国境警備員の仕事は子守じゃない! 民主党が招いた不法移民激増の危機

国境警備員の仕事は子守じゃない! 民主党が招いた不法移民激増の危機

米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回はメキシコ国境があるテキサス州の住人だからこそ見える国境警備隊と不法移民たちの日常と、保守派は不法移民の激増をどう見ているのかについて。


おむつの交換やミルクをあげることが国境警備隊の仕事ではない

 私が住んでいるテキサスの田舎町は、住人の8割方が福音派キリスト教徒で、隣人たちは皆、日曜日には教会に行き、様々な慈善活動に参加している。彼らはほぼ全員、不法移民受け容れに断固として反対しているトランプ支持者、つまりリベラル派から「偏見に満ちた、心の狭い人種差別者」だと蔑まれている人々だ。

 しかし今年1月以降、この「人種差別者」たちは自腹を切って、おむつやミルク、離乳食を買い、赤ちゃんや子ども用の古着を集めてトラックに積み、それを国境に設置された不法移民収容所に届けている。たくさんある収容所のすべてが、赤ん坊や幼児を連れた家族のみならず、大人の付き添いなしにやってきた子どもの不法移民で溢れかえっている現状があるからだ。それを見るに見かねて、福音派キリスト教徒ならではの人助けに乗り出したというわけだ。

 先月30日、1,036人もの不法移民が国境のフェンスに開けた穴をくぐり抜けてメキシコからテキサスに不法入国している様子をとらえたビデオ映像をトランプ大統領がツイートしたことで、リベラル派も不法移民が激増している、という現状にようやく気づいたようだ。

 しかし、これは氷山の一角に過ぎない。先月だけでも13万2,887人もの不法移民がメキシコ国境からアメリカになだれ込み、その内の1万1,507人は付き添いのない子ども、8万4,542人は子ども連れの家族だった。そのためアメリカの国境警備員は収容所でおむつを交換したり、赤ん坊にミルクをあげるなど、まるで子守のような仕事を強いられている。

「キャッチ・アンド・リリース」と呼ばれる現行の法律が問題

 現行の移民法では「メキシコとカナダ以外からの亡命希望者の子どもや家族は20日以上、拘束してはならない」と定められている。そのため、彼らは20日目には「亡命認定裁判の日程が決まったら出廷する」という口約束をして、アメリカ国内にいる親戚や知人(多くの場合は彼らも不法移民)のもとへ「仮釈放」されるが、87%は裁判が決まっても裁判所に現れず、「行方不明」になってしまうという。

 トランプ大統領は、この「キャッチ・アンド・リリース(捕まえて逃がす)」と呼ばれる悪法を改正するために数々の不法移民対策を提案しているが、上院の共和党議員数が法案可決に必要な60人に満たないため、どの案も民主党に反対され、潰されて続けている。

 そのため、トランプは先月30日に、「メキシコが不法移民の食い止めを強化しないならば、メキシコからの輸入品全てに関税をかける」と宣言した。これが功を奏し、メキシコは「グァテマラとの国境に軍隊を送り、不法移民を斡旋している麻薬カルテルの銀行口座を凍結する」と約束。さらに、拘束可能な期限を超過した子どもや子連れの不法移民をメキシコが預かることになった。

 とはいえ、既に中南米からメキシコ入りを遂げた不法移民の流入は阻止できないため、米国境警備局は先月28日に「国境警備員が本来の職務である国境警備に集中できるようにするために、収容所で不法移民の世話をする人材を募集する」と発表。先月30日には222万4,000枚のおむつと、2万本の哺乳瓶を発注した。

 国境警備員に身体的な負担をかけ、アメリカ国民、特にメキシコと国境を接する州の人々に重い経済的な負担を掛ける不法移民問題。保守派の多くが、「トランプ大統領が来年の選挙で再選して共和党が上下両院で圧勝しない限り、この問題が解決する見込みはなさそうだ」と思っているのは、このような事情からである。

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

関連する投稿


【Red vs. Blue】「白人共和国」を望む共和党は、自由の国アメリカを破壊するのか?

【Red vs. Blue】「白人共和国」を望む共和党は、自由の国アメリカを破壊するのか?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回はタイム誌の「共和党はアメリカを白人共和国にするためにトランプを支持し、アメリカを破壊しようとしている」という記事について。


アメリカとメキシコの国境の壁を挟んだピンクのシーソー

アメリカとメキシコの国境の壁を挟んだピンクのシーソー

アメリカとメキシコの国境の壁を挟んで設置したピンク色のシーソーで子供たちが遊ぶ映像がSNSを賑わせている。国境周辺の状況が悪化している中、人々に結束や調和を訴える目的で米カリフォルニア州にある大学の二人の教授が仕掛けた「アート・インスタレーション・イベント」だという。


女子プロサッカー・ラピノー選手とトランプ大統領のSNSバトル 

女子プロサッカー・ラピノー選手とトランプ大統領のSNSバトル 

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回はサッカー女子ワールドカップで優勝したアメリカ代表チームのキャプテン、ミーガン・ラピノー選手によるトランプ大統領批判から派生したSNSバトルについて。


奴隷制に対する賠償金を支払うのは誰なのか?

奴隷制に対する賠償金を支払うのは誰なのか?

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、トランプ大統領に対抗するリベラル派の大統領候補や政治家たちが「過去の奴隷制に対して賠償金を払うべき」と訴えていることについて、保守派の見解を解説する。


【Red vs. Blue】トランプ大統領、フロリダの集会で2020年大統領選の再選を宣言

【Red vs. Blue】トランプ大統領、フロリダの集会で2020年大統領選の再選を宣言

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回はトランプ大統領が来年11月に予定されている次期大統領選への立候補を正式表明したことについて。






最新の投稿


【Red vs. Blue】「白人共和国」を望む共和党は、自由の国アメリカを破壊するのか?

【Red vs. Blue】「白人共和国」を望む共和党は、自由の国アメリカを破壊するのか?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回はタイム誌の「共和党はアメリカを白人共和国にするためにトランプを支持し、アメリカを破壊しようとしている」という記事について。


世界初! サンフランシスコ空港「プラスチック製の水ボトル販売禁止」を決定

世界初! サンフランシスコ空港「プラスチック製の水ボトル販売禁止」を決定

米カリフォルニア州のサンフランシスコ国際空港が、8月20日から空港内における使い捨ての飲料水入りペットボトルの販売を禁止することを発表した。世界的にプラスチック製ゴミの問題が大きくなる中、それを減らすために市をあげて取り組む姿勢だ。


今年のプライムデーに最も売れた商品とは?

今年のプライムデーに最も売れた商品とは?

先月開催されたアマゾン・ドットコム社による恒例の大バーゲン、アマゾン・プライムデー。毎年、たった1日で爆発的に売れた商品がいくつか出現するので、話題になる。今年アメリカで飛び抜けて売れた商品を紹介しよう。


今週の神秘ナンバー占い(2019年8月16日〜22日)

今週の神秘ナンバー占い(2019年8月16日〜22日)

当たりすぎて怖い? ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスがお届けする今週の神秘ナンバー占い。神秘ナンバーとは、東洋数秘術、西洋数秘術、アステカ秘術など複数の占術をベースに導き出す、運気を読み解く数字のこと。あなたの運勢はどのように変化する?!


アメリカで家を新築するのはなかなか大変

アメリカで家を新築するのはなかなか大変

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などをケンタッキー州よりジョーンズ千穂が紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回は長年住んだアーカンソー州から、同じく南部のケンタッキー州へ引っ越した話。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング