知られざる米南部の高い“コンサバ度”

知られざる米南部の高い“コンサバ度”

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などをアーカンソー州よりジョーンズ千穂が紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回は沿岸部大都市に比べると驚くほど保守的な文化を誇る南部地域で、著者が経験したことを交えてそのコンサバ度合いを紹介する。


映画のタイトルまで変えてしまうバイブルベルトの“TPO”

 米国内で現在上映中の人気アクション・コミックを映画化した「HELLBOY」。しかし米南部では、映画そのものとは異なる部分に注目が集まった。

 「HELLBOY」を文字通り訳すと「地獄の男子」となるが、ここ南部では、この「HELL」という単語が使われることは大変問題だと思う人が多いのだ。ある映画館では、興行中の映画のタイトルを書く外看板に、「HELLBOY」の「HELL」を南部では代用として使われる「HECK」に置き換えて、タイトルを「HECKBOY」に変えて掲載した。

 この看板を掲げた映画館は、小学校の隣に位置し、しかも向かいは教会だ。映画館のオーナーは「小さな子供たちも目にする看板です。神を冒涜するような言葉は一切掲載いたしません」と話している。米南部の文化を理解する人なら、「なるほど、いかにも南部らしいじゃないか、ハハハ」と笑って終わるところだろうが、子供の教育に熱心なコンサバで敬虔なクリスチャンたちにとっては、これは笑って済ますことはできない大事な問題なのである。

親の服装が派手過ぎると子供が学校に入れない?

 言葉だけでなく、南部は服装にもうるさい。たとえばテキサス州の高校では、母親の服装が原因で子供が高校に入学できなかったという事件も起きている。

 この母親が身につけていたのは、「丈の短いオフショルダーのワンピースからブラジャーの肩紐が露出し、足元はゴム製のビーチサンダル」だった。これは他の土地ではそれほど問題になるような服装ではないだろうが、南部ではそうはいかない。なぜなら露出度の高い服装は「だらしがない」とみなされ、好ましく思われないからだ。

 日本でも子供の学校の入学式に出席する際の服装は、スーツやビジネス・カジュアルが主だろうが、米南部でも日本と同じようにTPOが重視される。だからと言って、そんな格好をしていた当人ではない子供(生徒)が入学を停止されるほど問題視されるのは如何なものかと思うかもしれないが、南部のコンサバ事情を理解すれば、「さもありなん」な事件だと言えるだろう。

 逆に言えば、米南部では「ちゃんとした身だしなみをしていると好印象を与える」。私も米南部出身の夫に結婚当初、「お願いだからゴム製のビーチサンダルを履いて買い物には行かないで欲しい」と言われたことがある。それを言われたときは、「なんでそんなことを言うのかしら?」と不思議に思ったものだが、これは私がこの地で接する人たちから雑な扱いをされたり、不快な言葉使いをされないようにとの夫の配慮だったことを後になって知った。

 そんな夫の母、つまり私の義母は敬虔なクリスチャンで、コンサバ度はかなり高濃度だ。その義母から以前、私は自分の服装について「一言」頂いたことがある。コンサバな義母だと聞いていたので、「ハイネックのセーターとジーンズ、ロングブーツ」で出掛けところ、「ジーンズの裾をブーツインしていた」ことが問題だったようで、そのような格好は「inappropriate」、つまり好ましくないという指摘を受けた(苦笑)。

 ちなみに義母は、私たちの結婚式の直前に私のウエディングドレスを確認しに来て、それがオフショルダーのドレスだとわかると、「肩は隠すように」とケープを買って下さった(笑)。嫁姑問題は世界共通であることを痛感すると共に、南部地域のコンサバティブ度を実感したエピソードだ。

この記事の寄稿者

 東京都出身。アメリカ人航空機パイロットの婚約者の米本土転勤に伴い、一般企業を退職。K-1 Visa にて渡米したのち結婚。現在、アメリカ南部アーカンソー州在住。移住後はパイロットを夫に持つ婦人の会や、日本語補習学校を通じての活動、現地日本人や移民•マイノリティーへの支援、生活アドバイス、ネット上でのアメリカ生活に関する相談・コンサルテーション、翻訳、通訳、観光案内など、国際線パイロットの夫のスケジュールに翻弄されながらも、さまざまなボランティア活動に力を注いでいる。

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