不法移民と合法移民は違うのに

不法移民と合法移民は違うのに

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。極端にリベラルな人の中には、なぜか不法移民と合法移民は同じと考える人がいる。しかし、そこで正しい意見を言うと命の危険も?


選挙までもう少しで1年という憂鬱

 あと1年半もしないうちに次の米大統領選挙という時期になった。夏休みシーズンということもあるからだろうか、次期選挙に向けての勉強会やネットワークづくりなどの会もチラホラ活動が盛んになりつつあり、私もいくつかの会に誘われるようになった。

 政治の会は今までも顔を出したことがあるが、最近は誘われても適当に流してあまり参加しない。「移民でアジア人、女性、起業家」という3点セットのせいで、ステレオタイプの字面通り、「打倒トランプ政権」をうたうグループに重宝がられてしまうためだ。その私が「予想外」の発言をすると、本気で怒鳴られることすらあるので、最近は誘われても遠慮している。

 私は左の意見にも右の意見にも賛成、反対がある。どちらかの政党が全て正しいとは思えないから、右も左も積極支持はしていない。しかし、私は第三者からみると「当然リベラル」ということなのだろう。選挙が近くなるにつれ、こうした誘いが増えるのは確実であり、それを考えただけで憂鬱な気分になる。

「合法移民は、不法移民を支持しませんよ?」

 先日、どうしても断れない人からお願いされて、「移民はどのようなアメリカを望んでいるのか」ということを語る会合に行くことになってしまった。お隣のシアトル市は「サンクチュアリシティ(不法移民でも保護する聖域都市)」なので、嫌な予感はしていたのだが、やはりその予感は当たった。不法移民の人権ということにフォーカスを当てた会合で、トランプ政権への批判が延々と続くばかりだった。

 途中で発言を求められたので、怒鳴られることを覚悟して私はこう言った。「自分も自分の母も合法移民です。合法移民は長いプロセスを経て、面倒な書類をいくつも提出して、お金もかけてこの国に移民してきます。だから、その私たちに不法移民を支援しろと言われても困ってしまいます。」会場が一瞬、シーンと静まり返ってしまった。

 後から数人に強烈な嫌味も言われたが、なかには「冷静さを欠いて移民を一括りにするのは間違いだし、あなたの意見は正しい」という人も多く、ちょっと救われた。しかし、「あなたみたいに正しいことを堂々と言うと刺されるから、もう会には来ない方がいいわよ」と本気で心配してくれた人もいた。その言葉に甘えて、今後はこうした会合には絶対に出るのはよそうと、その日、私は心に誓った。

この記事の寄稿者

青山学院大学卒業。コマーシャルなどの映像コーディネーターを経て1998 年、宝塚歌劇団香港公演の制作に参加。その後プロデューサーに転身。株式会社MJ コンテスほか複数企業の代表として、ネバダ州立大学公認のピラティススタジオ日本進出事業や各種研修事業、2007 年に行われた松任谷由実の 「ユーミン・スペクタクル シャングリラⅢ」をはじめとする国内外の舞台・イベント制作など、さまざまな事業を展開。これまでにベストセラー数冊を含む70以上の書籍、DVD 作品を企画、プロデュース。現在も様々な事業を展開しながら“Go Tiny”(大切なものが、すべて半径5メートル以内にあることに気づこう!の意)というライフスタイルの提案も展開中。

関連する投稿


人権より中国の「金」の方が大事なNBAの偽善

人権より中国の「金」の方が大事なNBAの偽善

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けする、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は多くのスター選手を輩出している米NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)が、自らの方針を変えてまで中国市場に取り入っていることについて。


大手メディアがまったく伝えない「トランプ大統領の良いところ」

大手メディアがまったく伝えない「トランプ大統領の良いところ」

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、アメリカの大手メディアがまったく伝えないトランプ大統領の良い部分を、保守系メディアではどう報道されているかを紹介しよう。


