他人と会話が続かない人が増えている?

他人と会話が続かない人が増えている?

アメリカ生活も20年を過ぎた翻訳家の高柳準が、アメリカ文化とそれにまつわる矛盾を語る「アメリカで暮らしながら想うこと」。今回は、ユーザーの質問に答えるAI 搭載の電子機器がアメリカの日常生活に浸透する一方で、他人と会話のキャッチボールができない人が増えていることについて。


アレクサならOK! でも会話のキャッチボールはできない……

 米国成人の半数以上がSNSを交流の場として利用している一方で、他者との比較や孤独感に苛まれる人が増えているという。

 FOMO(fear of missing outの略:取り残されることへの恐れ)という言葉が生まれたほど、1日に何時間もFacebookやTwitterなどのソーシャル・メディアをチェックせずにはいられない人もいるが、これらは一方的かつ真偽のほどは定かでない情報をベースとしている「交流の場」に過ぎない。

 また、自宅ではアマゾン・ドットコムのAIスマートスピーカー「アレクサ」、外出先ではiPhoneの「Siri」をパーソナル・アシスタントとして利用している人は多いが、天気や再生したい音楽、レシピをはじめ、質問すれば回答してくれるAIとの対話も基本となるのは一方的な問いかけだ。

 こうした一方向の交流に慣れたせいか、他人と滑らかな会話を続けることができない人が増えているとも言われている。現代人は利便性の代償として会話力を失いつつあるのだろうか?

インスピレーションが生まれない機械的な会話

 インターネットと共に育ったミレニアル世代の74%は他人とのコミュニケーションを対面による会話ではなく、デジタル、つまり非対面で済ませたいと考えているという。コンサルティング会社のKorn Ferryが昨年行った調査によると、インターネットと共に育ったミレニアル世代はデジタル式のコミュニケーションを好み、対面式の会話を好む割合はたったの14%に満たないという驚きの情報もある(2018年2月Korn Ferry 調査)。

 こうしたデータから見える数字だけでなく、明らかにミレニアル世代の人たちの会話力が衰えていると感じる。たとえばサービス業の店員たちをとっても、あえてコミュニケーションを取ろうとはしない人が増えたように思う。外出先で他人と世間話を始めても、こちらの質問にしか回答できない人、自分のことだけを延々と語る人、沈黙が訪れるとすぐにスマホに目を落とす人が増えたことは否めない。

 AIは、これからもさらに進化していくだろう。しかし、機械を通したコミュニケーションで、会話の醍醐味とも言える偶発的なインスピレーションは生まれるのだろうか? プログラムされた会話ではなく、各々の経験や観点をもとに会話を弾ませていくこと――交流とは、本来そういうものではないだろうか? 自動化、機械化が進む現代の社会が殺伐としたものにならぬよう、人間だからこそ経験できる貴重な会話力が失われないことを願うばかりだ。

この記事の寄稿者

東京都出身。インターナショナル・スクール、日本での普通教育を経て、1992年に渡米。シアトルで写真や美術史などを学んだのち、ニューヨーク州ロングアイランド大学で社会科学を専攻。在学中にはジプシー女性の社会的立場、低所得層のインド女性の人権などに関する研究に力を入れた。大学卒業後は日系新聞社、大手IT企業などで専任翻訳、ビジネス・コーディネーターを務め、その後、独立。現在はシアトルで翻訳家として活動を続けている。得意分野はテクノロジー関連の翻訳。趣味は写真、読書など幅広く、音楽はクラッシックや80年代までのパンク、ヒップホップやトリップホップ、初期のレスター・ヤングなどを好む。

関連する投稿


米南部人が大好きなフライドチキン、バーガーになって大混乱!

米南部人が大好きなフライドチキン、バーガーになって大混乱!

