「Google HOME」等、AIスピーカーで変わるアメリカ。アップル参入で激化か

「Google HOME」等、AIスピーカーで変わるアメリカ。アップル参入で激化か


 アマゾン社がアメリカで初めて音声でコントロールできるスピーカー「アマゾン・エコー(Amazon Echo)」を発売したのは2014年。昨年、アップデート版が発売され、対抗馬のグーグル社も「グーグル・ホーム(Google Home)」を発売した。AI(人工知能)スピーカー市場は現状アマゾンのエコーが70%を獲得して独走しているが、今年12月に発売予定のアップル社「ホームポッド(HomePod)」が参入すれば、市場に動きが出るだろう。

 この3社のAIスピーカーは共に、起動のために必要な「ウェイクワード(wake word)」を聞くと人間の音声コマンドに反応する。AIスピーカーのユーザーは年々増え続けているが、日々どのような使い方をしているのか、アマゾン・ドットコム本社があるシアトルでユーザーたちの声を拾ってみた。


■地元シアトルのユーザーたちの反応は?
 AIスピーカーのユーザーたちの感想は「便利だし、かなり楽しい」というエキサイティングでポジティブな声と、「便利だけれど、常にデバイスに会話を聞かれているのは不安」という、プライバシーの保護を心配する声が、見事に半々である。

 AIスピーカーという商品において、「プライバシーの保護」は当初から争点のひとつだ。ウェイクワードを伝えるまで録音は開始されないものの、自分たちの会話が「常にデバイスに聞かれていること」を、「非常に不快」だと感じている人が多い。なかには「政府がAIスピーカーをコントロールすれば、国民が家で何を話しているかが簡単にスパイできる」というジョークすら飛んでいるが、デバイスさえ各家庭に設置できれば、技術的にはそれほど難しいことではないだろうと考える人が多いのは、諜報国家のアメリカならではかも知れない。ただ、そんなことがたとえ起きても、ユーザーがその詳細を知ることは一生ないだろうから、「不快だ」と思う声が挙がるのは当然であろう。

 しかし、そんなに心配していながらも、 「アマゾン・エコー」または「グーグル・ホーム」を入手したユーザーは、それを自宅で「毎日、使用している」というのだから、慣れとは恐ろしいものである。

 AIスピーカーのユーザーのほとんどは、すでに「Hey Siri」や「OK Google」というウエイクワードで音声検索ができる機能付きのスマートフォンを持っている。それなのに、なぜ「わざわざ高いお金を払ってまで、設置用のAIスピーカーを買うのか?」という質問に、男性ユーザーの多くが「スマホをどこに置いたか、探すのが面倒だから」と回答している。

 常にスピーカーを使用する理由は「楽しいから」という素直な声が多かったが、それよりも自分が思ったことをすぐ口に出して聞けるという利便性は、スマホを探して手に取って、いちいちアプリを開いてから質問することを圧倒的に上回るようだ。


■どんなときに最も活用しているか?
 多くのユーザーはAIスピーカーを、自分の予定をリマンダーしてくれるカレンダーとしてや、天気のチェック、やることリストの作成など「デジタル・アシスタンス」として使っている。また、独身者からは家の中に誰か(何か)話し相手がいるようで生活が楽しくなったという意見も出ている。たとえば、オーディオ・ブックを聞くのが好きな人は、「AIスピーカーにいろんな本を読んでもらって楽しんでいる」そうだ。

 「アマゾン・エコー」と「グーグル・ホーム」の音楽機能については、感想がさまざま。デバイスが自分の好みとは異なるバージョンの曲を流すことが不満だという声や、リクエストされた曲がわからず、「質問がわかりません」と繰り返すことが多いことが音楽機能分野に見られるようだ。

 しかし、AIスピーカーを日常的に使用していると、依存度が高まり、デバイスなしには出来なくなる日々の小さなことが増えていることが「ちょっと怖いかも」という意見もあった。特に、料理に関すること(小さじ1杯とは何ミリ?など)やレシピは、デバイスにとっての得意分野でもあるため、キッチン周りに関する質問には他に比べて熱い回答が返ってくることが多い。デバイスの情熱度も関係しているかは分からないが、「レシピや計量を自分の頭で考えなくなった」という女性ユーザーの感想が意外と目立った。


