女子プロサッカー・ラピノー選手とトランプ大統領のSNSバトル 

女子プロサッカー・ラピノー選手とトランプ大統領のSNSバトル 

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回はサッカー女子ワールドカップで優勝したアメリカ代表チームのキャプテン、ミーガン・ラピノー選手によるトランプ大統領批判から派生したSNSバトルについて。


ミーガン・ラピノー選手とは?

 今月7日に終了した2019年サッカー女子ワールドカップで、アメリカ代表チームが優勝した。キャプテンを務めたミーガン・ラピノー選手は同大会でMVPと得点王を両方獲得して最も注目された選手のひとりだが、アメリカではサッカーに関するニュースよりも、トランプ大統領とラピノー選手がSNSで言い争ったニュースの方が大きく報道された。

 ミーガン・ラピノーは素晴らしいサッカー選手だ。彼女は同性愛者であることを公表して性別と人種の平等、LGBTQの権利のために積極的に発言し、自身を「社会的公正のための活動家」だと言っている。人気のあるスポーツ選手であれば、彼らが気にかけている問題に世間の注意を集めることができる力を持っていることを、彼女は知っているのだ。数年前、多くのアメリカン・フットボール選手たちが、試合前に米国歌が演奏されている間、社会的不平等に対して、ひざまずいて静かに抗議したことを覚えている人は多いだろう。そのムーブメントがアスリートの間に広がった際には、ラピノーもそれに参加して抗議した。彼女はその行動について、エッセイを書いている。その中で彼女は「自由を約束することを象徴している国旗に対し、最大限の敬意を表すために行ったことだったが、多くの人々は彼女の抗議を国旗に対して無礼だと捉えた」と、その実感を記している。

 それ以来、彼女は米国歌が演奏される際、ひざまずくことを辞めた。現在は、国歌が演奏されるときに多くの人がするように胸に手を置いたり、一緒に歌ったりはせず、静かに敬意を表して立っていることによって、彼女は主張を貫いている。

なぜトランプ大統領はラピノーを攻撃したのか?

 「ラピノーが国歌演奏中に抗議することは適切だと思うか?」とメディアから尋ねられたトランプ大統領は、「思わない」と答えた。トランプ大統領は、前述のフットボール選手たちが抗議を表したときにも、そういう選手たちは「たぶん、この国にいるべきではない」と発言している。

 その大統領発言の数日後、「もしワールドカップで優勝したら、ホワイトハウスに行くか?」(アメリカでは通常、スポーツチームが大きな大会で優勝すると、大統領からホワイトハウスに招待される)と、メディアから質問されたラピノーは、「ホワイトハウスなんかには絶対行かない」とFワード(放送禁止用語)を交えて回答し、大きな話題になった。

 トランプ大統領は自分への異議を容認することができない。そして彼には、自分の口を閉ざしておく威厳や自制心もない。それ故、周囲の予想通り、彼は常套手段のツイート攻撃を解き放ち、そして、これまた予想通り、彼の支持者たちもそれをフォローした。

このSNS合戦の本当の意味は?

 トランプ大統領とラピノー選手は共に非常に自信家で、思ったことをすぐに行動に起こし、積極的に発言をする。多くの共通点があることから、実は彼らは仲良くなれるのではと思う人もいるかもしれないが、彼らの違いは類似性よりも強い。

 トランプは内省的な男ではない。彼は権力、富、注目を得るための飽くなき欲求に駆られている男だ。自分自身を完全無欠であると考え、国民の献身と従順だけを求めている。彼の力は人々の恐れや怒りを悪用することから来ているので、彼はそれを引き起こす問題を解決することには興味がない。

 ラピノーは人々のことを気にかけている。そして、人々の生活を向上させるために彼女の地位を使う責任を感じている。無作法な面もあるが、彼女は謙虚でもある。自分が完璧な人間ではなく、間違いを犯すことがあることにも気づいている。そんな彼女は、アメリカ人が平等な権利や社会的不公正のような難しい問題について会話をする勇気を持つことができれば、アメリカはより良い国になると信じていると話している

 真のアメリカ人として、どう行動するべきだろうか? アメリカを誰にとっても良い場所にするために言論の自由を行使するか? それとも、男と国旗へ盲目的な献身をし、同調することを拒む人々を静かにさせようとするか?

この記事の寄稿者

1974年生まれ。文学書とコーヒーを愛するコラムニスト。書籍に関しては幅広く読むが、コーヒーに関しては、豆の原産地から流通や焙煎の過程までを詳細にフォローし、納得したものだけを味わうことにしている。温厚で穏やかな性格であるものの、コーヒー豆へのこだわりと同様に理路整然としない、あるいは納得できない社会の動きに対しては、牙をむく活動派的な一面もある。妻と犬一匹と共に、カリフォルニア州オークランド在住。

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