【Red vs. Blue】日本でのトランプ大統領の発言に、アメリカ国民はどう思ったか?

【Red vs. Blue】日本でのトランプ大統領の発言に、アメリカ国民はどう思ったか?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は先月、日本に新元号初の国賓として訪れたトランプ米大統領が、日本で開催された記者会見で自国の政敵の悪口を言い、金正恩の発言をサポートしたことについて。


 トランプ大統領は先日の来日中に開催された記者会見で、朝鮮労働党委員長の金正恩がジョー・バイデン米前副大統領を侮辱する発言をしたことについて意見を求められ、「確かに、彼(バイデン氏)の知能指数は低いかも知れない」と同意し、さらにバイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権時代の外交政策は「最悪だった」と酷評した。

 従来、米大統領は海外訪問中に自国の政敵(バイデン氏は民主党大統領選の有力候補)の批判をしないことが不文律だったため、今回のトランプ大統領の発言は全米で物議を醸している。トランプ大統領の常識破りの発言について、本欄の保守派とリベラル派のアメリカ人の意見を聞いた。

Trump agrees with Kim, rips Biden at Japan presser
https://thehill.com/homenews/administration/445641-trump-agrees-with-kim-rips-biden-at-japan-presser
出典:「The Hill」

RED: 金正恩のツイッター暴言など米大統領にはどうでもいいことだ

Kim Jong Un’s Twitter Rants “Don’t Matter” to the U.S. President

 先月27日(日本時間26日)に安倍首相とトランプ大統領が開催した合同記者会見から、上記にある「The Hill」のような報道機関が何を重要だとみなしてニュースにするかに、私はいつも驚かされる。

 この記者会見に出席した記者たちからは、中東和平プロセスにイランがもたらす脅威、北朝鮮が最近行った短距離ミサイル発射、現在の米中貿易交渉への評価などのトピックを含む約12の質問が挙げられた。これらの問題のどれをとっても重要で価値あるニュースになるだろうし、日米両国の市民の公益に結びつくだろう。ところが、「The Hill」のリベラルなジャーナリストは、情報の掃き溜めの底に落ちて、「金正恩がツイッターでジョー・バイデンを侮辱した」という些細な質問に焦点を当てた。

 この記事の見出しはクリック誘導そのものだ。これを書いた記者は恥を知るべきだ。同記事はこれが価値あるトピックだと見せかけるために、トランプ大統領発言の最も重要な部分を除外しており、もちろん真実とは異なっている。世界から孤立した北朝鮮という国の常軌を逸した専制君主がツイッターで激怒したからといって、気にするものは誰もいないが、この些細なことに憤慨して欲しいと望むリベラルなジャーナリストは別なのだろう。「トーク・イズ・チープ(言うだけでは金はかからない)」という、ことわざと同じだ。誤解を招かないために本件に関する大統領の全発言を記載する。

「金正恩は自身のツイッターでジョー・バイデンは知能指数が低いと言った。彼の経歴に基づけばそう言えるだろうし、私は金正恩に同意する。しかし、それと同時に私の側近たち同様、異なる見解がある。金正恩のツイートは政治的な圧をかけることを意味していたかもしれないし、単にバイデンについて発言することで注目を得たかっただけかもしれない。そんなことは誰も知る由がないし、どうでもいいことだ。」

 まさにその通りである。金正恩がツイッターでジョー・バイデンを侮辱したことなど、どうでもいいことなのだ。それはトランプ大統領にとって何の問題でもなく、世界にとっても何の問題でもないはずだ。

Blue:トランプは注目を集めるのが大好きなだけ。日本のことなど気にしていない

Trump Loves Attention. He Doesn't Care About Japan

 先月下旬、ドナルド・トランプのリムジンが東京を走り抜けた時、沿道にいた人々は「日本はトランプが大好きです」というバナーを掲げた。そして、トランプは徳仁天皇に会った最初の外国人指導者という名誉を与えられた。安倍首相はトランプをゴルフに招待し、彼をアメリカの牛肉で作ったハンバーガーでもてなした。日本訪問後、トランプは45秒のビデオ映像をツイッターでシェアーし、「ありがとう、日本!」とキャプションをつけた。その映像には少なくとも19もの異なる場面のトランプが写っている。

 アメリカのマスコミは東京での合同記者会見におけるトランプの発言に、多大な注目を向けた。2020年のアメリカ大統領選のトランプの政敵であるジョー・バイデン氏について金正恩がよくないことを発言したことに対し、トランプは嬉しそうに金の肩を持ち、これはアメリカ国内で大変大きな問題になった。なぜならアメリカでは、大統領が海外に出た時にはアメリカの政治について発言しないという伝統があるからだ。そして、これがニュースになったもうひとつの理由は、「米大統領が公に自国の政治家を批判する外国の独裁者の側についた」からである。

 しかし、多くのアメリカの報道機関が見過ごしている、さらに衝撃的な事実がある。それは、トランプが日本の国土上で北朝鮮の指導者を賞賛したことだ。安倍首相は記者会見で、彼とトランプは北朝鮮の危険性について同じ見解を共有していると丁寧に主張した。その数分後にトランプは、平壌(北朝鮮)が短距離ミサイルをテストするのは「問題ではない」と言って、同首相を当惑させた。その前にトランプは、ツイッターに次のように書いている。「北朝鮮は小さな武器をいくつか発射させて、私の周辺やその他の人々を心配させたが、私は心配していない」。

 日本国民はこのトランプ発言のどこに該当するのだろうか。伝えられるところでは「私の周辺の人」とは、彼自身の国家安全保障担当補佐官に対する軽視とのことなので、日本国民は「その他の人々」ということになるのだろう。そしてもちろん、北朝鮮の短距離ミサイルはアメリカには届かないので、トランプは心配しない。

 貿易協議が再開されて、アメリカが日本へより多くの牛肉と戦闘機を購入するように圧力をかけてくる時、安倍首相はトランプが「本当に気にかけている唯一のもの」は、日本のことでも、安倍首相との関係性でもなく、「彼自身のことだけ」ということを、しっかり覚えておくべきだろう。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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