米大統領選ガイド(9)「スーパー・チューズデーはなぜ重要なのか?」

米大統領選ガイド(9)「スーパー・チューズデーはなぜ重要なのか?」

2020年11月3日に実施される米大統領選挙。トランプ現大統領率いる共和党とリベラルな民主党が政権奪回を争う選挙戦は、その後の世界情勢にも大きく影響するが、米大統領選のルールはかなり複雑だ。そこで、米大統領選を2000年から取材しているジャーナリスト・西森マリーによる、どこよりも分かりやすい解説をお届けしよう。


トランプに対抗できる民主党の代表は誰なのか?

「予備選」とは、投票者が「自分が支持する候補に投票してくれる代議員を選ぶ」という間接選挙だ。共和党の予備選は本選と同様、「得票数が最も多かった候補に、その州の全ての代議員数が与えられる」が、民主党の予備選は「候補者の得票数に応じて代議員が割り振られる」。

 民主党は2月に入って アイオワ州でのコーカスアイオワ州でのコーカス、 ニューハンプシャー州での予備選を終えたが、その時点での代議員獲得数はブティジェッジ前サウスベンド市長(22)、バーニー・サンダーズ(21)、エリザベス・ウォーレン上院議員(8)、エイミー・クロブシャー上院議員(7)、ジョー・バイデン前副大統領(6)、タルシ・ガバード下院議員と大富豪のトム・ステヤーはゼロだ。

 自称「社会主義者」のサンダースは予備選では勝てたとしても、本選で勝つことは難しいと見られているため、大手メディアや民主党派コメンテイターたちは、露骨にブティジェッジとクロブシャーの健闘を称えている。サンダースは2月22日にヒスパニック系の労働者が多いネバダ州のコーカスでも勝つことが予想されていたが、2月12日にネバダ最大の労組である調理関係者労組が、 組合員に与えられる健康保険を失うことを恐れて、政府運営の国民保険を推すサンダースを非難した。

 また、アイオワとニューハンプシャーの予備選が終わった時点で6人の代議員しか獲得できなかったバイデンは黒人支持率が高いため、2月29日に予定されている黒人の人口が多いサウスカロライナ州の予備選で圧勝すると言われていた。しかし、2月10日に発表された クイニピアック世論調査で、数ヶ月前までは49%だったバイデンの黒人支持率が27%に落ちていることが発覚した。

たった1日で3分の1の行方が決まる「スーパー・チューズデー」

このような状況のため、民主党の予備選では明確な勝者がいないままに全米15州で一斉に予備選が行われる3月3日の「スーパー・チューズデー」を迎えることになりそうだ。

 これまでの2回の予備選では、6月に予備選を行ったカリフォルニア州(代議員数415人)も今回はスーパー・チューズデーの一員となったため、「たった1日」で1357人の代議員が割り振られることになる。

 各州が割り振る代議員の総数は3979人。その約3分の1の代議員の行方を決めるスーパー・チューズデーは、候補者にとっても有権者にとっても非常に大切な一日だ。

 さらに、今回のスーパー・チューズデーは、去年の11月下旬に出馬を決めた元NY市長、マイケル・ブルーンバーグが初めて参加する予備選でもあるため、8人もの候補が乱立する戦国時代のような激しい戦いになりそうだ。

 ちなみに前出の世論調査では、ブルーンバーグ対トランプの支持率は51対42で、プルーンバーグが9ポイントの差で勝っている。しかし、2月11日から12日にかけて、ブルーンバーグが 黒人差別発言をしている昔の音声テープビデオ映像続々と浮上しているので、ブルーンバーグが民主党候補になった場合、民主党のお家芸である「トランプは人種差別者だ」というアンチ・トランプ広告は打ちにくくなるだろう。

 とはいえ、ブルーンバーグは ソーシャル・メディアで影響力のある若者たちに何十万ドルも払って インターネット・ミームを使用したマーケティングを大々的に行っているので、ブルーンバーグの資金力はあなどれないだろう。

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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