「言論の自由」が左派と右派の分裂の核に。我々は何について戦っているのか?

「言論の自由」が左派と右派の分裂の核に。我々は何について戦っているのか?


 先月、オレゴン州ポートランドで起こった通勤電車内での殺傷事件の第1回目裁判が開かれた。その席でジェレミー・クリスチャン容疑者は男性3人を刺した(2人は死亡)理由を、「言論の自由を邪魔したから首を刺したのだ」と訴えた。ガーディアン紙のジェイソン・ウィルソン記者は、「クリスチャン容疑者にとっての言論の自由は、アメリカ人で白人の男性は、誰からも制約されずに若い女性2人に人種的・宗教的差別発言を怒鳴りつけることが許されること」だと言及し、最近目立ってきた白人至上主義グループの活動において「言論の自由」を盾にして、差別発言や過激な行動がみられることに疑問を投げかけている。

出典『ガーディアン紙』
元記事「Free Speech is at the Core of the Left-right Divide. But What Are We Fighting Over?」:https://www.theguardian.com/commentisfree/2017/jun/05/free-speech-is-at-the-core-of-the-left-right-divide-but-what-are-we-fighting-over


RED: 言論の自由は一種類のみ。嫌なら聞くな!
「Dear Guardian: There is only one kind of Free Speech. You don't like it, don't listen.」

 親愛なる友たちよ、ガーディアン紙の経営者と編集者は同紙を民主主義国の新聞を信じ難いレベルにまで下げてしまった。ガーディアン紙のジェイソン・ウィルソン記者は記事の前半を「言論の自由が左派と右派の分裂の核になっている。しかし、我々は何について戦っているのだろうか?」と題して、ポートランドのナイフ襲撃男(ジェレミー・クリスチャン)の例を格好の武器にして、“言論の自由擁護者”を中傷しようとしている。ここで、はっきりさせておこう、ジェレミー・クリスチャンはトーマス・ジェファーソンではないし、フランスの啓蒙家ヴォルテールでもなく、イギリスの共和派運動家ジョン・ミルトンでも、哲学者ジョン・スチュワート・ミルでもない。彼は言論の自由のチャンピオンではなく、ただの頭のおかしい堕落した犯罪者だ。言論の自由は、何かを好きか嫌いかの問題ではないし、何かに対して快適かそうでないかということでもない。言論の自由とは、政府に妨害されたり、暴漢に襲われたりすることなく、自分の考えを発言する自由だ。もし誰かが自分が嫌だと思うことを言っていたら、聞かなければいい。もしも誰かが悪意で人を傷つけることを言っていたら、友達にならなければいい。無作法な人は、自分の家に入れなければいい。
 言論の自由について、議論は不要だ。他の人がその言葉をどれだけ不快に受け取ったにしても、暴力を受ける恐れなく自分を自由に表現するか、事実上の軍事独裁主義の国に住むか、どちらかしかない。言論の自由において折衷案はない。あるか、ないか、そのどちらかだ。


BLUE:言論の自由を求めるなら、批判の自由を受け入れよ
「You want free speech? Don't cry over free criticism.」

 アメリカ憲法は、アメリカ市民の言論の自由を保障している。この権利は、それが真実または正直な個人の意見である限り、人々が自分自身を表現することを認め、政府の干渉から守ってくれるものだ。政府に対して批判的な発言をすれば、逮捕されたり、あるいはもっとひどい目にあったりする圧政的な国とは一線を画しているこの権利を、アメリカ人は非常に大切に思い、誇りに思っている。
 憲法で保障された言論の自由を非常に気に入っているがため、多くの人々は、「どんな時にどんなことを言っても問題ないのだ」と誤解している。そして「言論の自由」とは、「他のアメリカ市民を好き勝手に批判する自由ではない」ということを知ったときに驚き、怒るのである。これは反対意見を持つ個人や団体は、まるで非アメリカ的だとでもいうように激しく攻撃する人が増えていることでも明白だ。礼儀正しい議論をするためのマナー以前に、議論の仕方そのものがこの10年くらいの間に失われてしまったように見える。その喪失によって、我々の社会はどんどんひどくなっている。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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