■AIスピーカーと共に成長する周辺ビジネスは?
 「アマゾン・エコー」と「グーグル・ホーム」、そして、まだリリースされていない「アップル・ホームポッド」は、3社共にスマホを使って家電を自動管理できる。「エコー」は異なるメーカー各社のオーブンやコーヒーメーカーなど様々な家電に対応しており、「ホーム」はグーグル社の、そして「ホームポッド」はアップル社のホーム・オートメーション・プロダクトを使用している。

 「エコー」と「ホーム」は、配車サービスの「Uber」を呼んだり、銀行口座をオンラインで操作できたり、食材や生活用品から温かい食べ物などの宅配サービスを注文できる。「エコー」の強みは言うまでもなく、自社アマゾン・ドットコムの巨大な商品在庫とパートナー企業を利用できることだ。「ホーム」はグーグル社の独自のマーケットプレースを利用しているが、パートナー企業にはコストコ、ホールフーズ、ギターセンターなどの大手が名を連ねている。焼きたてのピザや、レストランからのテイクアウトメニューなど温かい食べ物の宅配サービスとの提携も徐々に数を増やしており、たとえば全米チェーンのドミノ・ピザは「エコー」と「ホーム」の両方と契約している。アマゾンの「エコー」はさらに別の全米チェーンのピザハットをはじめ、全米20都市に千店を超えるレストランと宅配契約を結んだ。グーグルの「ホーム」は、自社のグーグルマップのアプリケーションを活用して各地元のレストラン情報を繋げている。

 これから発売されるアップルの「ホームポッド」は、「reinvent home music(自宅での音楽を蘇えさせる)」をキャッチコピーに、音楽と家電の自動管理に特化するそうだが、「メッセージを送ることも可能にする」とも公言しているので、その機能も気になるところだ。


■アップルの参入で市場は変わるのか?
 「アマゾン・エコー」と「グーグル・ホーム」は日々新しいサービスを加え、すでに人々の生活に入り込んでいる。大きく遅れて市場参入する「アップル・ホームポッド」は、同社の強みであるエコーシステムの相互運用性を使い、アップル・ユーザーにとって魅力的な商品を作るだろう。
 しかし、「ホームポッド」が立ち上げ時にSiriの限定バージョンをビルトインする予定であることには、懸念の声があがっている。また、アップル社はマップコネクトや、アップル・ペイなどの自社サービスを既に持っており、同社の技術を駆使すれば競合より良いショッピング・システムを提供できるかも知れないのに、「なぜ、アマゾンやグーグルの商品に付いている機能をあえて無視するような選択をするのか?」という疑問を持つ人も多いようだ。だが、同社はきっと「ショッピングを主目的とするユーザーならば、最初から巨大な商品在庫と優れたオンライン・ショッピング・システムを持つアマゾン社のデバイスを購入するはず」と考え、自分たちは得意分野に集中しようと早い段階で潔く判断したのであろう。
 アップル社はBeats Audioを買収後、再度音楽に強化する方向性を打ち出しており、今後は音楽やビデオ、AirPlayを活用したiOSデバイスやアップルTV、スマート家電サービスなどに集中すると見られている。果たして、この「ホームポッド」にビルトインされるSiriの品質が、AIスピーカー市場を揺るがすほどの商品になるかどうか、12月が来るのを楽しみに待とう。

IT業界に関する記事 >

この記事の寄稿者

インターエージェンシーLLC代表(ワシントン州シアトル)。デジタル媒体におけるブランディングおよびマーケティング・コンサルタント。クライアントは米大手スポーツ・ブランドや玩具メーカーから、スタートアップ、非営利団体などと幅広く、緻密なデータ分析から導き出すクリエイティブなネットマーケティングのコンサルテーションには定評がある。シアトルのグランジミュージック・シーンを牽引したバンドのベーシストだった過去を持つ。

関連する投稿


米アマゾンの年末商戦、「子供の目線」のカタログ配布は功を奏すか?

米アマゾンの年末商戦、「子供の目線」のカタログ配布は功を奏すか?

