高給を約束!? 中国がLinkedInでスパイをリクルート

高給を約束!? 中国がLinkedInでスパイをリクルート

世界中に5億4千万人超のユーザーを持つ、ビジネス特化型SNS「LinkedIn(リンクトイン)」。求職者の転職、企業の採用やビジネス上でのネットワーキングに広く使われているサービスだ。29 日、このLinkedInを使って中国政府が諜報員を世界規模でリクルートしていることを『NYタイムス』紙が記事にし、ユーザーに注意を促した。


いかにも本物のリクルーターを装おう手口とは?

 米マイクロソフト社の「LinkedIn(リンクトイン)は、5億4千万人を超えるユーザーを抱える世界最大のビジネス特化型SNSだ。2003年にサービスが開始されて以来、同業者や同僚、顧客などビジネスを通して知り合った人たちが繋がってネットワーキングをするだけでなく、転職サイトとしての役割も果たしている。実際にLinkedInを通じてヘッドハンターから声が掛かって転職した人は多く、会ったことも仕事をしたこともない人からのリクエストを承認してネットワークを広げている人も多い。


 そのプラットフォームを利用して、中国政府が海外在住の諜報員をヘッドハンティングしているというニュースを『NYタイムス』紙が記事にし、具体的な手口を公表した。米オバマ前大統領の元で働いていた外交官や、元デンマーク外務省の職員などに対し、中国のヘッドハンティング会社の社員を装った人などから「(LinkedInに掲載されている)あなたの履歴書を見た。高給を保証する仕事がある。ぜひ北京で面会したい」などという個人メッセージを送ってアプローチされたという内容だ。実際には存在しない企業の人事課や米国内大学の研究員など、相手が信用しやすい偽プロフィールを使い、転職先をヘッドハントするメッセージを送って近づいて来る手口で、特に狙われているのが政府関係や行政の仕事の契約期間が切れたばかりの人たちや大学職員、研究員などだという。

一本釣りには時間とコストがかかるから、SNSで安価に諜報員をリクルート

 ひとりの外国人に狙いを定め、中国から担当者を海外に派遣してリクルートし、その人を自国のスパイに仕立て上げるには時間とコストが掛かる。より高額な給料を得られる転職先を探す人が多いLinkedInというプラットフォームを通して、国際政治や調査などに明るい人を大勢、しかも同時にリクルートする方が確かに効率的だ。米対敵諜報機関セキュリティーセンターのディレクター、ウィリアム・エヴァニナ氏によると、すでに世界中の何千もの人が中国当局から諜報員勧誘の布石としてコネクション・リクエストが送られているという。コネクトした後で、具体的な仕事の条件を提示した魅力的なメッセージが送られてくるわけだ。

 このようなリクルートが簡単にできてしまうプラットフォームの仕組み自体も問題視されている。LinkedIn側もツイッターやフェイスブック同様、偽プロフィールと見られるアカウントは削除するべく動いてはいるようだが、前述のエヴアニナ氏によると、条件のよい仕事を求める人が集まるプラットフォームなので、怪しいアカウントを継続的に削除しても、中国からの諜報員リクルート件数に減少は見られないそうだ。今年5月には元CIA職員だった男性が中国のスパイになって検挙され、20年の懲役が決まってニュースになったが、彼の場合も最初のコンタクトはLinkedInを使ったものだった。

 人事担当者を名乗る相手がフェイクか否かを判断する材料のひとつは、プロフィール写真(多くのフェイク・アカウントはネットから引っ張った他人の写真などを使用)が本物かどうかだという。また、プロフィールに掲載されている情報の内容を吟味すれば、おかしな点に気づくこともあるという。何より簡単な防御策は「知らない人からのリクエストを承認しない」だが、仕事を探している人はそうもいかない。となると、「条件が良すぎる仕事」は疑ってかかるしかないということかもしれない。