保守派が選ぶ8月・9月のフェイク・ニュース「ワースト5」

保守派が選ぶ8月・9月のフェイク・ニュース「ワースト5」

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、アメリカの大手メディアがここ2カ月間に報道したニュースの中で、多くの保守派が「フェイク・ニュース」だと断言しているニュースの「ワースト5」を紹介しよう。


「私たち」対「彼ら」を押し通すトランプ大統領と保守派たち

「私たち」対「彼ら」を押し通すトランプ大統領と保守派たち

アメリカ西海岸にはリベラルな州が集中しているが、なかでもワシントン州は圧倒的にリベラル派が多く住む土地だ。同州在住で、トランプ大統領と共和党の政策にまっこうから反対する日系アメリカ人ジャーナリスト、マイク佐藤が「トランプを支持しない人たちの声」をお届けする。今回は声を上げずに隠れている共和党の政治家たちについて。


火蓋を切った米大統領選挙、リベラルと保守は共存できるか

火蓋を切った米大統領選挙、リベラルと保守は共存できるか

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。引っ越しが決まった。首都D.C.のすぐ横、バージニア州だ。先日、家探しで久しぶりに東海岸に戻って感じたアメリカの希望とは。






最新の投稿


アメリカのご当地名物の食べもの 第1弾

アメリカのご当地名物の食べもの 第1弾

日本でも各都道府県の名物があるように、アメリカにも50州すべてに名物がある。今回はその中から変わり種のご当地フードをいくつかご紹介しよう。


【エッセイ】エッグノックとはどんな飲み物?

【エッセイ】エッグノックとはどんな飲み物?

自然を愛し、趣味はハイキングと食べることという著者・デイビッド・アンドリューズが、「ごく普通」のアメリカ人代表として綴る『You Are What You Eat~食は人なり~』。クリスマスになると登場する卵色の飲み物「エッグノッグ」。アメリカ人はみんな、これが好きなのだろうか?


植物性ミルクは、牛乳よりヘルシーなのか?

植物性ミルクは、牛乳よりヘルシーなのか?

アメリカではヘルシー志向や健康上の理由から乳製品を避ける人口が増え、今ではどのスーパーマーケットに行っても、植物から作られた牛乳の代用飲料がずらりと並んでいる。豆乳、ココナッツ・ミルク、アーモンド・ミルク、オーツ・ミルク、米ミルク……。植物性ミルクは、牛乳よりもヘルシーなのだろうか?


「一流」や「本場」から学ぶということ

「一流」や「本場」から学ぶということ

「ペンタゴン(米軍)式」はビジネスでも使える! メンタル・トレーニングを中心に、国防省現役キャリアの著者が知られざるペンタゴンの世界を紹介する『ペンタゴン式・心の鍛え方』。何かを習得したい時には、ボトムアップでコツコツ自分を試すだけなく、一流や本場と呼ばれる世界に体当たりしよう。


マリファナ生産市場の拡大、一般嗜好品にも影響か?

マリファナ生産市場の拡大、一般嗜好品にも影響か?

昨年、5年間の農業政策などを定めた「2018年改正農業法案」が成立したアメリカでは、全土で産業用大麻(マリファナ草、ヘンプ草)の大規模栽培ができるようになった。こうした動きに押されるように、消費者市場にも様々な動きが出ているようだ。


アクセスランキング


2
【エッセイ】エッグノックとはどんな飲み物?

【エッセイ】エッグノックとはどんな飲み物?

【ライフ&カルチャー】会社勤めのコラムニスト デイビッド・アンドリューズ

4
軍人たちが行う積極的な「第二の人生設計」

軍人たちが行う積極的な「第二の人生設計」

【ライフ&カルチャー】アメリカ国防総省キャリア カイゾン・コーテ

5
トランプ大統領の大好物は?

トランプ大統領の大好物は?

【ライフ&カルチャー】会社勤めのコラムニスト デイビッド・アンドリューズ

>>総合人気ランキング