昨年、米アマゾンドットコム社が突如開始したオモチャのカタログ。今年もホリデーシーズンに先駆けて、アメリカ国内の家庭にカタログが届き始めた。しかし昨年とは異なり、今年のアマゾンのカタログのマーケティングにはひねりがある。このカタログは、完全に子供たちに向けたものなのだ。


2020年版、「アメリカで最も求められる企業トップ100社」発表

2020年版、「アメリカで最も求められる企業トップ100社」発表

米ESG評価機関NGO「JUST Capital」による恒例の「America’s Most JUST Companies」の2020年度ランキングが発表された。地域への還元や雇用の創出、環境保全への取り組みなどの公共性など、時代を反映する各項目でそれぞれ高得点を得た米企業とは?


アップル社、地元の住宅危機とホームレス対策に約2,700億円を投資

アップル社、地元の住宅危機とホームレス対策に約2,700億円を投資

米アップル社が、本社のあるカリフォルニア州の住宅供給危機の緩和に向け、25億ドル(日本円で約2,700億円)という巨額の資金を拠出することを発表した。同州では企業家や大企業従事者とそうでない人たちとの収入の格差が拡大し、それ以外にも様々な要因が重なって、これまで長年住んでいた家のローンやアパートの家賃が払えない人が続出。ホームレスも増加している。


マイクロソフトが米国防省のクラウド契約を獲得

マイクロソフトが米国防省のクラウド契約を獲得

米国防省、通称「ペンタゴン」のクラウド・コンピューティング契約をマイクロソフト社が獲得した。これは破竹の勢いで拡大を続けるアマゾンドットコム社(AWS)が取ると見られていたため、米国防省のこの決定に業界がざわついている。


今年のプライムデーに最も売れた商品とは?

今年のプライムデーに最も売れた商品とは?

先月開催されたアマゾン・ドットコム社による恒例の大バーゲン、アマゾン・プライムデー。毎年、たった1日で爆発的に売れた商品がいくつか出現するので、話題になる。今年アメリカで飛び抜けて売れた商品を紹介しよう。






最新の投稿


【Red vs. Blue】トランプの弁護士一家が慈善基金から約71億円も受け取っていた件

【Red vs. Blue】トランプの弁護士一家が慈善基金から約71億円も受け取っていた件

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回はトランプ大統領のお抱え弁護士であるセクロウ氏と彼の家族が慈善団体から約71億円も受け取っていたことについて。


環境問題をまじめに考えるアメリカの若者たち 

環境問題をまじめに考えるアメリカの若者たち 

ニューヨークにある名門コロンビア大学バーナードカレッジの学生・光田有希が、アメリカの大学生たちの文化やトレンドなどの情報をお届けするコラム。今回はアメリカの若者たちの環境問題への意識の高さや具体的な行動について。


12星座「ハリウッド開運術」2020年2月の運勢

12星座「ハリウッド開運術」2020年2月の運勢

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが、お届けする開運指南。星座が織りなす神秘のメッセージが、あなたを幸せへと導きます!


米大統領選ガイド(8) 「大統領選はカネで買えるのか?」

米大統領選ガイド(8) 「大統領選はカネで買えるのか?」

2020年11月3日に実施される米大統領選挙。トランプ現大統領率いる共和党とリベラルな民主党が政権奪回を争う選挙戦は、その後の世界情勢にも大きく影響するが、米大統領選のルールはかなり複雑だ。そこで、米大統領選を2000年から取材しているジャーナリスト・西森マリーによる、どこよりも分かりやすい解説をお届けしよう。


米アマゾン本社内のホームレス・シェルター、まもなくオープン

米アマゾン本社内のホームレス・シェルター、まもなくオープン

物価の急上昇と共に増え続けるホームレス。そのことが大きな社会問題になっているシアトルに本社があるアマゾンドットコム社が、同本社内にホームレスの人たちが使用できる宿泊施設をつくり、3月末までにはオープンする予定だ。


アクセスランキング


2
軍人たちが行う積極的な「第二の人生設計」

軍人たちが行う積極的な「第二の人生設計」

【ライフ&カルチャー】アメリカ国防総省キャリア カイゾン・コーテ

3
【エッセイ】エッグノックとはどんな飲み物?

【エッセイ】エッグノックとはどんな飲み物?

【ライフ&カルチャー】会社勤めのコラムニスト デイビッド・アンドリューズ

4
アメリカ人にとっては出汁とは何か?
>>総合人気ランキング