「私たち」対「彼ら」を押し通すトランプ大統領と保守派たち

「私たち」対「彼ら」を押し通すトランプ大統領と保守派たち

アメリカ西海岸にはリベラルな州が集中しているが、なかでもワシントン州は圧倒的にリベラル派が多く住む土地だ。同州在住で、トランプ大統領と共和党の政策にまっこうから反対する日系アメリカ人ジャーナリスト、マイク佐藤が「トランプを支持しない人たちの声」をお届けする。今回は声を上げずに隠れている共和党の政治家たちについて。


自由の女神の言葉を無視する白人大統領と彼の政治家

 アメリカのリパブリカン(共和党の人)たちにとって、「自由の女神」の台座に刻まれた詩(下記全文)に書かれた“身を寄せ合う民衆”(huddled masses)は、ヨーロッパから来た人たちだけを指しているようだ。そこに、「アフリカやアジア、南米や中米から来た人は含まれていない」と、トランプ大統領の元で移民関連のトップとして働くケン・クッチナリが語っている

 このクッチナリの言葉は、トランプ政権が取る移民へのアプローチの通りだ。その証拠に彼のボス(トランプ)も、共和党のどの政治家たちも、クッチナリのこの発言を訂正しなかった。

 それどころか、トランプ大統領は自分が、「移民たちは劣悪な(shithole)国々から来た人たち」で、「メキシコからの移民は誰もが麻薬と犯罪を運び、強姦者である」と発言したことを誇りにしている。

 トランプ大統領は、この移民問題と人種というものを意図的にリンクさせ、アメリカに「私たち」対「彼ら」という空気を作った。もっといえば「白人」対「有色人種」という雰囲気を創り上げ、アメリカという国が抱えている様々な問題――犯罪、麻薬、学校、職場、給料、住宅など――は、すべて国の政治の輪郭と人種問題のせいであると思わせようとしている。

バーサーズの旗振り役だった人が大統領に

 共和党の人たちが、オバマ元大統領を疑った件を覚えているだろうか? 元大統領の出生証明書を使って陰謀を企てようとした「バーサーズ(Birthers)」と呼ばれる人たちがいたが、その中で最も顕著だったのがドナルド・トランプだった。バーサーズたちは、「オバマ元大統領のハワイ州が発行した出生証明を見ていないから、彼はケニア人であり、アメリカ人ではない」と糾弾した。オバマ元大統領が出生証明を公開した後も、彼らは納得しなかった。「バーサーズ」たちは人種差別主義者ゆえ、“オバマ元大統領が黒人だった”から追求しようとしたのだろうか? もちろん、そうである。

 その「バーサーズ」の中心的人物だったトランプが大統領となり、彼の発言や政策を批判した黒人やムスラムの政治家たちを「アメリカへの忠誠心がない」と攻撃している。そして、アメリカ生まれの彼らに対して「崩壊し、犯罪が横行する自分の国へ帰れ」と発言している。

 共和党は、この「私たち」対「彼ら」というテーマは、トランプを崇拝して支援する狂気的な有権者たちの基盤であることをよく理解している。この有権者たちは、トランプの政治集会で「彼女を国へ送り返せ(Send her back)」と繰り返しコールする人たちだ。そのコールの仕方は、数年前にヒラリー・クリントンに対して「彼女を投獄しろ(Lock her up)」と大勢でコールしたやり方と同じである。

政治家や公職者の沈黙は、恥だ

 今のアメリカの政局を、単に対立する政党の拳と拳による喧嘩のようなものだと考える人もいるかもしれないが、近代アメリカでは、こんな政治は行われていなかった。

 ところが今のアメリカの政治は、この「私たち」対「彼ら」という戦略を使い、国を統一させるのではなく、分断させるために、むき出しの力を使い、拳と拳で戦わせている。この戦略では、新しくアメリカへやってきたアイルランド人、イタリア人、メキシコ人、中国人、日本人、ガテマラ人、ベトナム人、ユダヤ人などのすべての移民が、国を統一しようとする「私たち」に逆らっているように見せている。その「私たち」を称する有権者の両親や祖父母、曾祖父母も移民であることは棚に上げて。もし彼らが今アメリカに移民しようとしたら、来ることができただろうか?

 アメリカは移民と、その多様性から生まれるエネルギー、創作力、産業によって成り立っている国だ。しかし、トランプが人種差別的な発言を垂れ流し、彼を支持する共和党の人たちがそれを賞賛するアメリカは、何を代弁する国なのだろう? 

 “身を寄せ合う民衆”(huddled masses)を受け入れ、正義を貫き、多様性を持つ国というビジョンを持ち、アメリカへの忠誠心のある共和党員や共和党の政治家はいないのか? 沈黙している共和党の政治家たちは、騒いでいる輩と同じである。

 羞恥心や不名誉というものは、自分は人種差別主義者だと名乗りあげ、恥ずかしい行いをする人だけに焼き付けられるのではなく、今の政治に対して何も発言せず、身の安全のために沈黙を貫いている共和党の政治家や構成員たちにも同様に焼き付けられるものである。そして、それはとても赤くて熱いのだ。

<自由の女神の台座に刻まれた詩>

Give me your tired, your poor,
Your huddled masses yearning to breathe free,
The wretched refuse of your teeming shore.
Send these,
the homeless,
tempest-tossed to me,
I lift my lamp beside the golden door!”

Emma Lazarus, 1883


私は受け入れる。
疲れ果て、貧困にあえぎ、
自由を切望しながら身を寄せ合う民衆を。
他国の海岸で惨めに拒否される大勢の人々を、
私のもとに送りなさい。
戻る祖国も家もなく、
動乱にもまれた人々を、
私はこの黄金の扉の横で明かりを掲げて照らしているから。

エマ・ラザラス 1883年

この記事の寄稿者

ハワイ出身のジャーナリスト。現在はワシントン州在住で、特に環境問題につい て精力的に取材執筆している。各所へ寄稿すると共に、地元の環境に関わる ニュースを発信する独自メディア、 Salish Sea News and Weatherを主宰。著書 にThe Price of Taming a River: The Decline of the Puget Sound’s Duwamish-Green Waterway (1997)がある。

ちなみに、生まれた病院はバラク・オバマ元大統領と同じ。トランプ現大統領 と共和党が、オバマ元大統領の出生証明書スキャンダルを作り上げたとき、まっ たく動じずに立ち上がったことは言うまでもない。

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