知らないと怖い! アメリカのハッピー・ファイヤー

知らないと怖い! アメリカのハッピー・ファイヤー

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などをケンタッキー州よりジョーンズ千穂が紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。2020年の最初のコラムは、アメリカで新年を屋外で迎える際に知っておきたい危険について。


セレブレイトリー・ガンファイヤーとは?

 アメリカでは年越しのカウントダウンには各地で盛大な花火を打ち上げて、お祝いムードを盛り上げる。大勢の人たちが集まるニューヨークのタイムズ・スクエアの中継映像は日本でもよく知られていると思うが、他にも全米の多くの都市、観光地でカウントダウンのイベントが開催され、人々は笑顔で新年を祝う。

 しかし、アメリカでは、その花火の音に混ざって、まさかの銃声が鳴り響くことがある。「Celebratory Gunfire(セレブレイトリー・ガンファイヤー)」だ。これは別名「ハッピー・ファイヤー」とも呼ばれ、まるで花火のように銃を空に向けて撃つことをいう。生の銃声を聞いたことのない人であれば、花火の音と聞き間違えてしまうかもしれないが、空に向けて発砲するのは、もちろん違法だ。そして恐ろしいことに、「空に向けて銃を撃てば、当然、その銃弾はどこかに落ちてくる」。それなのに、花火と共に空に向けて銃を撃つモラルも常識もない人が、アメリカでは後を絶たないのである。

日本の年越しは除夜の鐘の音で、アメリカは銃声……

 このセレブレイトリー・ガンファイヤーが発砲されるのは、治安の不安定な地域だけとは限らない。閑静な住宅地でも、各地の花火大会の会場でも観光地でも、これが起きることがある。

 アメリカの住宅地では、身の危険がある事件に巻き込まれた場合以外の銃の発砲はもちろん、打ち上げ花火も禁止されている地域がほとんどだ。しかし、今年も住宅地で犠牲者が出た。被害にあったのは、テキサス州ヒューストンの女性。年越しの花火を家族と見ていたところ、近所の誰かが空に向けて発砲した弾丸が彼女の上に落ちてきて命を落としたのである。

 新年を家族とお祝いする楽しいはずの花火鑑賞が、このようなことになってしまうとは、犠牲者はもちろん、ご家族も悔やんでも悔やみきれないだろう。自分の横に立っていた家族が突然倒れることを目撃した人々の心のダメージ(PTSD)も計り知れないはず。それを思うと胸が痛む。

 空に向けて撃った銃弾は、地上に落ちてくる際、頭蓋骨をも打ち抜くほどの威力があるそうだ。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によると、弾丸が落ちてきた80%は被害者の頭、足、肩に当たっているという。CNNのニュースによると、上記のテキサス州の被害では犯人も分からず、警察が証拠になりうる銃弾の薬莢を探したが見つからなかった。この愉快犯的なモラルが欠如した行為には多くのアメリカ人が怒っているが、たいていのケースで犯人が見つからないため、残念ながらこの行為はなくならない。

 私も渡米当初は、銃声など聞いたことがなかったので、銃を発砲できない区域にある閑静な住宅街で迎えた新年の花火の音が、銃声だと言われてとても驚いた。「そんなことが自分の周囲に起こるわけがない」と思う方が普通だろうが、起こっているのである。モラルを守れない人間に銃を持たせる危険性……。やはりアメリカには何かしらの銃規制は必要なのだろうと考えさせられた事件だった。

この記事の寄稿者

 東京都出身。アメリカ人航空機パイロットの婚約者の米本土転勤に伴い、一般企業を退職。K-1 Visa にて渡米したのち結婚。現在、アメリカ南部アーカンソー州在住。移住後はパイロットを夫に持つ婦人の会や、日本語補習学校を通じての活動、現地日本人や移民•マイノリティーへの支援、生活アドバイス、ネット上でのアメリカ生活に関する相談・コンサルテーション、翻訳、通訳、観光案内など、国際線パイロットの夫のスケジュールに翻弄されながらも、さまざまなボランティア活動に力を注いでいる。

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