アラバマ州で中絶違法が決定 女性たちの権利はどうなるのか?

アラバマ州で中絶違法が決定 女性たちの権利はどうなるのか?

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は、先日アラバマ州で中絶が禁止される法案が通ったことについて。リベラル派の著者が「これは女性の権利が取り上げられたも同然」と大反論する法律とは、どんな内容なのか?


中絶が違法になることは、女性の権利が奪われること

 今月、アラバマ州知事が「アメリカで最も厳しい中絶禁止法」に署名した。この法律により、アラバマ州では中絶が違法になり、中絶を行った医師には、最長99年の懲役が罰せられる。この法律の唯一の例外は、妊娠が母親の命を脅かす場合のみだ。強姦や近親相姦の被害にあった被害者でも例外にはならない。もし、アラバマ州の13歳の少女がレイプされて妊娠したとしても、その少女は強姦犯の赤ちゃんを産むことを法律で強制されるのだ。

アメリカの中絶法はどうなっているのか?

 アメリカには50の州がある。各州には独自の政府があり、独自の法律を制定できる。しかし、州法は合衆国憲法に示されている基本的権利を侵害することはできない。州法と憲法上の権利が矛盾する場合、連邦裁判所制度によって州法の合憲性に関して決定を下す。

 1973年に起きた有名な『ロー対ウェイド裁判』の際、米最高裁判所は、「中絶を禁止したテキサス州の法律は違憲である」との判決を下した。裁判所の決定の中で、女性のプライバシーに対する基本的権利は、中絶を選択することを妨げる法律によって侵害されるだろうと述べられた。それ以来、女性が中絶を選択する権利は憲法で保護されている。しかし、保守派や宗教団体は、その決定を覆すことを諦めたことは一度もない。

 アラバマ州のこの法律は、中絶反対派のこれまでの試みが一歩先へ進んだことを示すものだ。この法律は共和党によって書かれ、可決された。彼らの目標は、連邦裁判所に異議を申し立てることだ。共和党員たちは、現在、ロー対ウェイド裁判の判決をひっくり返すのに十分な数の保守的な最高裁判官がいて、彼らがこの州の法案を支持してくれる(州が憲法上の権利を侵害していないと判断する)と信じている。もし異議の申し立てがない場合、この法案は11月から施行される。

なぜ共和党は中絶を禁止したいのか?

 多くの共和党員は、「キリスト教の福音書では、無実の、生まれていない子供を保護する必要があると教えている」と言う。このような考え方は、保守的なキリスト教徒に受けが良い(そして票を得ることができる)。しかし、これらの「中絶反対」共和党員が、この法律によって生まれる望まない赤ちゃんやその母親の保護に役立つ法の支援をどうやって拒否することができるのだろうか? 彼らにとっては、このような人々を守ることは社会主義であり、悪である。しかし、キリスト教の教えの根本的な部分は、「私たちの中で最も弱い人々を助けること」だ。人がどのようにして両方の信念を同時に、そして誠実に保持することができるかを理解するのは困難だ。

 私自身は、中絶は悲劇的だと思っているので自分から勧めることはできない。妊娠中絶を自分から望む女性はいないだろうとも思う。中絶は、とても難しくて残酷な決断だ。しかし、これは政府が立ち入ることではなく、個人的な決断である。女性たちは必要だと判断すれば、法律に関係なく中絶をするだろう。法律は中絶を防ぐことはできない。法律で守れるのは、病院で医師によって行われる安全な中絶だけだ。

 中絶禁止法は女性や貧しい人々を罰するものである。私は中絶禁止を支持する多くの共和党員にとっては、それが狙いなのだと思う。

この記事の寄稿者

1974年生まれ。文学書とコーヒーを愛するコラムニスト。書籍に関しては幅広く読むが、コーヒーに関しては、豆の原産地から流通や焙煎の過程までを詳細にフォローし、納得したものだけを味わうことにしている。温厚で穏やかな性格であるものの、コーヒー豆へのこだわりと同様に理路整然としない、あるいは納得できない社会の動きに対しては、牙をむく活動派的な一面もある。妻と犬一匹と共に、カリフォルニア州オークランド在住。

