トランプが軽視する、弾劾と真実の重み

トランプが軽視する、弾劾と真実の重み

圧倒的にリベラル派が多く住む米西海岸から、トランプ大統領と共和党の政策に真っ向から反対する日系アメリカ人ジャーナリスト、マイク佐藤がお届けする「トランプを支持しない人たちの声」。今回は、職権乱用や政治倫理が問われる“ウクライナ疑惑”で、トランプ大統領を弾劾したい民主党と、弾劾はされないとの余裕を見せる大統領について。


報道関係者にとっては「真実こそ絶対的抗弁」なのに

 報道関係者やジャーナリストにとって、「真実(Truth)」こそが「絶対的な抗弁(absolute defense)」だ。

 米議会下院によるトランプ大統領の弾劾調査の焦点は、彼とウクライナのゼレンスキー大統領との間に“実際に起きた真実”にある(この記事は弾劾調査団による正式な調書などが発表される前に書いている)。

 しかし皮肉なのは、真実を探るための調査の対象者であるトランプ大統領自身が、真実を重要視していないことだ。トランプ大統領は、大統領には自分の好きなようにふるまえる権限があると思い込んでいるようで、『ワシントン・ポスト』紙の「ファクト・チェッカー」でも、彼が大統領に就任してから1,000日が経つ前の先月の時点で1万3,435件もの間違ったこと(もしくは誤解させるようなこと)を要求したと記載されている。(注:ファクトチェックとは言説の内容が事実に基づいているかどうかを調べるもの)

 下院の調査団の前で語られた証言から浮かび上がってきたことは、トランプ大統領と彼のスタッフが、政敵である民主党のジョー・バイデン次期大統領候補と彼の息子によるウクライナでのビジネスについて捜査することの見返りとして、大統領訪問、そして以前から議会で承認されていた400億ドルの軍事援助を行うことを、どのように交換条件にしたか、である。

法律よりも自分の方が上だと言うトランプ大統領

 ラテン語で見返りや交換を意味する「quid pro quo」を引用し、当初トランプ大統領はそれを否定したが、ウクライナの大統領に「親切な行為(favor)」をしてもらう可能性を探ったことは否定しなかった。バイデン親子の調査依頼という、トランプ大統領の個人的な興味や利益の見返りとして軍事援助をすることは、米大統領の権力の明らかな悪用(誤用)である。

 大統領の味方である共和党議員たちは、まるでオウムのように嬉しそうに「quid pro quo」という言葉を繰り返していたが、ミック・マルヴァニー大統領首席補佐官代行が、「ビジネスにはquid pro quoが必要なのだから、みんなこのことは忘れて先にすすむべきだ」と、見返りの提示は悪いものではないと宣言したことで静かになった。

 真実を得るには、実に変わった方法だ。大統領と彼の共和党議員たちは戦略を変える必要性に迫られ、証人たちの評判を悪くしたり、品位を落とすことによって、調査団に噂という証言しか与えない方法をとった。そして、トランプ大統領が見返りを口にしたことを直接的に知る人たちの証言がはじまると、トランプ陣営は「見返りを求めることは弾劾には値しない」と言い始めた。

 この下院調査の終わりには、真実が明らかにされ、弾劾が正式に告発されるだろう。そして、それが次に上院で審議される。上院はトランプ大統領の共和党がコントロールしている。

 しかし、もしも揺るがない真実か法律がトランプ大統領を弾劾したとしても、トランプ大統領は自分が真実や法律よりも上にいる人間だと考えるのだろう。彼の弁護士たちは、「トランプ大統領が就任中は、彼は法律よりも上に位置するため、彼個人の確定申告の内容を公開する必要もなく、彼がもし誰かを撃ったとしても何人も彼を逮捕することも起訴することもできない」と主張している。

 これは言うまでもなく、腐敗した権力だ。

この記事の寄稿者

ハワイ出身のジャーナリスト。現在はワシントン州在住で、特に環境問題につい て精力的に取材執筆している。各所へ寄稿すると共に、地元の環境に関わる ニュースを発信する独自メディア、 Salish Sea News and Weatherを主宰。著書 にThe Price of Taming a River: The Decline of the Puget Sound’s Duwamish-Green Waterway (1997)がある。

ちなみに、生まれた病院はバラク・オバマ元大統領と同じ。トランプ現大統領 と共和党が、オバマ元大統領の出生証明書スキャンダルを作り上げたとき、まっ たく動じずに立ち上がったことは言うまでもない。





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