今年も「ボスキャリ」の季節がやってきた

今年も「ボスキャリ」の季節がやってきた

アメリカの名門エモリー大学で28年間、教鞭をとってきた著者が語る、アメリカの日常と非日常。今回は、アメリカの大学を卒業する日本人学生のほとんどが参加すると言われている恒例の「ボストン・キャリア・フォーラム」における就活の様子について。


最短3日で大企業の内定が決まる最強の就活会場

 アメリカで学士号取得を目指して日本から留学した学生が、日本での就職を希望する場合の就活は、定石として通称「ボスキャリ」、ボストン・キャリア・フォーラムへ参加する決意を固めるところから始まる。

 ボスキャリとは、1987年に開始された日本人留学生向けのジョブ・フェアで、株式会社ディスコが毎年11月にマサチューセッツ州ボストンで開催している。会場には毎年200社を超える日本企業がブースを設置し、北米に散らばっている日本人留学生が一挙にその大会場に集まる。日本から来た役員による最終面接がその会場で行われるため、内定か内々定が開催中に得られる学生も多い。昨年度の学生参加数は、日本語が外国語としてある程度できる外国人学生を含め、1万人を超えている。

専門外の学生でも囲い込む企業も 短期決戦の3日間

 このフォーラムへ参加するには、9月から10月にかけてエントリーシートや履歴書を事前に意中の企業に送り、企業側とのコンタクトを始める。

 成功例のシナリオは、メールやスカイプ等でのやり取りなどがあり、ボスキャリの一週間前になると採用担当者からボストンでの夕食会に誘われる。要は囲い込みだ。他の企業と接触させないように、学生には分不相応な高価なレストランやホテルの一室でパーティーを開き、一社が長時間、彼らを拘束するのだ。

 この招待を受けるか否かは各学生が判断しなければならない。なぜなら、ボスキャリではアポなしのウォークインでも企業の採用担当者に会えるからだ。学生も、各企業採用担当者も、策を練りながらの短期決戦の3日間となるのである。

 この過程を通して学生は自分のマーケット・バリューを発見するわけだが、私が大学職員だった頃に、ある学生が口にした言葉が忘れられない。

「一体、自分が何を本当にしたいのか、ボスキャリ後に分からなくなった」

 突然にして外資系金融企業の東京オフィス2、3社に取り囲まれたこの学生は、専攻云々や金融知識など全くなく、「即戦力になる人材」ではなかったが、東京の名門インターナショナル・スクールを卒業した高度なバイリンガルだった。結局は迷いながらもオファーを受け、春学期は学生生活を満喫し、5月に大学を卒業して日本へ帰国となった。

「過労死しないようにね」
「先生、大丈夫。4、5年したら大学院へ行くから。その時には推薦状を書いてください」
 この学生は、一皮むけて清々しく卒業していった。

 今年のボスキャリの開催日は11月1日〜3日。今年もきっと多くの学生が参加することだろう。

この記事の寄稿者

 高校卒業までは新潟県の雪深い地域で生活。大学を卒業後、チャンスをつかみ渡米。アメリカ南東部にあるエモリー大学(Emory University)にて28年間にわたって日本語の教鞭をとり、2019年にリタイア。現在は同大学のSenior Lecture Emerita。
 夫、娘、愛犬と生活中。趣味は、バターと砂糖をたっぷり使ったアメリカンレシピの焼き菓子(パウンドケーキやクッキーなど)作り。





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