車の所有は時代遅れ? 「カー・シェアリング」が都会の常識に

車の所有は時代遅れ? 「カー・シェアリング」が都会の常識に

アメリカ生活と車の所有は、かつてはセットだった。アメリカは広大で、限られた都市以外には鉄道や地下鉄網もないため、都市部から一歩外に出れば「何をするにも車が必要」なのは変わらない。しかし、35歳以下の若い世代においては、車の所有率が低下しているという。その背景にあるもの、それが「カー・シェアリング」の存在だ。


 アメリカでは、約7割の若者がローンを組んで大学を卒業する。公立大学の学費は平均して年間、日本円で110万円から275万円。そこに生活費などを加えると、4年間で必要になる金額は1,000万円以上になる。つまり、アメリカの若い世代は大学進学を選択した場合、その多くが卒業した途端に自動的に借金の返済に追われるのである。

大手調査機関ピュー・リサーチセンターの調べによると、大卒の若者の多くが、都会での生活を希望するという結果が出ている。理由は職場が生活圏内であれば移動が少なく、場合によっては夜に仕事を掛け持ちするため、都心でないと生活ができないから、だそうだ。以前のアメリカであれば、「郊外の一戸建てでゆったりと暮らし、自家用車で会社に通い、週末はきっちりと休む」という人生も選択できた。しかし、ロナルド・レーガン政権下で始まった大学授業料の値上げが1980年代から徐々に年々増え続けた挙句、政府が用意する学資ローンが2016年には平均4.6%にまで跳ね上がってしまったため、車が必要な郊外で暮らしている場合ではない、というのが若者たちの本音のようだ。

そんな時代に即したサービスのひとつが、車を共有する「カー・シェアリング」だ。全米初のカー・シェアリング会社は、2000年にワシントン州シアトルで誕生した。その後Zipcar、car2goなど、全国規模でカー・シェアリングを展開する企業は増え続け、2010年を超えたあたりから業界全体が急成長した。システムは、時間単位で車を借りる「会員制」がほとんどだ。car2goの調べによると「車の所有をやめ、車のシェアサービス利用に変えるだけで月間生活コストは平均600ドル近く下がる」というのだから節約できる額は大きい。懐事情が厳しい若い世代にとっては、必要な時だけ車を借りられるサービスは「有難い」の一言に尽きるのだろう。

他の例で見ると、アプリを使った自動車配車サービスのUberが、アメリカであっという間に市民権を得たのも、車を所有しない選択の顕著化の一部なのであろう。また、Google社やマイクロソフト社などの大手国際企業に勤めると、社員専用乗り合いバスや「Car Pool」と呼ばれるシステムを会社が無料で提供するケースも多く、車が必要となるのは週末だけに限られる人も増えている。

 アメリカは都市部以外では公共交通機関が発達していないため、「一家に数台」、「家族1人につき1台」と言われるほど、大多数が車に依存して生活している。しかし、そんなアメリカにおいて都市部住民の車所有離れが今後も加速し続ければ、郊外に暮らす人たちにも利便性が高い同様のサービスが広がるかも知れない。

記事関連HP
Zuicar HP: http://www.zipcar.com/
ⅽar2go:https://www.car2go.com/US/en/

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