【Red vs. Blue】全米ライフル協会に迎合するトランプ、国連武器貿易条約から離脱か?

【Red vs. Blue】全米ライフル協会に迎合するトランプ、国連武器貿易条約から離脱か?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は、銃規制に反対する全米ライフル協会を支持するトランプ大統領が、同協会の会合で「国連武器貿易条約」から離脱すると発言したことについて。


 先月26日、インディアナポリスで行われた全米ライフル協会(NRA)の年次会合でトランプ大統領は、米国は国連の武器貿易条約から離脱すると述べた。同条約は2013年に国連安全保障理事会にて賛成多数で採択され、オバマ大統領が署名。国連代表は条約を「国際的な武器の移動に対する責任を明確にする上での画期的な成果」と絶賛したが、米国内では銃規制に反対するロビー団体であるNRAが強く反発し、米上院では批准されていない。今回の大統領の発言について国連当局は、米国が離脱を計画していることは把握していないと語っている。トランプ大統領はパリ協定に始まり、核開発を巡るイランの制裁解除など、オバマ大統領が署名した国際条約からの撤退を次々に表明している。こうしたトランプ大統領の動きを本欄の保守派とリベラル派アメリカ人はどう見ているのだろうか。
Trump pulling U.S. out of U.N. arms treaty, heeding NRA
https://www.reuters.com/article/us-usa-guns-nra-trump-idUSKCN1S21RD
出典:「ロイター」

RED: トランプ大統領は米国憲法に違反する国連武器条約から撤退する

Trump leaves U.N Arms Treaty that violates U.S. Constitution

 しばらく前までは、ジャーナリズムとは事実を報道するものだった。しかし今日では、ほとんどのニュースメディアは、単にある一定の見方(事実に対する見解)を報道し続けている。また、一方的な報道がなされていても、我々視聴者が忙し過ぎて何が真実で、何が見解なのかを見極めることをしないか、あるいは興味を持たないということなのかもしれない。

 この記事の読者諸君が、ロバータ・ランプトン記者が書いたこの記事「トランプ大統領、国連武器貿易条約から離脱すると発表。全米ライフル協会に迎合」を読む時には、次のことを心に留めておくといいだろう。

 (1)この記事は、NRAと保守グループだけが当時のオバマ大統領が国連の条約に署名するのに反対したように示唆しているが、事実とは異なる。これはランプトン記者の妄想にすぎない。ロイターが報道すべきだったのは、「オバマ大統領に反対したのはNRAと保守グループのみではなく、米国上院においては武器条約の署名に関して、53対43で否決されている」という事実だ。

 (2)さらにこの記事は、まるでNRA(そしてあえて言うならば700億ドルの米国の武器産業)が、国連武器条約を実施する上での主な障害であるかのように思わせている。まるで悪い冗談だ。米国憲法改正第2条では、連邦政府が市民による武器の使用を規制することを禁じている。国連武器貿易条約は(他の諸事の中でもとりわけ)こうした権利を侵害しているため、米国では同条約を法律として実施することはできないだろう。

 (3)最後に、ランプトン記者は米国が他の非加盟国であるイラン、北朝鮮、シリアなどに仲間入りをしたと侮辱したオックスファム(注:貧困を生み出す状況を変えるために活動する国際協力団体)のアメリカ代表であるアビー・マックスマン氏の言葉を引用した。しかし事実は、国連武器貿易条約に加盟していないのは、中国、ロシア、カナダ、エジプト、サウジアラビア、インド、パキスタン、インドネシア、その他約80カ国の主権国家だ。我々に必要なのは事実に基づく報道であり、見え透いたジャーナリストの見解や事実の脱落ではない。

Blue: アメリカが再び正しいことをしないように見張るトランプ

Trump Saves America From Doing the Right Thing Again

 アメリカの大統領が世界に対して、「武器が独裁者や戦争犯罪者の手の届かないようにするのが良いことだと信じている」と見せたくないのはなぜだろうか? なぜトランプは、武器条約を拒絶することで北朝鮮とイランに並ぶことを望むのだろうか? それには理由がある。アメリカが昨年、銃と弾薬に170億ドルも使ったからだ。

 NRAはアメリカの銃産業を代表し、そのメンバーは数百万人を数える。NRAは国連の条約が合法的な銃の所有権に対する脅威であると主張し、アメリカ市民の権利を奪うことになると言う。NRAは大学に通える年齢の誰もが半自動ライフル銃を購入できるようにするべきだという立場を取っている。2017年に、ある男がこうした武器を12挺も使ってラスベガスで58人を殺害した。その1ヶ月後にテキサスの教会では一挺の半自動ライフルが26人を殺すために使われた。それでもNRAはなお、銃が個人の自由と密接に関連しているという話を押し付けることを止めず、銃規制は政府が何もかもを掌握することを計画している証拠だなどと言っている。そのNRAの会員たちはトランプの最も忠実な支援者でもある。

 しかし、トランプとNRAの主張とは異なり、国連武器貿易条約は銃の国内販売と民間人による銃の使用については明確に除外している。さらに、米国はすでに銃器の国際的な販売を制限する法律を制定している。つまり、国連条約への署名は象徴的なものにすぎず、こうしたことの全てがトランプとNRAの武器貿易条約への反対を無意味なばかりか、非人道的にしている。

 彼らの反対は象徴的なだけかもしれないが、メッセージそのものは胸が悪くなるほど明確だ。トランプとNRAは毎年4万人近くのアメリカ人が銃で殺されていることに対して、「何もする気がない」ということである。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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