通訳者が悲鳴 トランプ大統領の演説は直訳できない

通訳者が悲鳴 トランプ大統領の演説は直訳できない

引用元『Trump in translation: president's mangled language stumps interpreters』:https://www.theguardian.com/us-news/2017/jun/06/trump-translation-interpreters


 歴代の米大統領とは様々なことが異なるトランプ大統領は、ホワイトハウスが用意した演説台本をその通りに読まず、文章を途中で切り刻んだり、俗語や蔑称を使用してしまうことで知られている。英語がネイティブの者でも、トランプ大統領が何を言いたいのか分からないことも多く、通訳を通して大統領発言を理解しなければならない世界各国のリーダーたちはもとより、同大統領の発言や演説を各国の国民に同時通訳する通訳者たちを悩ませている。

 英語を理解する人は多いとはいえ、それでも世界の3分の2にあたる人々は通訳が必要だ。しかし、トランプ大統領が使用する俗語や蔑称、文章を完結させないまま次に進んでしまうことを公の場でどう訳せばよいのか、プロのベテラン通訳者たちは頭を抱えているという。

 たとえば、トランプ大統領がコミー元FBI長官を解雇した際、同長官のことを“nut job”(品の悪い俗語で、気が狂れた人、非常識でバカな人との意)と発言した際、日本語の同時通訳者はそれを「変人」と訳した。コミー元長官のような立場にある人物に対する一国の大統領の発言としては、この翻訳が最善の選択肢であっただろうが、実際には大統領はその言葉よりも、ずっと品位を落とした表現を使用していた。

 トランプ大統領は同じ単語を何度も繰り返し使うことでも知られており、特に多用する単語が“great”(偉大な)、 “big” (大きい)、“beautiful”(美しい)だ。CNNやABCなど米大手TV局で同時通訳を務めることも多い、東京大学の鶴田知佳子教授は、「日本語ではgreatという単語はいつくもの異なる単語で表せるため、文脈の前後関係を考慮しながら最適な訳を選んでいる」と話す。しかしトランプ大統領の同時通訳において最も問題なことのは、同大統領の発言にはロジックが欠如している点だという。同教授は「ロジックがクリアーでなかったり、文章が途中で切れたままでは、いくら先を見越して訳す訓練を受けた同時通訳者でも訳せない。トランプ大統領の発言には一貫性がないため、まるで通訳者がおかしいように聞こえてしまう」と説明し、同大統領が選挙期間中に女性の性器を指す蔑称を使った女性蔑視発言に関しては、「とても問題視している。今でも非常に不愉快」だと語った。
 
 トランプ支持者の多いインドでは、新聞やTVニュースにおいてトランプ大統領の演説全容は報道せず、短い引用を複数選択して報道するのが一般的だという。インディア・トゥデー誌のアンシュマン・ティワリ編集者は、「トランプ大統領の英語はそのままでは分かりにくいため、直接の引用は避け、こちらで言い換えてまとめる記事にしている」と話した。また、インド最大のヒンドゥー語の新聞「ダイニック・バスカー」紙のラジェッシュ・パンデイ翻訳者は、「英語だと同大統領の発言はとても分かりにくいが、それをヒンドゥー叙事詩的スタイルに直すと非常にわかりやすくなり、インドで大変受け入れやすくなる」と話している。

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