なぜ? 南部の保守州でも医療マリファナが合法に

なぜ? 南部の保守州でも医療マリファナが合法に

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などをアーカンソー州よりジョーンズ千穂が紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回はかなり保守的な南部アーカンソー州でも、医療マリファナが合法になったことについて。


マリファナ合法化に潜む、大人の事情

 私の住むアーカンソー州では2019年にメディカル・マリファナ(医療大麻)の使用が認められることになった。米南部の州は保守派が多く住むため、これは大きなニュースとなり、喜びと怒りの入り混じった声があがった。

 カリフォルニア州やシアトルのあるワシントン州のように娯楽目的でも使用できる州法とは異なり、医療行為としてマリファナを使用することだけが許可されたのだが、マリファナを購入するには医師からの処方箋と購入者IDが必要となる。購入したマリファナを公共の場で使用することはできず、この購入者IDの保持者は銃の購入もできない。しかし、医療目的に限定されたマリファナでも、アメリカの病院では意外と簡単に処方箋が手に入る。この法律に反対する人たちは「娯楽目的で使用されるのでは」ということを、懸念しているのだ。

 超がつくほど保守的なアーカンソー州で医療目的のマリファナ使用が合法となった裏には、どうやら大人の事情があるようだ。合法化された背景には、現在、医療用と娯楽用の両方を合法とする州の税収や、それに連なるマリファナ関連ビジネスが大きな成功を収めていることにある。要はアーカンソー州も税収を増やしたいわけだ。

マリファナを摂取しても酩酊しなければいいの?

 マリファナ関連ビジネスにはいろいろあるが、たとえばエッシェンシャル・オイル。マリファナのことを英語ではカナビスとも呼ぶが、最近ブームになっているのが「カナビダイオール・オイル」、通称「CBDオイル」だ。

 マリファナ(アサ/大麻草)には約85種類のカナビノイド(Cannabinoid)物質が含まれているが、ざっくりいうと体内に入れると酩酊作用を引き起こす「THC」という成分と、酩酊はしないがリラックス効果を生むとされる「CBD」という成分に分けられる。「CBD」は酩酊しないので安全だという認識が広がっているため、エッセンシャル・オイル市場にはCBDオイルを使った商品がたくさん出回っている。しかし、CBDオイルとうたっていても抽出の工程で極微量の「THC」成分を取り除ききれないまま商品化されているものも多い。酩酊しないからTHCが入っていない、というわけではないのだ。

 アメリカでも米軍や大企業、航空会社や運輸会社など従業員の安全を重視する会社などでは、THCもCBDも関係なく、いかなるカナビノイドの摂取も禁止されており、定期的もしくはランダムにドラッグテストが行われる。先日、航空会社関連の友人宅の集まりに行ったら、呼ばれた席で出されたクッキーがマリファナ入りで、知らずにそれを食べたらドラッグテストで陽性反応が出て、航空会社をクビになったパイロットの話を聞いた。娯楽用マリファナが合法の州では、少量のマリファナをクッキーなどのお菓子やスムージーに入れて食することが一種の健康食と言われている。

 パーティーのホストは気を利かせたつもりだったかもしれないが、そのパイロットは職を失った。パーティーや会合が多いアメリカでは、人ごとではない話だ。自分が口にするものにマリファナが入っているかどうかを注意しなくてはいけない時代になってしまったということだろう。

 私は数年前に父を癌で亡くしたが、痛みに苦しむ父を見るのはとても辛かった。痛みを和らげるために使用するモルヒネを、医者が「要は麻薬」と言ったのを聞いて投与を拒否したほどの父だったが、「CBDオイル」であれば使ってくれたかもしれないと思うことがある。だから、私は一概に「CBDオイル」は危険だというつもりはないのだが、「CBDオイルだから絶対に大丈夫」と決めつけるのもどうかと思う。

 ちなみに日本の外務省のHPを見ると、日本人はマリファナが合法の国や地域に行っても、マリファナの使用、所持、譲渡は処罰の対象であり、帰国後に逮捕されることもあると書いてある。「知らなかったから」では済まされない事態に巻き込まれないよう、自分の身は自分で守りたい。

この記事の寄稿者

 東京都出身。アメリカ人航空機パイロットの婚約者の米本土転勤に伴い、一般企業を退職。K-1 Visa にて渡米したのち結婚。現在、アメリカ南部アーカンソー州在住。移住後はパイロットを夫に持つ婦人の会や、日本語補習学校を通じての活動、現地日本人や移民•マイノリティーへの支援、生活アドバイス、ネット上でのアメリカ生活に関する相談・コンサルテーション、翻訳、通訳、観光案内など、国際線パイロットの夫のスケジュールに翻弄されながらも、さまざまなボランティア活動に力を注いでいる。

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