愛されることも、人を信頼することも経験したことがない子供たちは、様々な問題を抱えていることが多いという。しかし、そういう問題があっても彼らを受け入れ、愛し、励まし、楽しい時間を与える――里親になった以上は、その覚悟があって当然だと彼女は語った。そう迷いなく語る彼女の言葉に、ちょっと胸が熱くなった。

 彼女は夫が軍事関係なので引っ越しも多く、シアトル近郊に越して来るまではリベラル派の州に住んだことはなかったらしい。保守派の州では熱心なキリスト教信者が多く、そうした人の中から新たな里親をリクルートすることが比較的容易にできたというが、リベラルの州ではどうも勝手が違うと言う。

 「リベラル派の人が里親になることを嫌うという意味ではないが、リベラル派の興味は、親のいない子供たちを世話することより、性や人種の多様性、不法移民保護や環境保護に傾くようだ。保守派は自国の問題の解決が先だから、里親になることに熱心なのかも知れない。」

 リベラル派はグローバルな問題解決、保守派は自国の問題解決に目が行く――彼女の分析は実に興味深い。しかし、いずれの場合も、「世の中を良くするための行動」に出られる人は素晴らしいと思う。

この記事の寄稿者

青山学院大学卒業。コマーシャルなどの映像コーディネーターを経て1998 年、宝塚歌劇団香港公演の制作に参加。その後プロデューサーに転身。株式会社MJ コンテスほか複数企業の代表として、ネバダ州立大学公認のピラティススタジオ日本進出事業や各種研修事業、2007 年に行われた松任谷由実の 「ユーミン・スペクタクル シャングリラⅢ」をはじめとする国内外の舞台・イベント制作など、さまざまな事業を展開。これまでにベストセラー数冊を含む70以上の書籍、DVD 作品を企画、プロデュース。現在も様々な事業を展開しながら“Go Tiny”(大切なものが、すべて半径5メートル以内にあることに気づこう!の意)というライフスタイルの提案も展開中。

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