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などをケンタッキー州よりジョーンズ千穂が紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回は米南部の名物料理のひとつであるフライドチキンをバンズに挟んで売り出しただけで大騒ぎになってしまった件について。


手書きだけどテック! ミレニアルが支持する今どきの「お手紙」アプリ

手書きだけどテック! ミレニアルが支持する今どきの「お手紙」アプリ

デジタル化が普及してからは、手書きで手紙やカードを書く機会が明らかに減ってきた。しかし、その「手書きの特別感」に気づいたミレニアル世代たちの間で、いくつかの便利なアプリが人気を博している。


フェイスブック、アメリカで「デート・アプリ」開始

フェイスブック、アメリカで「デート・アプリ」開始

昨年から19カ国で展開されているフェイスブック社のデート・アプリ、「フェイスブック・デーティング」のサービスがアメリカでも5日(日本時間6日)から開始された。個人情報の流出事故が続く同社によるデート・アプリだけに、「セキュリティーは大丈夫なのか?」という声が飛び交っている。


女子プロサッカー・ラピノー選手とトランプ大統領のSNSバトル 

女子プロサッカー・ラピノー選手とトランプ大統領のSNSバトル 

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回はサッカー女子ワールドカップで優勝したアメリカ代表チームのキャプテン、ミーガン・ラピノー選手によるトランプ大統領批判から派生したSNSバトルについて。


アメリカ中のBBQを食べ歩いて1万ドル貰える、おいしい仕事とは?

アメリカ中のBBQを食べ歩いて1万ドル貰える、おいしい仕事とは?

アメリカを代表する肉料理のひとつ、バーベキュー・リブ。どの街にも我こそが一番だと名乗るバーベキュー自慢の店があり、独自のスパイスや焼き方を追求している。そんな中、ある大手企業が「1万ドルを貰って、アメリカで最も美味しいバーベキュー・リブを探してくれる人」という求人広告を出し、大きな話題を呼んでいる。






最新の投稿


今週の神秘ナンバー占い(2019年10月18日〜24日)

今週の神秘ナンバー占い(2019年10月18日〜24日)

当たりすぎて怖い? ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスがお届けする今週の神秘ナンバー占い。神秘ナンバーとは、東洋数秘術、西洋数秘術、アステカ秘術など複数の占術をベースに導き出す、運気を読み解く数字のこと。あなたの運勢はどのように変化する?!


大手メディアがまったく伝えない「トランプ大統領の良いところ」

大手メディアがまったく伝えない「トランプ大統領の良いところ」

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、アメリカの大手メディアがまったく伝えないトランプ大統領の良い部分を、保守系メディアではどう報道されているかを紹介しよう。


マイ・エコバッグより、さらに一歩進んだエコ袋とは?

マイ・エコバッグより、さらに一歩進んだエコ袋とは?

環境に配慮した日用品が市場に増えて来たアメリカでは、捨てずに何度も使用できるストローや、店で買い物をした際に自分のエコバッグを持参することなどがかなり定着してきた。最近ではエコバッグはもちろん、そのバッグ中にいれる商品の小分けに使う袋も洗って何度も使えるものや、土に返せるコンポースト素材のものが増えている。


今年も「ボスキャリ」の季節がやってきた

今年も「ボスキャリ」の季節がやってきた

アメリカの名門エモリー大学で28年間、教鞭をとってきた著者が語る、アメリカの日常と非日常。今回は、アメリカの大学を卒業する日本人学生のほとんどが参加すると言われている恒例の「ボストン・キャリア・フォーラム」における就活の様子について。


渦中の米WeWork、この3カ月半で新規オープン622件。大丈夫かの声

渦中の米WeWork、この3カ月半で新規オープン622件。大丈夫かの声

米メディアを騒がせている「WeWork(ウィーワーク)」。先月末のIPO撤回、カリスマ創設者の退任や現金不足など、厳しい局面を迎えていることで注目される一方で、ソフトバンク・グループの巨額出資、今月10日までの3カ月半で123都市、合計622件も新規共同オフィスをオープンしたことも注目されている。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング