アメリカの保守派は科学を信じない無知蒙昧な人たちなのか?

アメリカの保守派は科学を信じない無知蒙昧な人たちなのか?

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、日本では理解されにくい「なぜアメリカの保守派には地球温暖化を信じない人や、環境保護に力を入れない人が多いのか」について、保守派の見解を披露する。


保守派が環境保護に力を入れない理由は

 リベラル派は、「保守派は科学を信じない無知蒙昧な連中だから環境保護に力を入れないのだ」と断言している。本当にそうだろうか?

 保守派が、リベラル派が推す環境保護政策を否定する最大の理由は、経済効率の悪さである。オバマ政権は1500億ドルもの予算を投じて様々な再生エネルギー会社を後押ししたが、再生エネルギーの占める割合は1.7%上がっただけだった。また、オバマ政権の支援を受けた会社の多くが2008年の大統領選でオバマ候補に最大限の献金をした人々と関連のある会社だったことや、それらの会社の多くが倒産したため、保守派は「環境保護という大義名分を掲げて、政府が経済に介入すべきではない」と思っている。

 環境保護団体などがプラスティック袋やストローを禁じることにも、保守派は反対しているが、それは海を汚染しているプラスティックのゴミの9割はアジアとアフリカのものなので、真の汚染者の中国やインド、東南アジアを取り締まる方が効率がいいと考えているからだ。

 米大手メディアはことあるごとに、「97%の科学者が地球温暖化が起きていると信じている」と連発している。しかし、保守派はUCバークリーのミューラー物理学教授による「(その97%には)温暖化が人為的なものか自然現象かわからないと言っている科学者も含まれている」という発言や、ジョージア工科大学の気象学者、ジュディス・カリーによる「人為的ではないという研究結果を出した科学者は仲間はずれにされる」などの指摘を重視している。

大手メディアによる環境破壊の記事は誇大

 米大手メディアがかなり以前から報道してきた環境破壊に関する記事やニュースを、フェイク・ニュースだと考えている保守派は多い。その理由は下記のように、まるで誇大妄想といえるような記事やニュースが溢れているからだ。その一部を紹介しよう。

 1922年、アメリカ気象学会は「北極の氷山が急速に溶けている」と警告した。ニューヨーク・タイムズ紙は1969年に、「10〜20年以内に北極の氷は全て溶けて北極は単なる海になってしまうだろう」と伝え、1975年には「氷河期到来は避けられない」と警告している。また、1989年には国連が「2000年までに地球温暖化を食い止めないと、全ての国々が海に沈んでしまう」、2006年にはドキュメンタリー部門のアカデミー賞を受賞したゴア元副大統領の『不都合な真実』が「10年以内にキリマンジェロの雪が溶けてなくなってしまう」と言ったが、どれも実現していない。

 そんな中、今年6月初旬、米モンタナ州にあるグレイシャー国立公園は、「地球温暖化によって2020年、あるいは2030年までに公園内のすべての氷河が溶けてしまう」と書かれた掲示板を取り外した。6月13日のタイム誌は「地球温暖化により、太平洋の島々が海に沈んでいく」と伝えたが、ニュージーランドのオークランド大学は「沈んでいくはずの太平洋の島々の面積が増えている」という研究発表を報告した。

 アメリカではここ十数年、ハリケーンや大雪で大きな被害が出る度に、リベラル派が「地球温暖化によるものだ」と断言しているが、国連が設立した気候変動に関する政府間パネルは、「地球温暖化によって異常気象現象が激化しているという科学的証拠はない」と言っている。

 上記のように、大手メディアが恐怖を煽るような警告を繰り返している中、実際の状況がそうはなってはいないため、環境破壊の脅威を叫ぶリベラル派の声は、多くの保守派の耳にはオオカミ少年の叫びとしか聞こえなくなっているのである。

環境保護を訴えるリベラル派が飛行機や大型車で移動する現実

 さらに、「温暖化阻止のために飛行機を禁じよう」と訴えて人気を博しているコーテス民主党下院議員が、自分はワシントンDCとNYを電車ではなく飛行機で往復し、地下鉄ではなく車に乗っていることや、環境保護を唱えるニューヨーク市長が毎朝、大型車でマンハッタンからブルックリンのジムに通っている、などの民主党の政治家の発言とは矛盾する行動も、保守派の環境保護に対する関心をそぐ原因となっている。

 リベラル派を代表するようなケネディ家でさえ、偽善といえる行動をしていたことも保守派の間ではよく知られた話だ。2005年、ケネディ一族などの富豪が集うマサチューセッツ州の東海岸沖に環境保護派が風車を建設しようとしたとき、環境保護の顔だったテッド・ケネディ上院議員や自らも風力発電会社を所有するロバート・ケネディJr.を筆頭に、ケネディ一族全員とリベラルな金持ちたちが「景観を損ねる」、「ボート遊びや自家用飛行機の邪魔になる」などの理由で大反対し、建設計画を潰した経緯がある。

 これでは、保守派が怒るのも無理はないだろう。環境保護を叫ぶ民主党の政治家やリベラル派の市民たちが自ら地下鉄や自転車に乗って模範を示し、大手メディアが中立で冷静な報道を始めない限り、保守派が環境保護に興味を示すことはなさそうだ。

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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