「スポンサーになってくれませんか?」という依頼が届いたら

「スポンサーになってくれませんか?」という依頼が届いたら

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などをアーカンソー州よりジョーンズ千穂が紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回は熱心なキリスト教徒が多い南部らしい、「ミッション・トリップ」についての話。


ティーンエイジャーの親戚の子たちからの手紙に困惑

 アメリカでは地域の差異はあれど、ほとんどの地域で学生たちはすでに夏休みに入っている。そんな夏の風物詩のように、毎年、夏休みの数カ月前から、うちにはある種の手紙が届き始める。その手紙とは、親戚や知人の子供たちから届く、「私のスポンサーになってくれませんか?」というお願いが書かれたものだ。

 初めて手紙をもらったときは、「スポンサーになる」という意味がわからず困惑したが、敬虔なキリスト教徒の人口が高い南部ではよくあることらしい。キリスト教徒のティーンエイジャーたちの多くが、学校の長い夏休みを使って「ミッション・トリップ」という旅を経験するのだが、その旅に掛かる費用、つまり旅費は寄付で集めることが一般的で、その寄付をする人たちをスポンサーと呼ぶのである。

 「ミッション・トリップ」とは、簡単にいえば遠方や海外のキリスト教徒たちとの交流や助け合い、ボランティア活動をする機会を得る旅。アメリカで一般的な夏休みの過ごし方として、親がお金を払って送り出すサマーキャンプがあるが、それとは少し趣が異なり、「ミッション・トリップ」は、キリスト教徒のミッショナリー(宣教師、伝道師)の予行演習のようなものだ。

 これまではスポンサー依頼が届いても知らないふりをしていたのだが(苦笑)、今年は親しい親戚の子供からの直接の依頼だったため、協力してあげようと考えた。その子のミッション・トリップの行き先はウガンダで、期間は約1ヶ月。「ウガンダで学校施設の建設や修復、子供たちの世話をする」と書かれてあり、彼女の意気込みと情熱が伝わるものだった。

妥当額はいくらなのか?

 しかし、その旅には一体いくらが必要なのか、スポンサーを依頼されたのは私だけで、私に全責任があるのか等、わからないことばかり。とりあえず、ウガンダへの旅費はいくらかかるのかをググってみたところ、かなり高額で一瞬ひるんでしまった。

 その後、周囲のアメリカ人に聞いてみたところ、通常、スポンサーは大勢の人に依頼をするもので、援助する金額も数十ドルから全額まで、「そのミッショナリーに対する気持ち(と財力)次第」ということが分かった。妥当額に悩み、いくら寄付するか考えあぐねている間に、結局ミッショナリーを重要視している彼女の祖父母が相当な額を出してくれたので、それで足りたという連絡が届いた。

 通常、ミッション・トリップへ行くのは高校生や大学生などの若者がほとんどだが、なかには大人になってからミッション・トリップに出る人もいる。本格的な宣教師として他国に数年単位で滞在し、ボランティアや布教に努める人もいるし、その行き先は世界中だ。


 今回の依頼を通して、両親ではなく、親族や他人にお金を出してもらって、自分が信じる世界へ羽ばたいていくアメリカ人の若者たちの逞しさをとても眩しく感じた。彼や彼女たちが安全にいろいろな経験や知識を得られることを祈りたい。それと同時に、私がひとりの若者が海外で夏を過ごすための全額スポンサーでなかったことに少々安堵した夏の幕開けだった(苦笑)。

この記事の寄稿者

 東京都出身。アメリカ人航空機パイロットの婚約者の米本土転勤に伴い、一般企業を退職。K-1 Visa にて渡米したのち結婚。現在、アメリカ南部アーカンソー州在住。移住後はパイロットを夫に持つ婦人の会や、日本語補習学校を通じての活動、現地日本人や移民•マイノリティーへの支援、生活アドバイス、ネット上でのアメリカ生活に関する相談・コンサルテーション、翻訳、通訳、観光案内など、国際線パイロットの夫のスケジュールに翻弄されながらも、さまざまなボランティア活動に力を注いでいる。

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