【Red vs. Blue】「白人共和国」を望む共和党は、自由の国アメリカを破壊するのか?

【Red vs. Blue】「白人共和国」を望む共和党は、自由の国アメリカを破壊するのか?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回はタイム誌の「共和党はアメリカを白人共和国にするためにトランプを支持し、アメリカを破壊しようとしている」という記事について。


 先月14日、トランプ大統領が自身のツイッターで、民主党の女性新人議員4人に対し、「破壊されて犯罪に満ちた自分たちの出身地へ帰れ!」と投稿し、日本でもニュースになった。その4人の女性議員たちが白人ではなかったため、アメリカでは「人種差別だ」と物議を醸し、米メディアが猛烈な抗議報道を展開、ソーシャルメディアも炎上した。

 ところが、大統領率いる共和党員の大半は報道陣がコメントを求めても「大統領は差別主義者ではない」と気弱に発言するばかりで、多くはコメントそのものを避けた。この共和党の姿勢に対し、タイム誌のコラムニストが、「共和党はアメリカを白人共和国にするためにトランプを支持し、アメリカを破壊しようとしている」という見出しで、共和党が試みている有色人種への選挙妨害策、選挙区の操作、移民の米軍入隊拒否など数々の事実を例に挙げた記事を出した。本欄の保守派、リベラル派のアメリカ人はこのタイム誌の記事をどう受け止めたのだろうか?

出典: TIME
"Republicans Want a White Republic. They'll Destroy America to Get It"

Red: タイム誌はネタ切れで、無謀にも人種差別的ナンセンスを記事にした

Time Magazine is out of ideas...recklessly publishes racist nonsense

 アメリカのジャーナリズムは、新たな低水準にたどり着いた。この記事を執筆したキャロル・アンダーソンとタイム誌は、これを出版したことを恥じて首を吊るべきだ。記事全体が人種差別的な侮辱と、メリットも証拠もない異様な非難に満ちており、この人種差別的な与太話は、タイム誌の編集者の間で校正作業さえされずに発表されたのだろう。

 私が今ここで、もちろん無料で校正作業を代行して、アンダーソン氏の論説内の重要な問題点をいくつかまとめてみよう。

 まず、記事の題名がばかげている。証明も証拠も資格もない人の意見など、人は真剣には受け止めないものだ。「共和党は白人共和国を望んでいる」って? 奴隷制度を廃止させて公民権改正を支持し、アメリカ南東部の人種差別廃止を最終的に主唱したのが共和党であるという史実に基づいて、私はこの推論をとてもばかげていると考える。もし共和党が白人共和国を望んでいるのであれば、こうした行いはすべて間違いだったことになるからだ。

 共和党が白人共和国を望んでいるという証拠として、アンダーソン氏が2番目に挙げているのは、「共和党の政治家が大統領によるツイッターの内容を非難していない」というものだ。冗談じゃない。「大統領のつぶやきを非難しない」ことは「白人共和国を望んでいる」ことと同じではない。アンダーソン氏の議論は質的・量的ないずれのデータも適切に使えておらず、彼女の推論を支持する論理的な枠組みを明確に概説することにも失敗している。言いたいことはもっとあるが、私が読む限り、この論説は燃えるタイヤのゴミの山にすぎない。

 タイム誌は自社のジャーナリズムの質を気にしていない。さらに重要なことは、キャロル・アンダーソン氏はドナルド・トランプを嫌っており、その延長で共和党員と関係する全アメリカ市民を嫌っている。そう推測しない限り、この記事はすべてナンセンスだ。共和党は白人、ヒスパニック、黒人、アジア人、そのほかの多くの民族および宗教を持つ人々で構成されている多種多様な集まりの政党だ。このグループ(9,800万人以上)の人々がみんな白人共和国を望んでいて、そのために国を破壊しようとしているという発想は、笑止千万以外の何物でもない。

Blue: 人種差別を除いて、すべて嘘だった

It Was All a Lie. Except for the Racism

 米国雇用機会均等委員会(EEOC)のウェブサイトには、職場における「違法な嫌がらせの例」が記載されている。その「出身国に基づく嫌がらせ」のサンプル例の中には、「自分の出身地に帰れ」という表現がある。トランプが自身のツイッターで、アメリカ政府のために働く非白人女性4人に対して同じ表現の投稿をした翌日に、EEOCが職場での差別を告訴する方法についての情報をツイッターで投稿した。もちろん偶然ではない。

 トランプは、これまでずっと「白人以外の人だけを特定の言葉で表現」してきた。共和党はトランプの人種差別に対して「(トランプが言っていることは)賢い戦略だ」、「トランプは批判から身を守っているだけだ」、「トランプは労働者階級と地方の支持者を元気付ける政治の天才だ」といった具合に言い訳リストを持っている。

 しかし、実際はどうなのか。「オバマ大統領が本当はアメリカ生まれではない」と主張する「バーサー(出生について誹謗中傷すること)」運動を主導したのもトランプだし、彼は白人優位主義者を非難することも拒否している。それなのに自分が人種差別主義だと非難されると、その非難をした人が差別主義者であると主張する。それに失敗すると、黒人労働者の雇用数を大幅に誇張して述べて、その主張をサポートするために人種差別主義者を自称するケイティ・ホプキンスのツイートを再ツイートしたりする。

 トランプの貿易戦争はアメリカの農民にひどい痛手を与えたため、農民たちが働き続けるための援助には160億ドルが必要になったし、トランプは炭鉱事業を継続させると約束したが、彼が大統領に就任してからの2年で50箇所もの炭鉱が閉鎖された。つまりトランプは、労働者階級や地方の支持者たちの生活を向上させるためには何もしておらず、「何もしていないという事実から人々の気をそらせること」しかやっていないのだ。

 トランプは、怒りと恐れを煽ることによって地方の支持者に彼が救世主だと信じ続けさせることができると考えているようだ。確かにトランプ支持者たちは移民に対して怒り、非白人に対して恐れを感じているかもしれないが、同時に彼らも食卓に食べ物を持ち帰らなければならない。それなのにトランプが自分の支持者たちに与えているのは、喉につまるほどの怒りだけだということは、かつてないほど明白である。

寄稿者

Jim Smith

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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