【Red vs. Blue】コロナウイルスで混乱するアメリカと渡航禁止令

【Red vs. Blue】コロナウイルスで混乱するアメリカと渡航禁止令

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回はトランプ大統領による渡航禁止令で混乱するアメリカ、事前警告がなかったと困惑するEUの件などについて。


 昨年末に中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染は世界に拡大し、3月には欧州がホットスポットになった。国内の感染拡大を食い止めようと模索するアメリカは3月11日、トランプ大統領が欧州からの入国を30日間にわたって禁止すると発令した。数時間後に「米国籍の人は対象とならない」と補足発表したものの時すでに遅し、外国に取り残されまいと欧州滞在中のアメリカ人が帰国を急ぎ、各地の空港で大混雑が発生した。EUは「コロナウイルスは世界的な危機であり、各国間の協力が必要だ」と、渡航禁止令に関し米国から事前の協議がなかったことに不満を表明した。米国墓所は19日、すべての国への渡航を中止するように勧告した。
https://www.npr.org/sections/goatsandsoda/2020/03/12/814876173/coronavirus-trump-speech-creates-chaos-eu-says-it-wasnt-warned-of-travel-ban

Red: ナショナル・パブリック・ラジオは間抜けだ

NPR is just dumb

中国風邪(COVID-19)は、3カ月に満たないうちに世界的な大流行となった。この記事を出したナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)は、抜本的な行動(例えば欧州の感染地域と米国間の移動を禁止するなど)は不合理なだけでなく、トランプが混乱を引き起こしていると訴えている。この記事には世界的なコロナウイルスの発生による旅行制限によって、欧州で立ち往生する可能性があるかもしれないと心配している孤独な「ジャーナリスト」のジェニファー・ホウズによるパニック状態でのツイートまで含まれている。つまり、NPRの記者と編集者は、世界全体(80億人)を心配する必要はないといっているのと同じだ。

 状況を比較するために、2009年初頭に発生した別のインフルエンザの流行を見てみよう。2009年のH1N1(豚インフルエンザ)の最初の確認症例は、同年の3月11日にメキシコで発見された。その後5月4日までに20カ国で1,000件の症例があり、同5月11日までに中国だけで23,000件の症例が見られた。そしてメキシコで豚インフルエンザの最初の症例が発見されてから90日足らずの2009年6月8日、ついに世界保健機関は豚インフルエンザの確定症例が25,188人(73カ国)で死者が139人になったと発表した。

 では、この2019年の中国風邪(COVID-19)を見てみよう。発生から90日足らずの2020年3月14日現在で、イギリスを除く欧州ではすでに38,000を超える確定症例が報告されている。さらに興味深い点は3カ月未満で中国ウイルス(COVID-19)が140カ国に広がり、156,098件の症例が確認され、5,800人以上が死亡していることだ。私はここで、トランプ大統領の行動が賢明だったかどうかを読者に判断してもらいたいと思う。COVID-19は豚インフルエンザとは違うということを間違えないで欲しい。豚インフルよりもはるかに悪い。現在のコロナウイルスの流行の規模を考えると、アメリカが他国への渡航を一時禁止するのは極めて理にかなったことのように思える。NPRの「賢い編集者たち」に反対したくはないが、そうせざるをえない。

Blue: 関税はトランプに食わせてやればいい

Let Them Eat Tariffs

トランプは、コロナウイルスが市場を揺さぶり世界中の通商を混乱させる以前から、
中国製品にかける関税はアメリカの企業にとってというよりも、自分にとって得になるということを明確にしていた。トランプと中国との貿易戦争はすでに経済を減速させていた。アメリカの企業は2019年に2016年より35億ドルも多くの関税を支払っており、多くの業界団体はトランプの関税撤廃を提唱している。撤廃を実施すれば、経済にとっては即座にプラスの効果をもたらしただろう。しかし、トランプ政権にとってそれは重要ではなかった。グラスリー上院議員がスピーチを行った1週間後、米国財務省は、コロナウイルスによる不況から米国経済を救うための関税緩和は検討しないと固く述べた。

 「いかなる状況下であってもトランプは自分の間違いを認めない」ということは、ずっと以前から明らかだ。大統領に就任してから彼は、自分に立ち向かう可能性のある者はすべて解雇し、自分に賛同する者だけをホワイトハウスのスタッフにした。そして今、トランプのエゴが、アメリカ人だけでなく世界中の健康を危険に晒している。

 たとえばトランプは、コロナウイルスのワクチン開発に取り組んでいるドイツの会社に、アメリカ人のためだけにワクチンを開発するようにと膨大な資金の提供を申し出た。
が、資金不足の保健機関は、信頼できるコロナウイルス検査の開発に問題を抱えている。また、ホワイトハウスは、高齢者は飛行機に乗るべきではないという保健当局の推奨を却下した。これらは全て、トランプがアメリカ国民に対して「全ては大丈夫だ」、と言いたかったからだ。「美しい検査キット」は十分にあり、全ての人に行き渡ると。

 経済援助のために関税の緩和はしないと言った後で、財務省はコロナウイルスの拡散と戦うために必要な中国の医薬品の関税を引き上げている。また、医療サプライヤーから要求されたバイオハザード・バッグ(生物学的に危険な物質を扱うためのバッグ)を含める33の関税の除外も拒否している。

 アメリカはこれからどうなっていくのか。本欄の読者の健康と幸運を祈ります。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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