下心ご法度! コミュニケーション能力を磨く、清く正しい「触れ合い」

下心ご法度! コミュニケーション能力を磨く、清く正しい「触れ合い」

アメリカでは時々、日本では考えられないような不可思議なビジネスが流行ることがあるが、EDUCO Inc.が提供するBuddle Partyも間違いなくそのひとつだろう。アラバマ州に本部を置くこの非営利教育機関が提供する一風変わったサービスとはどんなものなのだろうか?


 2004年にアラバマ州政府の認可を受け、現在も非営利団体として活動を続けている教育機関EDUCO Inc.。この機関が提供しているのは、コミュニケーション能力向上のためのプログラム「Cuddle Party」だ。すでに設立から10年以上が経過しており、プログラムの普及事業は順調に伸びているという。現在はアメリカ国内の他にも、カナダ、オーストラリア等に支部がある。

 「教育機関が提供するコミュニケーション・プログラム」とはいうものの、その内容はとても一般的とはいえない。まず、受講生は全員パジャマ、あるいはその代わりになるような完全にリラックスできる服を持参しなければならない。それだけでも一風変わっているが、集まった生徒たちが最初に行うことは、ひたすら長い世間話である。プログラムの名称に「Party(パーティー)」という名がつくだけある。美味しいおやつをつまみながら自己紹介をし、受講生らはゆっくり会話を楽しむわけである。「それでは単なる遊びの集会ではないか?」と思われるかもしれないが、それには意図がちゃんとあるのだ。

 受講生同士が完全に和んで、緊張がほぐれた頃にいよいよ本格的なプログラムが開始。プログラムは同機関が認定した専門のトレーナーによって進められる。生徒たちが完全に和まなければならない理由は、このプログラムの大きな特徴のひとつが「知らない者同士が抱き合うこと」を必要としているためである。

 このプログラムは心理療法を目的とするものではなく、あくまで「コミュニケーション能力」を高めるためのものだ。社会で健全な人間関係を保とうとすれば、一定の境界線を第三者との間で維持することは必要であろう。しかし、ストレス過多の現代社会においては、そうした境界線こそが自らを常に緊張した状態に追いやってしまう原因にもなっている。この機関が着眼したのはそこだ。他人同士が限りなく境界線をつくらず、本音で真摯なコミュニケーションを図るためにデザインされたプログラムの中心にあるものこそが、抱擁なのだ。

 このプログラムは、「大人がコミュニケーション、境界、愛情を探求するように設計された遊び心のある社交イベント」である。出席者が出会い、新しい人と話をしたり、双方同意のもとでマッサージしあったり、抱きしめあったりすることが最大のウリなのだ。見知らぬ人と抱き合うというのは、かなり奇抜なコンセプトではあるが、性的ではない接触によって自分の考えを表現すること、自分が欲するものを伝えること、相手の求めに同意したり、ときには相手が傷つかないような方法で拒否することを学ぶことは極めて重要であり、現代社会における円滑なコミュニケーションには不可欠だというのが、この団体の主張なのである。

 特に家族と離れて一人暮らしの人や、恋人がいないような人は、人と抱きしめ合うことが絶対的に生活の中で欠如している。そうした人こそプログラムに参加してほしいと、この団体は呼びかけている。

該当企業のHP:http://www.cuddleparty.com/

この記事の寄稿者

関連する投稿


これからは「ペットが飼主に電話する」?

これからは「ペットが飼主に電話する」?

自宅にカメラを設置し、外出先からスマホでペットの様子を確認できるアプリ類はもう一般的。そこで今度は、外出中の飼主にペットからコンタクトすることが可能なガジェットが登場し、話題になっている。


【Red vs Blue】ワシントンポスト紙、ロイ・ムーア氏に関連する作り話の罠を見破る

【Red vs Blue】ワシントンポスト紙、ロイ・ムーア氏に関連する作り話の罠を見破る

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々見解を披露する。今回は、保守派の活動家がリベラルな新聞社を騙して、嘘の記事を報道させる罠を仕掛けた話について両者の意見を乞う。


もう手放せない! ありそうでなかった「ヨガマット」

もう手放せない! ありそうでなかった「ヨガマット」

米ロサンゼルス在住のヨガ愛好家が開発したヨガマットが、全米のヨガ愛好家たちを夢中にさせている。一体、どんなマットなのだろう?


「一流」や「本場」から学ぶということ

「一流」や「本場」から学ぶということ

「ペンタゴン(米軍)式」はビジネスでも使える! メンタル・トレーニングを中心に、国防省現役キャリアの著者が知られざるペンタゴンの世界を紹介する『ペンタゴン式・心の鍛え方』。何かを習得したい時には、ボトムアップでコツコツ自分を試すだけなく、一流や本場と呼ばれる世界に体当たりしよう。


オペラ歌手の真冬の恋

オペラ歌手の真冬の恋

運命鑑定と開運アートで、ハリウッドセレブリティら、ビッグネームたちから愛される著者がこっそり伝える成功者たちの習慣とは?Sara Sayes(サラ・セイヤス)の『運命鑑定士がみたアメリカ人の幸福』。年の瀬になると著者の元には翌年の運勢鑑定が殺到するが、よい運気でも運が上がらない人もいるらしい。必ず開運するコツとは?






最新の投稿


サステイナブルな食生活への移行はゆっくりでいい

サステイナブルな食生活への移行はゆっくりでいい

オーガニック野菜の生産や販売、食育教室などを開催するサステイナブル農場「21エーカース」の料理人で、料理人歴30年以上のベテラン・シェフ、ジャック・サリバン。今回はジャックが、サステイナブルな食生活へのスムーズに移行するための「コツ」を伝授する。


日本好きを魅了する、ビバリーヒルズのスパ探訪

日本好きを魅了する、ビバリーヒルズのスパ探訪

全米の流行発信地のひとつでもあるカリフォルニアのビバリーヒルズに、セレブリティたちを魅了する日本スタイルのスパがある。日本人女性、黒野智子さんがオーナーの「Tomoko Spa」だ。その驚きのサービスとは?


【Red vs Blue】ビットコインが抱える“多くの問題”に頭を悩ませる監査当局

【Red vs Blue】ビットコインが抱える“多くの問題”に頭を悩ませる監査当局

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は、両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々の見解を披露する。今回は、アメリカでも話題の仮想通貨への投資について。


今週のU.S.A.ニュース・ピックス! 銃規制スピーチからロボット動画まで

今週のU.S.A.ニュース・ピックス! 銃規制スピーチからロボット動画まで

アメリカ人たちが「これは見逃せない!」と思った今週のU.S.A.ニュースをピックアップ! 2月第3週のアメリカでは、フロリダ州の高校で起きた銃乱射事件の生存者によるスピーチを有名アーティストや若者層がリツイートして全米に銃所持の問題を提起したことが最大のニュースに。


トランプの「軍事パレード開催」発言を兵士たちはどう受け止めたか

トランプの「軍事パレード開催」発言を兵士たちはどう受け止めたか

多様なアメリカでは、暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、「軍事パレードを開催したい」というトランプ大統領発言に対する兵士や保守派の意見を紹介する。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング