「えっ、そうなの?」 日本とは全く視点の異なるアメリカでの家探し(1)

「えっ、そうなの?」 日本とは全く視点の異なるアメリカでの家探し(1)

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などをケンタッキー州よりジョーンズ千穂が紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回から3回連続で、アメリカで家を買いたい方や、不動産投資を考えている方々にも参考になる「アメリカでの家探し」について解説しよう。


アメリカ人は「引っ越し族」なのか?

 日本では、一軒家やマンションの購入は「一生に一度の大きな買い物」であることがほとんどだ。そうでないとしても、そのくらいの覚悟を決めて家を購入する人が多いだろう。聞いた話では、予算内で大きめの家を買うために地方に引っ越す人もいるようだが、アメリカ人の引っ越し感覚は、日本のそれと似ているようで異なるものだ。

 以前の当コラムでも触れたとおり、アメリカ人は独身、結婚、子育て中、リタイア後などのように生活環境が変わると、それに合わせて家を住み替える。仕事面でも、学校を卒業してすぐに就けるエントリー・レベルの仕事からステップアップをするために、何度か転職するのもアメリカの特徴だが、そのステップアップに伴って他州に引っ越しするケースも頻繁にあるため、アメリカ人は「引っ越し族」と言えるのだ。

格差社会アメリカで気をつけたい家の探し方

 日本とは異なり、州や街という区別だけではなく、コミュニティー(ご近所と呼べる一角)によっても、家の価格に大きな差がある。家の価格が高い地域は比較的治安が良い地域ということが明確で、まさしくアメリカの格差社会を垣間見ることができる。

 知らない街へ引っ越すことが決まったら、地域選びに失敗しないためにも、まずは「リアルター(不動産仲介業者)」を探す。そのリアルターへの手数料は、家の購入価格の3~6%。家という大きな買い物だけに手数料もかなり高額だ。だからこそ敏腕なリアルターを雇いたいと願うわけで、不動産会社のサイトには各リアルターの評価がわかるようになっていることが多い。また、住宅ローンに利用する銀行からの紹介を受けると、手数料の割引などの利点があることもある。

 アメリカではたとえそれが仕事であっても、約束のドタキャンや連絡を無視されることは、差別云々ではなく“アメリカあるある”のひとつだが、優秀なリアルターは、とにかく連絡が速く、しっかりしている。リアルターは、顧客の条件に合った家を探して、1日に数件の内覧をさせてくれるだけでなく(リアルターが同伴しないと内覧できない家が多く、リアルターしか知らない売り出し中の物件もある)、その後の手続きや交渉なども手取り足取りお世話してくれる。交渉には家の価格はもちろん、中古物件の場合などでは冷蔵庫と洗濯機を置いていって欲しいとか、この部分を修理して欲しいなどという細かい交渉もしてもらえる。

 リアルターを決めたら(もしくはそれと同時に)、次に決めるのは「家の予算」だ。その予算の中で、自分にあった利便性や治安、子供がいるならば学区など重要点をあてはめていく。アメリカの家は日本の家と比べて広いため(大都会は除く)、「この広さでこの値段なの?」と驚く人も多いかもしれないが、そこそこの立地で家の価格が安い場合は、治安の悪さと比例することも多いので注意が必要だ。

有名な不動産会社のリアルターを使うか、オンラインで探すか

 アメリカで一般によく使われるオンラインの家探しツールとしてメジャーなものは、Zillow、Realtor.com、Redfin、Msl.comなどだ。地名や郵便番号、部屋数などの様々な条件を入れて検索すると、ピンポイントで売り出し中の家々が見られて便利なだけでなく、不動産手数料が安い。しかし、これらのオンライン・サイトはオンタイムの情報ではないことも多く、顧客ひとりひとりに寄り添った細かいサービスとは言い切れない面もあるため、リアルターの力が必要になることがほとんどだ。

 リアルターは家が売れれば相当稼げる仕事であるため、人気の職業のひとつだが、手数料が高額なので、それを払いたくないために個人売買(Sell by owner)で売買する人もいる。実は私も以前、自宅を個人売買で売ることを考えたが、そういう物件はなかなか売れないことも随分と見た。リアルターの技術やネットワークの強さ(リアルター同士の横の繋がりなど)などを利用しないと、家の売り買いは難しいのが現実だ。私たちも結局、苦汁を飲みながら数百万円の高額手数料をリアルターに支払った過去がある。

 先日、引っ越しをして一軒家を建てたのだが、そのときはリアルターを通さなかったため、あとになって銀行や建設業者、その他の契約関連手続きで大変な苦労をすることになり、改めてリアルターの存在の大きさに気づいた。手数料をケチったのだから仕方がないと、自分たちだけで頑張ったのだが、それにかかった時間や労力は計り知れない。「楽して大金はセーブできない」ということを身をもって痛感した出来事だった。

この記事の寄稿者

 東京都出身。アメリカ人航空機パイロットの婚約者の米本土転勤に伴い、一般企業を退職。K-1 Visa にて渡米したのち結婚。現在、アメリカ南部アーカンソー州在住。移住後はパイロットを夫に持つ婦人の会や、日本語補習学校を通じての活動、現地日本人や移民•マイノリティーへの支援、生活アドバイス、ネット上でのアメリカ生活に関する相談・コンサルテーション、翻訳、通訳、観光案内など、国際線パイロットの夫のスケジュールに翻弄されながらも、さまざまなボランティア活動に力を注いでいる。

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