どんなに銃撃事件が続いても、銃を手放さない米保守派の言い分とは?

どんなに銃撃事件が続いても、銃を手放さない米保守派の言い分とは?

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、罪のない大勢の人々が犠牲になる悲惨な銃撃事件が立て続けに起きているアメリカで、銃規制に断固として反対し続ける保守派の見解を著者が解説する。


保守派があらゆる銃規制に断固として反対するには、ワケがある

 7月28日にカリフォルニア州、8月3日にテキサス州、4日にオハイオ州で銃乱射事件が立て続けに起き、14日にはペンシルベニア州フィラデルフィアで6人の警官が撃たれる銃撃戦が起きた。このアメリカの現状にリベラル派が銃規制の強化を訴えているが、保守派はあらゆる銃規制に断固として反対を続けている。

 保守派の多くは信心深いキリスト教徒だ。アメリカはキリスト教の精神に則って建国されたと信じ、聖書と独立宣言、そして合衆国憲法を心底から尊重している。

 独立宣言には、「すべての人間は生まれながらにして平等であり、創造主によって生命、自由、幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」と記されているが、保守派は、「生命と自由を守るためには銃が必要だ。銃所持権は神から授かった不可侵な権利の一部である」と解釈している。

 合衆国憲法補正第二条には、「よく整えられた義勇軍は自由な国の安全保障に必要であり、国民が武器を所有し、それを携帯する権利を侵害してはならない」と記されている。これに対しリベラル派は、「合衆国を建国した当時は英国の圧政に立ち向かうために武装した義勇軍が必要だったが、今は必要ないので補正第二条は無意味だ」と主張している。しかし、2008年に最高裁は、5対4で「当時は国民全員が義勇軍だったので、この条項は国民全員の銃所持・携帯権を認めた。米連邦政府が国民から武器を取り上げて国民を無力化することを恐れた地方自治権擁護派が、この補正条項を付加した」という判決を下した。これは、連邦政府の弾圧に対する抑止力として国民の武装を支持したのが補正第二条、であることを意味している。

 2010年のシカゴでの拳銃禁止令をめぐる裁判でも、最高裁は5対4で、「自己防衛のための銃所持・携帯権は補正第二条で認められている」として、拳銃禁止令は違憲という判決を下している。

リベラル派の理屈では筋が通らない

 それでもリベラル派は、「合衆国建国当時の義勇軍はマスケット銃を使っていた。半自動式ライフルは補正第二条で認可されている“武器”ではないので禁じるべき」と主張している。しかし、この論法に従うと「当時はモルモン教は存在せず、報道機関は新聞しかなかったので、補正第1条に記されている信教の自由と言論出版の自由は、モルモン教、テレビ、ラジオ、インターネットには当てはまらない」ということになってしまう。

 8月3日のテキサス州銃乱射事件が起きた直後、私の隣人は開口一番に、「銃を隠さずに携帯することが許されているテキサスだというのに、被害者の中に銃携帯者がいなかったなんて信じられない!」と言った。この「銃を持った悪者を阻止できるのは、銃を持った善人のみ」という保守派の考え方は、前述したように合衆国憲法補正第二条に支えられている。だから、アメリカの最高裁でいつかリベラル派判事が5人になって憲法の解釈が一変するまでは、アメリカで銃規制法案が通ることはないだろう。

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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