「我々の失敗を教訓にするべき!」トランプ式の大型減税で苦しむカンザス州

「我々の失敗を教訓にするべき!」トランプ式の大型減税で苦しむカンザス州


 4月にトランプ大統領の“史上最大”というべき大型減税計画が発表された。すべての企業への課税を大幅に削減し、企業以外のすべてに単純課税するという計画だ。減税をすることで経済が活性化し、減税分は自然に取り戻せるという1970年代に経済学者アーサー・ラッファーが提唱したアイデアで、その仕組みを描いたラッファー曲線で知られている。ところが、これは現在10億ドルもの財政赤字で悩むカンザス州が経済危機に至る要因となった減税案と同じものだと、前カンザス州書記官デュアン・ゴッセン(現カンザス経済成長センター研究員Kansas Center for Economic Growth)は警告する。トランプ式史上最大の減税案は経済成長につながるのか、それともカンザス州の警告に学ぶべきなのか? RedとBlueの立場はいかに?

元記事『The Guardian』
'We are a cautionary tale': Kansas feels the pain of massive Trump-style tax cuts
https://www.theguardian.com/us-news/2017/may/15/kansas-trump-style-tax-cuts-economic-disaster

RED: カンザス=アメリカではない。『ガーディアン』紙は我々は皆バカだと思っているのに違いない。
「Kansas is not the same as America. The Guardian must think we are all stupid.」

 『ガーディアン』紙は、ただの左翼ニュースメディアから、我々はみんなバカだと考えるまでに進化したようだ。カンザス州が試みた減税と大統領が2016年の選挙運動中に掲げた提案とはまるでかけ離れたものだ。同紙は記事の中で、「カンザスは減税をしようと試みた」(ただし有限会社のみが対象)と報告している。同州の減税は始まったばかりで、州経済に影響を与えるには実のところ、まだ早過ぎる。2012年のアメリカ政府の調べによると、有限会社の73%は個人事業だが、『ガーディアン』紙はこの事実を明らかにしていない。個人事業の有限会社は、しばしば「税金逃れのビジネス」に使われており、何人もの正規従業員を抱えている企業や中・大型の商業活動をする会社のような構成にはなっていない。カンザス州で有限会社の数が19万から30万に急増したのも不思議ではなく、これに対して財務収入と就業率は予想通り上がっていない。これは、トランプ大統領による企業の税金を現在のばか高い40%から15%に減税するという計画とは、まるで対照的だ。カンザス州=アメリカではないということを、『ガーディアン』はおそらく、あくまでもおそらくだが少しは理解したことだろう。


BLUE:トリクルダウン経済は機能しなかったし、これからも機能しない。
「Trickle-down Economics Didn't Work Then, and Won't Work Now.」

 減税は魅力的な売り文句だ。自分のお金をもっとキープできると聞いて、喜ばない人がどこにいるだろう? 2015年の『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙に掲載された調査によると、減税は実際に経済成長を促すことが論証されている。しかし、どうやらカンザス州知事も、トランプ大統領も、この記事を読まなかったようだ。
 それによると所得の低い方から90%の層の減税をすると、短期間(5〜7年以内)での効果が得られるそうだ。人々は所得から引かれる税金が少なくなる分、消費するようになる。すると企業の商品が売れ、会社も収入が増える。消費が増すということは企業が儲かり、政府は税収が多くなるということだ。
 企業の減税は雇用の増加につながると保守主義者はいうが、1929年にハーバート・フーバーが大統領になってからずっと、そうすれば貧困層にお金が行きわたるという理由をあれこれ考え出しては、保守派は富裕層にお金を持たせようとし続けている。しかし、それによって実際には何が起こるかというと、カンサス州で証明されたように納税額が少なくなった企業は減税分を利益として保存する。税収が減った政府は、道路や学校などの公共物にかける財源が不足する。そうなると借金をするか、増税するかしかない。この仕組みで良い思いをするのは減税で潤った企業のみだ。企業以外のすべてを敗者にする税政策は、まったくの無責任としか言いようがない。

記事トピックスは過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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