関連する投稿


トランプ大統領、またもや圧勝? 次の選挙を勝利に導く福音派

トランプ大統領、またもや圧勝? 次の選挙を勝利に導く福音派

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けする、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回はトランプ大統領の熱心な支持層である「福音派」の底力について。


米大統領選ガイド(6) 「アメリカを二分する4大争点とは?」

米大統領選ガイド(6) 「アメリカを二分する4大争点とは?」

2020年11月3日に実施される米大統領選挙。トランプ現大統領率いる共和党とリベラルな民主党が政権奪回を争う選挙戦は、その後の世界情勢にも大きく影響するが、米大統領選のルールはかなり複雑だ。そこで、米大統領選を2000年から取材しているジャーナリスト・西森マリーによる、どこよりも分かりやすい解説をお届けしよう。


米大統領選ガイド(5) 「2020年の激戦州はここだ!」

米大統領選ガイド(5) 「2020年の激戦州はここだ!」

2020年11月3日に実施される米大統領選挙。トランプ現大統領率いる共和党とリベラルな民主党が政権奪回を争う選挙戦は、その後の世界情勢にも大きく影響するが、米大統領選のルールはかなり複雑だ。そこで、米大統領選を2000年から取材しているジャーナリスト・西森マリーによる、どこよりも分かりやすい解説をお届けしよう。


トランプ大統領の弾劾を叫ぶ民主党を保守派があざ笑う理由

トランプ大統領の弾劾を叫ぶ民主党を保守派があざ笑う理由

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けする、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は現在進行形の「トランプ大統領を弾劾するべきか否か」問題にについて。


米大統領選ガイド(3) 「間接選挙:選挙人投票の仕組みと問題点」

米大統領選ガイド(3) 「間接選挙:選挙人投票の仕組みと問題点」

2020年11月3日に実施される米大統領選挙。トランプ現大統領率いる共和党とリベラルな民主党が政権奪回を争う選挙戦は、その後の世界情勢にも大きく影響するが、米大統領選のルールはかなり複雑だ。そこで、米大統領選を2000年から取材しているジャーナリスト・西森マリーによる、どこよりも分かりやすい解説をお届けしよう。






最新の投稿


米アマゾン本社内のホームレス・シェルター、まもなくオープン

米アマゾン本社内のホームレス・シェルター、まもなくオープン

物価の急上昇と共に増え続けるホームレス。そのことが大きな社会問題になっているシアトルに本社があるアマゾンドットコム社が、同本社内にホームレスの人たちが使用できる宿泊施設をつくり、3月末までにはオープンする予定だ。


元NBAスター選手コービー・ブライアント氏の追悼、米各地で

元NBAスター選手コービー・ブライアント氏の追悼、米各地で

バスケットボール界を代表するNBAスーパースター選手だったコービー・ブライアント氏が26日(日本時間27日)、乗っていたヘリコプターが墜落し、41歳という若さで亡くなったことを受けて、米各地で追悼集会が開かれている。


OKサインはOKじゃない!? アメリカでNGなジェスチャーとは

OKサインはOKじゃない!? アメリカでNGなジェスチャーとは

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などをケンタッキー州よりジョーンズ千穂が紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回は日本ではOKでも、アメリカではOKではないジェスチャーやポーズについて。


今週の神秘ナンバー占い(2020年1月24日~30日)

今週の神秘ナンバー占い(2020年1月24日~30日)

当たりすぎて怖い? ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスがお届けする今週の神秘ナンバー占い。神秘ナンバーとは、東洋数秘術、西洋数秘術、アステカ秘術など複数の占術をベースに導き出す、運気を読み解く数字のこと。あなたの運勢はどのように変化する?!


オーストラリアの大火災と環境保護に逆行する米大統領

オーストラリアの大火災と環境保護に逆行する米大統領

圧倒的にリベラル派が多く住む米西海岸から、トランプ大統領と共和党の政策に真っ向から反対する日系アメリカ人ジャーナリスト、マイク佐藤がお届けする「トランプを支持しない人たちの声」。今回は、世界的な環境保護政策や気候変動への動きに逆行して、そうでないことを推し進めるトランプ大統領と彼に献金する人たちについて。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング