渦中の米下着ブランド、トランスジェンダーの起用で挽回できるか?

渦中の米下着ブランド、トランスジェンダーの起用で挽回できるか?

セクシーでゴージャスな下着で知られる米ブランド、「ヴィクトリアズ・シークレット」のファン離れが著しい。年々、「セクシー女性の崇拝は時代にはそぐわない」という風潮が強くなる中、昨秋の同社による「トランスセクシャルは採用しない」発言が炎上し、恒例のランウェイショーの中止にまで追い込まれた。同社が考えた挽回策は……?


あの「ヴィクトリアズ・シークレット」がトランスジェンダーを採用

 毎年恒例の豪華絢爛な下着のランウェイショーを今年は開催しないことが発覚して注目を集めている「ヴィクトリアズ・シークレット」。昨秋に、当時の同社チーフ・マーケティング・オフィサーだったエド・ラゼック氏が、「トランスセクシュアルのモデルは起用しない。なぜなら我々のショーはファンタジーだからだ」と発言して、「時代錯誤」だとSNSが大炎上したのは記憶に新しいが、その時代錯誤のイメージを払拭するためか、トランスジェンダーのモデルを初めて採用したことを発表した。

 同社が採用したのはブラジル出身のモデル、ヴァレンティナ・サンパイオ。昨秋に炎上した際には、性別問題だけでなく、同社のモデルたちの体型が多様でないことや、現実の女性が下着に求めるものとかけ離れすぎていることなどを巡って多くの批判が噴出した。そのような多くの批判に対応するために、同社の本来の意向を大幅修正してトランスジェンダーのモデルを起用したことは、今どきのマーケティングの典型事例のような出来事だ。

明らかに時代は変化している それに対応できなければ生き残れない

 セクシーな“エンジェル”と呼ばれるモデルたちを生み出したヴィクトリアズ・シークレットのランウェイショーは、毎年ショーの開催に約12億円もの予算を掛け、2001年にアメリカで地上波放送が開始されて以来、毎年約8億人の視聴者を記録してきた。しかし、今年5月、『ニューヨーク・タイムズ』紙が恒例のランウェイショーを今年は地上波放送しないことを記事にしたため、同社の行方が注目されていた。同記事によると、ランウェイショーの視聴者はこの5年間で最盛期に比べて3分の2も減少し、昨年の視聴者は約330万人だった。2013年の970万人に比べるとその視聴率の冷え込みは明らかだ。

 ヴィクトリアズ・シークレットの親会社である「L ブランズ」のレス・ウェクスラーCEOは社内報で、「私たちのビジネスをすべての方面から新たな目線で見直した。ブランドは進化し、成長するためには変化しなければいけない。それを心に留め、 伝統的なランウェイショーを考え直すことに決めた。今後、テレビ放送は適しているとは思わない」との考えを発表したと言われている。

 アメリカでは同社の豪華なランウェイショーが開催されるたびに、フェミニストたちが「ほぼ裸の女性がランウェイを歩くことが成功なのか?」との批判の声を上げてきた。大成功を収めているときは無視をしても問題なかった批判の声も、ショーのテレビ放送が中止に追い込まれ、ブランドが一丸となって作ってきた「セクシー・ファンタジー」が世の中に通用しにくくなってくれば、大手ブランドでも時代の流れに対応せざるをえない。これまでは会議の卓上にあがったこともなかったと予想されるトランスジェーのモデル起用は、ヴィクトリアズ・シークレットというブランドの方向性を大きく変えようとする動きのひとつに他ならないだろう。

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