人権より中国の「金」の方が大事なNBAの偽善

人権より中国の「金」の方が大事なNBAの偽善

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けする、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は多くのスター選手を輩出している米NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)が、自らの方針を変えてまで中国市場に取り入っていることについて。


人権擁護派だったNBAとナイキが中国にゴマをする実態とは

 日本にも多くのファンを持つアメリカのNBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)が、試合ではないことで注目を集めている。

 先月4日、米テキサス州ヒューストンを拠点とするNBAのチーム、ヒューストン・ロケッツのジェネラル・マネージャー、ダリル・モリーが、中国政府による人権弾圧に反対する香港のデモを支持し、”FIGHT FOR FREEDOM STAND WITH HONG KONG”(香港の自由のために戦え)とツイートした。

 この直後、中国からの怒りのツイートが炸裂してモリーのツイッターが炎上し、モリー氏はこのツイートを削除。NBAは「ヒューストン・ロケッツのダリル・モリーの意見が、我々の中国の友人やファンの気持ちを深く傷つけたことを遺憾に思う」という声明を英語で発表した。

 しかし、NBAの中国語版の声明では、「モリーの不適切な発言に我々は大いに失望している。(中略)我々は中国の歴史と文化を尊敬することが非常に重要だと思っている。スポーツとNBAが今後もポジティブなエネルギーを統合し、米中国家間の架け橋として人々をまとめることができるよう祈る」と、中国に媚びへつらっていたことが発覚した。

 この数日後、以前からことある毎にトランプ大統領と共和党議員を声高に批判しているNBAウォーリアーズのコーチ、スティーヴ・カーが、インタビューで香港に関するスタンスを聞かれたときに、「(香港のデモは)非常に不可思議な国際的出来事で、どういうことなのか分からないので、コメントはない」と、逃げの姿勢で対応。そしてNBAと一心同体と言われるスポーツメーカー、ナイキ(Nike)は、ひたすら沈黙を守り続けている。

人民服姿のレブロン・ジェイムス! Tシャツ大ヒット

 NBAはこれまで、黒人の権利を主張する運動を積極的に応援し、トランスジェンダーのトイレの使用を認めない州での試合をキャンセルするなど、人権保護活動に力を入れてきた。ナイキも黒人、女性、トランスジェンダーの権利向上のために尽くすことを会社の方針として掲げている。

 同時に、NBAは中国では試合放送権など明らかにされているだけでも1年に5億ドルの収益をあげており、中国のバスケットボール人口は3億人といわれる。つまり中国はナイキにとって最大の市場なのだ。そのため、たとえ中国がイスラム教徒を監禁し、同性愛者やトランスジェンダーを差別していても、NBAもナイキも中国を批判するわけにはいかないだろう。

 米政界では、テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員など複数の政治家やペンス副大統領をはじめとするトランプ政権が、NBAとナイキの偽善を非難している。しかし、NBAの大ファンであるオバマ氏は、大統領だった2015年に米ナイキ本社でTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の重要性を力説し、中国におけるナイキの利益激増の立役者となったため、今回の件ではコメントを控えているようだ。

 先月15日には、現在のNBA最大のスターであるレブロン・ジェイムズが、「モリーはこの問題(香港のデモ)に関して勉強不足だ」と、モリーを批判。その直後、レブロンを毛沢東にたとえたTシャツや、レブロンが人民服を着た写真をあしらったTシャツやマグカップが大ヒット商品になった。

 今のところモリーのコメントを擁護しているNBA関係者はシャキール・オニールだけであるため、テキサス人のみならず、アメリカ人のほとんどが「NBAもナイキも”人権派”とは名ばかりで、結局は中国のカネのほうが大事なのか」と、落胆している。

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

関連する投稿


保守派が選ぶ8月・9月のフェイク・ニュース「ワースト5」

保守派が選ぶ8月・9月のフェイク・ニュース「ワースト5」

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、アメリカの大手メディアがここ2カ月間に報道したニュースの中で、多くの保守派が「フェイク・ニュース」だと断言しているニュースの「ワースト5」を紹介しよう。


