アメリカ人がリタイア後に暮らしたい場所は?

アメリカ人がリタイア後に暮らしたい場所は?

将来、「海外でのリタイア」を夢みる人は、少なからずいるだろう。アメリカで引退することを考えた場合、日本人ならば理想の場所として、ハワイやカリフォルニアなどを思い浮かべるかもしれない。しかし、この2州は見方によっては「最も住むべきではない州」らしい。少なくともアメリカ人の多くが敬遠する、その理由とは?


生活物価という視点では、ハワイ、カリフォルニアは最下位に

 「仕事を引退した後に潤沢な資産がある」という人ばかりではないのは、日本もアメリカも変わらない。子供が成人する前だと、学校やその他の問題もあり、一か所に定住する方が便利だが、アメリカ人たちは自分の資産状況に合わせて、引退後は「よりリーズナブルに暮らせる場所」に躊躇なく引っ越す傾向が高い。

 その証拠に、アメリカ経済情報サイト『Finance 101』が昨年末に発表した「生活物価指数」を基準にした引退後の暮らしにお勧めの州ランキングは、かなり興味深い。彼らが勧める州の第1位はアーカンソー州、2位はウエスト・バージニア州、3位はオクラホマ州と、日本人には馴染みのない場所ばかりだ。逆に日本人に人気のハワイ州やカリフォルニア州は、かなり「お勧めできない州」という評価で、ハワイ州は最下位、ワースト2がカリフォルニア州である。

 両州ともに気候や自然の美しさは素晴らしいが、とにかく税金や生活費が高い。同サイトによれば、ハワイ州の生活物価は、アメリカ全体の平均よりも何と87%も上回っているという。また、場所によっては年々上がり続ける固定資産税などが生活を圧迫し、長く慣れ親しんだ場所でも引っ越しをせざるを得なくなる人は、両州には大勢いることも知られている。

アメリカにおける「リタイアメント」と日本の定年制度

 アメリカと日本のリタイアメントにおいて大きく異なることのひとつが、「定年制度」だろう。アメリカには基本的に「定年退職」という慣習は存在しない。一部の公共交通機関などでは安全性重視という理由から労働者の年齢制限を設ける場合もあるが、「雇用における年齢の制限」は禁止されており、たとえ公務員のような職であっても、雇用主側が定年を設定することは出来ないようになっている。つまり、アメリカではその人が引退したくなった時が「定年」となるわけだ。若いうちに財をなして早く引退する人もいれば、高齢になっても若い人たちのようにアクティブに働き続けるシニアも大勢いる。

 日本よりはるかに多くのシニアが現役として社会活動に従事している感はあるが、一方で401K(個人拠出年金)やIRA(個人退職金口座)などのリタイアメント貯蓄が引き出せるのが「59歳6ケ月以上〜」であるため、そこが引退年齢のひとつの目安になっている。ただし、リタイアメント貯蓄は引き出しを開始する時期をできるだけ遅らせる方が得なため、60歳から引き出しを始めるのは一般的ではないこともアメリカの実情だ。

 そして引退の時期になると、お金に余裕がない人たちは、自分の生活水準にあった地域を探して引っ越していく。大きな家に住んでいた人は家を売ってダウンサイズし、身軽になってから第二の人生を楽しめる場所へと移っていくのが一般的だ。

 余裕がないのに長年住んだ家にしがみついたり、慣れ親しんだ場所に住み続けることよりも、生活物価指数に基づいてリタイア後の居住地を決める。これにはアメリカ人のドライで合理的な気質も大いに関係しているだろうが、人生90年時代における選択肢のひとつではあるだろう。

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