テキサス州デントン郡はなぜ、ネット投票から投票用紙に戻すのか?

テキサス州デントン郡はなぜ、ネット投票から投票用紙に戻すのか?


 日本の国政選挙の投票方法は全国津々浦々どこも同じ。インターネット投票を導入する声は上がっているものの、現在は投票用紙に書き込む方法のみが用いられている。ところがアメリカでは州ごとはもちろんのこと、ひとつの州内でも市や郡などの地域によって投票方法が異なる。
 テキサス州で9番目に大きく、同州内で最も急成長を遂げているデントン郡は、今年11月の選挙から、過去10年間使用していた電子投票機と投票用紙との併用を止めて、投票用紙に1本化することになった。アメリカ各地でオール電子化による投票が進む時代だが、それ逆行する同郡の動きは、昨年11月の大統領選挙で電子投票機が正しく作動せず、大変な混乱を招いたことが発端だ。原因は人的なミスだったが、これまでにも投票機に不信感を持ち、自分の一票が正確に反映されているかどうか疑問を持つ人がいたこともあり、有権者、共和党、民主党両党首の全者が投票用紙採用を望んだ。ただし印刷した投票用紙を事前に用意するのではなく、有権者が投票所を訪れた時にその場で印刷して渡すため、過不足の心配がなく、不正投票の防止にもなるという。
 原始的投票法は不正投票の取り締まりに最適なのか? Red とBlueの意見はいかに?

出典『The Texas Tribune』
元記事「Why one of the largest counties in Texas is going back to paper ballots」
https://www.texastribune.org/2017/07/04/why-one-largest-counties-Texas-going-back-paper-ballots/

RED: ときには原始的方法が一番信頼できる
「Old fashioned way is sometimes more reliable」

 デントン郡の対応には賛成できる部分が多い。昨年の大統領選挙の際も「投票集計に不正があったのでは?」という疑惑が持ち上がったが、電子投票システムが導入以来、こうした話は毎度のことだ。しかも最近では、ロシアのハッキング疑惑だのなんだの、世の中「ハッキング」という言葉を使って、何でもかんでも不正が可能というような風潮が高まっている。
 だから、「原始的な紙の集計で選挙・選挙後を管理する」という手法に立ち返ることで、「選挙不正」という大騒ぎを選挙後に聞かずに済むのは大変結構なことだ。どんな方法をとったところで、何らかの問題が起こることは予測できるのも事実だろう。それでも誰かが遠くで選挙の不正に関与していた云々といった、バカげた話は聞かずに済むのはいいことだ。また、それでコストダウンが図れるのなら、余計に歓迎だ。
 不正騒動に毎度なる選挙運営や管理の仕組みが、一見、時代にそぐわない古典的な手法よりもお金がかかるのであれば、そんなものは「やめちまえ」というのが本音だ。それがどんな手法であっても、その手法が限りなく正しく機能し、予算が少なくて済むならば、税金を払っている者としては、その方がいいに決まっている。電子投票が便利どうのこうのよりも、単純明快、明朗結果が引き出せるほうがよほどすっきりする。


BLUE:紙はハッキングできないし、スイッチを入れ忘れることもない
「You Can't Hack Paper, or Forget to Turn It On」

 アメリカの有権者は電子投票機に対して懐疑的であるべきだ。ハッキングの危険性はもちろんのこと、投票機をテストモードにしたまま投票当日に作動させるといった簡単なミスの可能性に至るまで、紙に戻るには十分な理由が揃っている。非常に原始的に見えるし、票を数える手作業には大変な労働力を要するが、公的な資金で設けられた選挙部の予算を、投票機とデータベースの安全を守るためにサイバーセキュリティー専門家を雇う代わりに、こっちに回せばよいのではないか?
 もっと重要な点がある。トランプが嬉しそうにG20会議でプーチンと「合同サイバーセキュリティー・グループ」を結成しようと話していた間、ロシアは全米の原子力発電所ネットワークをハッキングしようとしていたではないか。アメリカの諜報機関は、ロシアがサイバー攻撃をしかけ、偽の情報を流すことで2016年の米大統領選を妨害しようとしたことを確証している。そのロシアの使節が5月には、「法に訴えて我々に有利になるならばそうする。もしそうでなければ無視する」と言っているのだ。
 テキサス州デントン郡の現実主義は、全米に進むべき道を見せてくれている。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

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