【Red vs. Blue】合意に達した日米貿易協定 それでいいのか、日本?

【Red vs. Blue】合意に達した日米貿易協定 それでいいのか、日本?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は合意されたばかりの日米貿易協定を、政治的な見解が異なるアメリカ人たちがどう思っているかについて。


 ロイターは先月23日、進行中の日米貿易協定は、日本が米国に自動車追加関税撤廃の保証を求めていることで難航していると報じた。その2日後、自動車追加関税撤廃の保証はならず、当面発動されないということで同協定は最終合意に達した。日本側は米国産農産物の関税を撤廃・削減することになり、米国にとって非常に有利な結果となった。

 トランプ大統領は次期大統領選で、米中貿易戦争で痛手を負った米国の農民に対し、日米貿易協定の締結を政権の成果としてアピールするものと見られる。しかし農民の一部は、2年前にトランプ大統領が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)に残っていた方が恩恵が多かったと語っている。

出展元のニュース:
https://www.reuters.com/article/us-usa-trade-japan/u-s-japan-trade-deal-hits-snag-as-tokyo-seeks-assurances-on-car-tariffs-idUSKBN1W900Q

RED: 日米通商、これは単なる最初の一歩 ビジネスではいつもの如く

U.S. / Japan Trade deal is simply the first step--business as usual

 多くのメディアは、日米通商合意が正式文書化の過程において、ある種の困難を抱えた様を報じてきた。この記事は合意後のものだが、ロイターの考えもまた貿易交渉において、ある種のジレンマが存在したことを示唆している。しかし、どんなに小さなビジネスであっても、異なる二者が何かの合意をしようとする際、その過程に何も問題が存在しないことの方が不自然だ。これが国同士の交渉であれば、夢物語でもない限り、何の障害もなく、すべての案件が合意されるということなどないに等しいと思った方がいい。

 これはアメリカにとっては暫定的な合意と言える。そして、そのことは日本の安倍総理大臣も承知の上だろうし、安倍にとってもまた、これは暫定的な合意であるという認識のはずだ。トランプと安倍は多くの貿易問題を一回にひとつずつ、かつ産業ごとに検証し、必要な交渉をしているに過ぎない。日米ともに米国への日本車輸入関税に関しては確固たる合意に至っていないのは紛れもない事実だろうが、これはトランプがそのように日本に迫ったのではなく、トランプと安倍が双方ともに、まだ問題を解決していないだけだ。

 ビジネスを多く伝えるロイターともあろう媒体が、どうしてトランプのことになるといつでも「湾曲した物言い」になるのか、その理由は全く理解できないが、トランプは対外的に無理難題を無謀に叩きつけるマネはしていない。特定の問題にひとつずつ対処する交渉に対するトランプのビジネスのようなアプローチは、むしろ論理的かつ系統的だ。オバマ前大統領は、他国との交渉合意に際し、それらを壮大に宣言する方法をとってきたが(例えば対イラン交渉などはかなり壮大だった)、トランプはその点では地味でも手堅く決めたいのだ。リベラルなメディアが「歴史的」という言葉で何度もオバマ外交を賞賛してきたが、オバマ前大統領の元で合意された内容、得られた内容、および両者にとって公平であるかどうかに関する実際の詳細が、ほとんど伝えられることがなかったことに気づいている人間は、私を含め多いはずだ。

BLUE: トランプの関税パーティーは、何よりもの妨げだ

Trump's Wild Tariff Party is Disturbing More Than the Neighbors

 ドナルド・トランプは世界中で関税を課すことに個人的なパワーを感じて楽しんでいるようだ。彼は「関税」をパーティーで自慢するネタのように扱い、ツイッターで自分のことを嬉しそうに「関税男(タリフマン)」と呼んでいる。まるで貿易戦争が、自分の気に入った国と産業だけが出席できる巨大なパーティーであるかのように。

 アメリカにある23ものビジネス団体が米議会に対し、「トランプが関税を使用するのを制御するように」と要求したほど事態は制御不能になった。彼らは「米国は1930年代以降これほどのレベルの関税活動は行っておらず、関税は例外的な状況でのみ使用されるものだ」と指摘している。トランプは、「関税は他国によって支払われている」と主張しているが、商品コストの上昇が消費者需要を押し下げ、報復関税が国内輸出に痛手を与えるため、アメリカの農業、小売、製造業は全て、マイナスの影響を感じている。

 しかし、トランプはパーティー三昧で有頂天だ。自分を「ディールメーカー」として誇示するのが大好きな彼は、自分が世界経済をコントロールしていると思っているらしい。「ほら、見ろよ! 俺は株式市場をツイートひとつで暴落させることができるんだ!」と。そして彼の支持母体、彼を崇拝するパーティーの客たちは、そんな彼を応援する。タリフマン・トランプは、「日本はもっとアメリカ車を買うべきだ」と訴えているが、アメリカの自動車メーカーはすでに日本で競争するのを止めていることを知らないらしい。フォードは2017年に日本から完全撤退し、ゼネラルモーターズの昨年の販売数は1,000台に満たない。

 トランプは、彼の「アメリカ第一」の関税は米国の産業を保護することを意図していると主張するが、その米産業界はトランプの現在の関税措置による経済的な脅威を心配し、彼が次に何をするかを恐れている。トランプが日本製の車に追加関税を課さないという約束を守ると、日本はどうして信じられるのだろう?

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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