アメリカで家を新築するのはなかなか大変

アメリカで家を新築するのはなかなか大変

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などをケンタッキー州よりジョーンズ千穂が紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回は長年住んだアーカンソー州から、同じく南部のケンタッキー州へ引っ越した話。


引っ越し先はフライドチキンで有名なケンタッキー州 

 アメリカ南部にあるケンタッキー州に引っ越してきて早1カ月。あの「ケンタッキー・フライドチキン(KFC)」の店舗でよく流れている「My Old Home Kentucky(ケンタッキー州の我が家)」が州歌だが、テレビのCMやら、スーパーマーケットのBGMやら、どこにいっても流れていて、まるで国歌のようだ。その曲を聞くたびに反射的にKFCを思い浮かべてお腹を空かせている私は、間違いなくこの州の新参者である。

 ここへ引っ越して来る前から、アーカンソー州に住みながら遠隔で家を建てていたのだが、日本とは事情が随分と違って、驚愕させられることが多かった。

 まずは、アメリカの住宅ローン。住む場所によってかなり異なるものの、8月現在の金利の平均値は30年固定金利で平均3.75%と日本と比べて随分と高い(日本が羨ましい)。また、日本のように銀行と直接やりとりするのではなく、モーゲージ・ブローカーという職業の人や会社を通じて住宅ローンを組むことが多い。

 次は家のロケーション。アメリカは日本のように電車や地下鉄が発達していなので、ニューヨークの都心部でもない限り、「駅前」はない。そのため、ロケーションで大切になるのは「子供の学区が良いエリア」となる。学校の質の高さに伴って明らかに家の価格が上がる。学校の質が高いということは、その地域はより安全であることが多く、貧富の差が大きなアメリカでの家選びでは重要なポイントになるのだ。

 そこに利便性や家からの景色などが加味され、すべてを網羅するような立地に建つ家は、家の価格が比較的安いとされる米南部の州であっても1億円越えはザラで、これが西海岸や東海岸の沿岸部の都心となればその数倍になる。

都合のよい部屋数の家が見つからず、注文住宅を選択

 アメリカでは、最初に買った家に一生住み続けることはほとんどない。家族が増えれば大きな家に住み替え、子供たちが巣立てばその大きな家を売ってダウンサイジングして、小さめの家に引っ越し、残りは老後の資金にあてるのが通常だ。その際に、気候の良い土地や、老後を過ごしやすい土地に移り住む人たちも少なくない。

 このようにアメリカでは、仕事の転勤などによる異動に限らず、ライフステージの状況によって引っ越す人が多いので、家の売買は常に盛んだ。新築だけでなく中古物件も立地や状態が良ければ直ぐ売れるため、儲けが出ることも多いので、家の改築や家選びのノウハウを学べる『HGTV("Home & Garden Television"の略で、アメリカのケーブルテレビのひとつ)』のテレビ番組などが人気なのもうなずける。

 我が家が、今回わざわざ注文住宅を建てた理由は、自分たちが望む大きさの家が市場になかったからだ。治安の良いコミュニティーに住もうとすると学区が良いことが多いため、子供が数人いる家庭を標準にした家が多い。となると、必然的に市場に出る家は「部屋数が多い大きな家」になる。アメリカはセントラル空調が多く、使わない部屋があれば余計な光熱費がかかり、固定資産税も増えてしまう。自分たちに必要のない部屋は排除し、必要なスペースを贅沢にとる家にしたかったので、割高でも注文住宅にしたのだが、結果的に満足のいく仕上がりとなった。アメリカ南部では珍しくないが、これから裏庭にプールを造って、バケーションを家で楽しむ“ステイケーション”を満喫するつもりだ。しかし、プールがあるからといって家の価値がたいして上がるわけではなく、家を売る際にはプール建設にかかったコストはまるまる負債となる見込みだ。

 それでも、この地で不動産投資をしている友人家族は「ここはリセール・バリュー(売る時の価値)のあるコミュニティーだ」と熱弁をふるった。私たちもコミュニティーの利便性と雰囲気に惹かれ、小さいながらもプールは作れそうな庭もあったので、夫の仕事が転勤の可能性が高いことも考慮して、リセール・バリューを重視した立地を選んだのである。

 アメリカでは「3軒建てないと満足した家は建てられない」とよく言われるのだが、この家は私たちにとって2軒目だ。まだ引っ越したばかりだが、次の引っ越しもあるのだろうか……。

この記事の寄稿者

 東京都出身。アメリカ人航空機パイロットの婚約者の米本土転勤に伴い、一般企業を退職。K-1 Visa にて渡米したのち結婚。現在、アメリカ南部アーカンソー州在住。移住後はパイロットを夫に持つ婦人の会や、日本語補習学校を通じての活動、現地日本人や移民•マイノリティーへの支援、生活アドバイス、ネット上でのアメリカ生活に関する相談・コンサルテーション、翻訳、通訳、観光案内など、国際線パイロットの夫のスケジュールに翻弄されながらも、さまざまなボランティア活動に力を注いでいる。

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