【Red vs. Blue】アメリカには、なぜドナルド・トランプが必要だったのか?

【Red vs. Blue】アメリカには、なぜドナルド・トランプが必要だったのか?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は「アメリカには、なぜトランプが必要だったのか?」という米メディア記事について。


 『The Hill』に、「アメリカには、なぜトランプが必要だったのか?」という記事が掲載された。ジョージ・ワシントン大学政治管理大学院立法政治学のクォードリコス・ドリスケル非常勤講師と共和党の戦略家兼政治アナリスト、シャーマイケル・シングルトンによる同記事によると、2020年にトランプが大統領に再選されることで、ひとつだけ良いことがあるという。それは「彼に一貫性があること」だとして、トランプのこれまでの言動や政策の傾向を皮肉たっぷりに羅列。最後にはヒット映画『The Dark Knight』の主役・ジョーカーのセリフ、「確立された秩序が乱されると、すべてがカオスに陥る。私はカオスのエージェントだ。カオスというのはすべての人に対して同等にもたらされるのだ」を引用し、「カオスをもたらしたという点において、トランプはすべてのアメリカ人に対して公平である」と結んでいる。さらなる分断を煽りそうなこの論説に、アメリカの一般人リベラル派と保守派はどう反応するだろう?

出典元のニュース:
TheHill:Why America needed Donald Trump

RED: アメリカのメディアの中身は空っぽだ

American News Media are running on empty

 The Hillに掲載された記事「アメリカには、なぜトランプが必要だったのか」は、報道でもなければ、情報でもない。これは単なるゴミだ。この筆者たちは事実ゼロの文章に762文字を費やした。悲しいことに中身のほとんどは、正当な批判や建設的な議論が欠落した大統領への侮辱にすぎない。たとえば記事の冒頭には下記のようなことが書かれている。

「彼の対立的で過激な表現」←侮辱、私的見解
「キャンペーン中の他人に対するいじめや嘲り」←侮辱、私的見解
「好戦的な外交政策」←私的見解
「外交拒絶」←侮辱、私的見解
「そして明確な忠誠を求める彼の要求に、政治機関はひどく妨げられた」←私的見解

この段落の中のどこにも、ひとつの事実も見つからない。報道記事に見せかけて単にアメリカの大統領に対する侮辱と見解を並べ立てたにすぎない。

 さらに同記事の中で筆者たちは、私的見解から大胆な嘘へと内容を発展させている。記事の中ほどに「アフリカ系アメリカ人と他の人種的マイノリティグループに関していえば、トランプ政権下で前政権より良くも悪くもなっていない」とあるが、この主張は客観的な事実ではない。トランプ政権下のアフリカ系アメリカ人の失業率は2019年9月現在で5.5%に低下しており、これは1970年代に数字を記録し始めて以来の最低値だ。ヒスパニックとラテン系アメリカ人の失業率も、同日付で4.2%と劇的に低下している。それを「良くも悪くもなっていない」というのは、笑止千万の大ウソだ。

 我々には事実と報道に関心のあるプロのメディアが必要であって、侮辱や私的見解は必要ない。ニュースを受け取る側の者として、我々はこうしたトランプ嫌いの左派ジャーナリストにそれを要求する必要がある。そして、それが実現するまでは、このThe Hillのような組織のことをニュース組織と呼ぶのではなく、「時間の無駄」を生み出す組織と呼ぶべきだろう。

BLUE: アメリカ人の45%は選挙で投票しなかった

45% of America Didn't Bother to Vote in 2016

 ドナルド・トランプが2016年の選挙で勝利したことについて、唯一の驚くべきことは、「どれだけの人が、そのことに驚いたか?」ということだろう。

 民主党はトランプ候補が大統領になるチャンスがあるとは夢にも思わず、「トランプの支持者は、聞きたいことを言ってくれる白人の男であれば誰にでも投票する低学歴のバカばかり」だと高をくくっていた。

 しかし実際には我々が学んだように、あらゆる種類の人々が様々な理由でトランプに投票した。その理由のひとつは、共和党がヒラリー・クリントンと彼女の夫を軽蔑していたことだ。そしてもうひとつの理由は共和党が党派として死にかけていることだ。

 50年前、共和党はバランスのとれた予算と保守的な社会テーマを軸に戦っていた。当時は、民主党と共和党の違いはそれほど顕著ではなかった。もし他党の候補者がその仕事に最適な資格を持っていた場合は、民主党が共和党候補者に投票することもあり得れば、その逆もあった。

 のちにアメリカの政治は、リチャード・ニクソンが宗教的保守派に訴える手段として妊娠中絶権を使ったことをきっかけに、今日のアイデンティティ政治へと移行して行った。かつては誰も語ることを好まなかった医療処置が、国家の価値を試す苦いテストになってしまった。

 右派Foxニュースの台頭も、情報のルールを変えた――アメリカ人の半分が「他のすべてのチャンネルが嘘をついており、Foxニュースだけが唯一の合法的な情報源だ」と信じるようになってしまった。それまでは誰もFoxニュースの偽情報を真剣に受け取ってはいなかったはずだ。しかし、Foxニュースが打ち出すニュースの見出しそのものである「怒りの政策」を掲げたティーパーティーが共和党の新派として生まれ、この怒った人々の集団が全米で選挙に勝ち始めるようになり、アメリカがルパート・マードック(Foxコーポレーション社長)の野望による悪夢に陥れられるようになって、はじめてFoxニュースの狙いに気づいた人たちが多かった。

 ドナルド・トランプが当選したのは、「分別のある人々が、他の人もみんな分別があると思い込んだため」だ。トランプは現在の共和党にとって、恥知らずで、強欲で、権力に固執する完璧なマスコットだ。今のアメリカは彼に値する。本当の悲劇は、私たちのうちの何人が「彼を大統領に持った自分たちを幸運だと思うか」だろう。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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