この記事の寄稿者

関連する投稿


人権より中国の「金」の方が大事なNBAの偽善

人権より中国の「金」の方が大事なNBAの偽善

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けする、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は多くのスター選手を輩出している米NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)が、自らの方針を変えてまで中国市場に取り入っていることについて。


マイクロソフトが米国防省のクラウド契約を獲得

マイクロソフトが米国防省のクラウド契約を獲得

米国防省、通称「ペンタゴン」のクラウド・コンピューティング契約をマイクロソフト社が獲得した。これは破竹の勢いで拡大を続けるアマゾンドットコム社(AWS)が取ると見られていたため、米国防省のこの決定に業界がざわついている。


トランプ大統領の「グリーンランド購入」提案に米保守派が驚かない訳

トランプ大統領の「グリーンランド購入」提案に米保守派が驚かない訳

メキシコ国境と隣接する米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回は、多くの人たちが突拍子もない話だと驚いたトランプ大統領のグリーンランド購入提案に対して、米保守派はまったく驚いていないということについて。


従業員が選ぶ「働きたい職場 全米トップ100」

従業員が選ぶ「働きたい職場 全米トップ100」

アメリカでも就職するときには給料や福利厚生、職場環境、自由度など様々な点を考慮して企業を選ぶ。しかし従業員にとって、これらの条件の何が最も魅力なのかはわからない。そこで注目したいのが、従業員が自分の勤務先を評価した結果を集めたランキングだ。どんな企業が人気なのだろう?


大人もハマる?! CIAの子供用スパイ・トレーニング

大人もハマる?! CIAの子供用スパイ・トレーニング

『007』、『ミッション・インポッシブル』、『ボーン・アイデンティティー』など、ハリウッド映画にはスパイを題材とする作品がたくさんある。手に汗握るシーンの連続に、一度はスパイに憧れた人も多いかもしれない。そんなスパイの総本山、アメリカのCIAには子供用のプログラムもあるのだ。






最新の投稿


米大統領選ガイド(10)「トランプは勝てるのか?」

米大統領選ガイド(10)「トランプは勝てるのか?」

2020年11月3日に実施される米大統領選挙。トランプ現大統領率いる共和党とリベラルな民主党が政権奪回を争う選挙戦は、その後の世界情勢にも大きく影響するが、米大統領選のルールはかなり複雑だ。そこで、米大統領選を2000年から取材しているジャーナリスト・西森マリーによる、どこよりも分かりやすい解説をお届けしよう。


BizSeeds編集部スタッフがお届け!『ロックダウン・アメリカ』スタート

BizSeeds編集部スタッフがお届け!『ロックダウン・アメリカ』スタート

新型コロナウイルス、死者・感染者ともに拡大を見せているアメリカ。ロックダウンが始まって1ケ月今日、アメリカのフツーの人は、どうやってロックダウン生活を過ごしているのか? 


新型コロナウイルスでトランプ叩きをする米大手メディア

新型コロナウイルスでトランプ叩きをする米大手メディア

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けする、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回はトランプ大統領を嫌っている米大手メディアと民主党によるトランプ・バッシングが、度を超えているという著者の意見を例を挙げて紹介しよう。


コロナウイルスにどう立ち向かう? 12星座「ハリウッド開運術」特別編

コロナウイルスにどう立ち向かう? 12星座「ハリウッド開運術」特別編

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが、お届けする開運指南。今月は新型コロナウイルスが猛威を振るう世の中における、今後の動向を星の配置や数秘の観点からお伝えしていきます。


トイレットペーパーを買い溜めても、コロナが招いた問題は解決しない

トイレットペーパーを買い溜めても、コロナが招いた問題は解決しない

圧倒的にリベラル派が多く住む米西海岸から、トランプ大統領と共和党の政策に真っ向から反対する日系アメリカ人ジャーナリスト、マイク佐藤がお届けする「トランプを支持しない人たちの声」。今回は、新型コロナウィルス感染防止で自宅に篭るべく、個々が食料品や雑貨の買い溜めをして備えているが、「忘れられている備え」があることについて。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング