アメリカ人の働き方

アメリカ人の働き方


 アメリカに進出して一年を一巡したら、ようやく目も慣れて物事が少しだけ見えてくる。そして、多くの日本人の方々がアメリカ人の働き方について日米間での大きなギャップを感じるとともに、疑問を抱くようになる。昔、某日系企業の社長が言った一言、「この国で認められることは大変なことですね」という言葉が今でも思い出される。

■働くシステム
 「アメリカ人たちは定時になったらすぐに帰ってしまう」、「決められた仕事のみをやるだけで広範な仕事をしない」、「すぐに辞めてしまう」などという声をよく聞く。アメリカと日本企業の大きな違いは、アメリカの企業は株主・投資家寄りの施策になっているが、日本企業は顧客志向である点だ。この対象の違いが働くことの意義、働き方、継続性に影響しているため、企業で働くシステムがアメリカと日本では異なるのである。アメリカのそれは、目標を決定して一気に走らせる戦争型だ。個人の目標も、共稼ぎで猛烈に働き、40代までにある程度の財産を築いてしまうのがアメリカ流といえるだろう。そのため、アメリカで会社を経営する場合は、この個人的な目標も配慮された働くシステムを社内に構築していく必要がある。

■毎日が勝負なダイバーシティ
 まず原則として、アメリカの企業は決められた時間内で完結するべく運営する仕組みとなっている(ときには残業がある場合もあるが)。この原則をベースに、人員の増減を事業の状況に応じて調整するのである。従って、このジョブ・ディスクリプション(職務内容)を定義づけした上で採用し、定時内に勝負させるのがアメリカだ。その日、その日が最高のパフォーマンスを発揮する勝負という競争社会に身を置いているので、パフォーマンス次第では即解雇されたり、左遷される。幹部は各自のパフォーマンスを最大限に引き出し、拡大させる仕組みづくりをするのが仕事である。このような職場を経験しているアメリカ人たちからすると、日系企業の職場で見られがちな「なぜ、この仕事をするのか」、「なぜ、このやり方でなければならないのか」という疑問に明確に説明ができない慣習的なシステムは理解し難いことが多いため、改善していくべきである。 
 また、日本企業の方が居心地がよいと考える、ゆったり型のアメリカ人たちも少なくないため、そういう人材は成長度合いが低く、困らされることが多い。
 日本市場でも同様だが、他国の市場に進出した当初から、良い人材はなかなか来てくれないものである。規模が大きく、成功している企業で働くアメリカ人でも、出来るならばアメリカ企業に勤めたいという気持ちを強く持っている人材が多いという。日本人は表面的な側面から判断する傾向が高いが、ダイバーシティが世界一と言われるアメリカでは、「裏の裏まで読み解く癖」をつけなければならない。

■見えない働き方
 アメリカでは、日本人が出社するまでの時間帯に、多くの勝負が行われている。シカゴ郊外にあるこのオフィスビルでも、早い人たちは朝4時台、5時台には始動している。都会のフォーチュン企業であれば皆、時間を問わずに見えないところで働いている。朝3時台、4時台の高速道路の車の台数を見ても、その状況がよく理解できる。これは学生時代から朝型が身に染みている背景からきていると言われている。アメリカでは小学校、中学校での朝7時や8時始業が珍しくなく、先生も質問や補講が必要な際には朝6時に学校に来るように言われるのだ。
 朝9時に定時通りに出社したら、多くのアメリカ人たちは朝食ミーティングや会合が終わり、すでに一仕事した状況であることが日本人ビジネスマンたちには見えていないことが多い。接待の方法も日本のように会食一辺倒ではなく(もちろん会食する接待もあるが)、たとえば個人的なプレゼントを自分の手で制作したり、顧客の家族や子供のためにスポーツの試合を撮影して編集するなど、気にしなければ見えにくい形式の接待も多い。また、「アメリカはピーチ型・日本はココナッツ型」と言われるように、アメリカ人は一見フレンドリーですぐに友達になれそうだが、固いピーチの種を打ち砕いて、真の仲間に認められるのは相当に困難。対人カルチャー・ギャップは企業でも同じことがいえる。愉快にジョークを飛ばしながら話をしているのは一見、仕事をしていないようにも見えるが、実に重要な関係性構築で、相手の懐や意識確認の実践である。
 
■握手しながら殴り合い
 アメリカのビジネスにおいては、政治や官僚の世界も同じであるが、ジェントルマンとして、にこやかに握手しながら裏では殴り合いの闘いが繰り広げられている。日本のように「黙々と職務範囲を超える仕事を何でもこなせ」という軍隊型の人材は、ウェストポイント大卒に多い。上司への絶対服従と指揮命令系統がはっきりしており、倒れるまで足踏みもするのである。アメリカでは上に行けば行くほど猛烈に働くとともに、結果を出さなければならない非常に厳しい競争社会がある(私も「いまからお前の喉を切り裂きにいくぞ」と脅された経験が何回かある)。一流と称されるビジネスパーソンに会える日本人たちは一握りなため、身近にいる企業人を断片的にみてアメリカを捉える傾向が高い日本人ビジネスマンが多いが、アメリカは真剣勝負をしに来たホンモノだけが相手にされる国である。

 アメリカに進出するならば、このように様々な働き方の「背景」をしっかりと見ながら、現地の方々と接していく必要がある。物事に対する表面的な見方だけでなく、その行動の背景には何があるのかまで見るように心掛けてほしい。

この記事の寄稿者

慶應義塾大学法学部法律学科卒業。学生時代は日本起業家協会の学生会長を務める。伊藤忠商事大阪本社・宇宙情報産業機械部門に勤務後、1999年よりシカゴのアイティエー・インク (I.T.A., Inc.) にジョインし、2005年より社長。日本の産業分野における対米進出支援、商社業務、リサーチ・調査、IT/テクノロジー支援を中心にニッポンのアメリカ事業部としての支援プラットフォームを構築。また、米国マイノリティ承認を取得し、大手企業へのCSRの一環であるサプライヤー・ダイバーシティ向上を支援している。

米オバマ大統領直轄ホワイトハウスのアジアアメリカ・メンバー(2年間)、 経済加速化イニシアチブに参加。他にも5つの団体で幹部や理事、ジェトロ・コーディネーター等に従事。支援しているインターンは500名以上。

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