シアトルの「犬を飼うならシェルター」事情

シアトルの「犬を飼うならシェルター」事情

アメリカ生活も20年を過ぎた翻訳家の高柳準が、アメリカ文化とそれにまつわる矛盾を語る「アメリカで暮らしながら想うこと」。今回は、犬を飼いたい人たちが増えているという話。全米でも「ドッグフレンドリー」な街で有名なシアトルでは、家族の一員として迎える犬を見つけるまでが一苦労という事態が発生しているという。


保護犬を引き取りたくても犬が見つからない

 「犬を飼いたいのに、犬が見つからない」と嘆く人が増えている。シアトルのペットショップでは商用に生産された子犬は売られておらず、アニマル・シェルターから保護犬を引き取るのが主流だ。また、「フォーエバー・ホーム」(これからずっと住める家)を探している保護犬に、セカンドチャンスを与えることが当たり前という雰囲気もある。

 しかし、施設のウェブサイトを頻繁に見ていても、訪問時にはお目当ての犬がすでに引き取られていることが多いという。シェルターでの手続きは大方が先着順のため、早い者勝ちレースのごとく、朝一番で訪問しようと施設前にテントを張って待機した人もいたというから驚きだ。

 さて、なぜシアトルでは犬を飼いたい人が急増しているのだろうか? シアトルが数々の大手IT企業を迎えてから久しいが、これに伴い家庭を持たない若い人の人口が急増し、その一方で犬と暮らす人が増えたそうだ。近年シアトルでは子供の数よりも犬の数の方が多いという。この傾向に伴い、ドッグフレンドリーな公園や店舗も増えた。こうした状況が、保護犬が不足している要因であることは否めない。

自宅審査に住宅ローンの支払い証明書まで?!

 シアトルにおける保護犬の引き取り料は275ドル〜500ドルが相場で、なかには900ドルを超える所もある。これがテキサス州になると95ドル〜125ドル程度で、都市によって違いがある。犬の里親になる審査も簡単ではなく、シアトルでは自宅訪問、住宅ローンの支払い証明書、10ページに及ぶ契約書を要求する施設もあるという。

 また、ペット検索サイトでは、他州の施設にいる保護犬を紹介し、里親と対面することなく引き渡す方法を専門にしている所もある。商品を購入するならまだしも、情報ベースで犬を迎えて良いものかとも思うが、オンライン・ショッピングが主流の今では違和感を覚えない人も多いのかもしれない。

 何はともあれ、愛犬探しで燃え尽きず、念願叶って迎えた新しい仲間との日々を想像以上に素晴らしいものにできれば、保護犬にとっても嬉しいセカンドチャンスとなることだろう。

この記事の寄稿者

東京都出身。インターナショナル・スクール、日本での普通教育を経て、1992年に渡米。シアトルで写真や美術史などを学んだのち、ニューヨーク州ロングアイランド大学で社会科学を専攻。在学中にはジプシー女性の社会的立場、低所得層のインド女性の人権などに関する研究に力を入れた。大学卒業後は日系新聞社、大手IT企業などで専任翻訳、ビジネス・コーディネーターを務め、その後、独立。現在はシアトルで翻訳家として活動を続けている。得意分野はテクノロジー関連の翻訳。趣味は写真、読書など幅広く、音楽はクラッシックや80年代までのパンク、ヒップホップやトリップホップ、初期のレスター・ヤングなどを好む。

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