「私たち」対「彼ら」を押し通すトランプ大統領と保守派たち

「私たち」対「彼ら」を押し通すトランプ大統領と保守派たち

アメリカ西海岸にはリベラルな州が集中しているが、なかでもワシントン州は圧倒的にリベラル派が多く住む土地だ。同州在住で、トランプ大統領と共和党の政策にまっこうから反対する日系アメリカ人ジャーナリスト、マイク佐藤が「トランプを支持しない人たちの声」をお届けする。今回は声を上げずに隠れている共和党の政治家たちについて。


トランプ大統領の「グリーンランド購入」提案に米保守派が驚かない訳

トランプ大統領の「グリーンランド購入」提案に米保守派が驚かない訳

メキシコ国境と隣接する米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回は、多くの人たちが突拍子もない話だと驚いたトランプ大統領のグリーンランド購入提案に対して、米保守派はまったく驚いていないということについて。


全米大パニック! マシュー・マコノヒーがテキサス大学教授に就任

全米大パニック! マシュー・マコノヒーがテキサス大学教授に就任

ハリウッドの人気俳優、マシュー・マコノヒー。日本でもお馴染みのセレブリティだが、この度、彼が出身校でもあるテキサス大学の教授に就任した。どうすれば彼の講義が受けられるのか、全米から問い合わせが殺到している。


高給を約束!? 中国がLinkedInでスパイをリクルート

高給を約束!? 中国がLinkedInでスパイをリクルート

世界中に5億4千万人超のユーザーを持つ、ビジネス特化型SNS「LinkedIn(リンクトイン)」。求職者の転職、企業の採用やビジネス上でのネットワーキングに広く使われているサービスだ。29 日、このLinkedInを使って中国政府が諜報員を世界規模でリクルートしていることを『NYタイムス』紙が記事にし、ユーザーに注意を促した。






最新の投稿


米アマゾンの年末商戦、「子供の目線」のカタログ配布は功を奏すか?

米アマゾンの年末商戦、「子供の目線」のカタログ配布は功を奏すか?

昨年、米アマゾンドットコム社が突如開始したオモチャのカタログ。今年もホリデーシーズンに先駆けて、アメリカ国内の家庭にカタログが届き始めた。しかし昨年とは異なり、今年のアマゾンのカタログのマーケティングにはひねりがある。このカタログは、完全に子供たちに向けたものなのだ。


ハリウッドに続け! ベガスに「セルフィー・ミュージアム」がオープン

ハリウッドに続け! ベガスに「セルフィー・ミュージアム」がオープン

映画の街ハリウッドにオープンして話題の「セルフィー・ミュージアム」。ハリウッドに続けと、今度はエンターテイメントの都・ラスベガスにもオープンした。本物そっくりな人気番組のセットやイルージョンに見える背景など、SNSで目立つこと間違いなしのセットが揃うミュージアムで、思う存分セルフィー撮影を楽しもう!


2020年版、「アメリカで最も求められる企業トップ100社」発表

2020年版、「アメリカで最も求められる企業トップ100社」発表

米ESG評価機関NGO「JUST Capital」による恒例の「America’s Most JUST Companies」の2020年度ランキングが発表された。地域への還元や雇用の創出、環境保全への取り組みなどの公共性など、時代を反映する各項目でそれぞれ高得点を得た米企業とは?


今週の神秘ナンバー占い(2019年11月15日~21日)

今週の神秘ナンバー占い(2019年11月15日~21日)

当たりすぎて怖い? ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスがお届けする今週の神秘ナンバー占い。神秘ナンバーとは、東洋数秘術、西洋数秘術、アステカ秘術など複数の占術をベースに導き出す、運気を読み解く数字のこと。あなたの運勢はどのように変化する?!


米大統領選ガイド(1)「アメリカの大統領選は、なぜ重要なのか?」

米大統領選ガイド(1)「アメリカの大統領選は、なぜ重要なのか?」

2020年11月3日に実施される米大統領選挙。トランプ現大統領率いる共和党とリベラルな民主党が政権奪回を争う選挙戦は、その後の世界情勢にも大きく影響するが、米大統領選のルールはかなり複雑だ。そこで、米大統領選を2000年から取材しているジャーナリスト・西森マリーによる、どこよりも分かりやすい解説をお届けしよう。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング