アメリカ南部でビジネスを成功させる「カギ」は、教会にあり!

アメリカ南部でビジネスを成功させる「カギ」は、教会にあり!


 アメリカ南部の人々は人情深く、どんな小さな親切も心にとどめ、こちらが忘れた頃に必ず恩返しをしてくれる義理堅い人達だ。彼らの心は南部という土地の気候のように非常に温かく、他州や他国から来た観光客のことも親切に歓待してくれる。

 しかし、いざ「南部でビジネスをしよう!」となると、状況が一変する。南部の州民はよそ者に対して排他的なところがあり、特にニューヨークやカリフォルニア、ボストンなどの都会の人々や外国人に対しては、根深い懐疑心を抱いている。懐疑心を抱く理由のひとつは、アメリカのメディアが”南部人=無教養な人種差別者”という間違ったステレオタイプを信じ込み、南部の人々を小馬鹿にするような報道をし続けているからだ。それを見ている南部の人々は、「都会の人間や外国人は、自分たちを見下しているに違いない」と思っているのである。

 このバリアーを破って南部で受け容れてもらいたいならば、教会が主催するボランティア活動に参加するのが一番だ。南部の人々はアメリカで最も信心深く、おおかたの住民が日曜には教会に行き、教会が行う様々な慈善活動に積極的に参加している。南部では初対面の挨拶代わりに“Which church do you attend/go to?”「あなたはどの教会に通っているのですか?」と尋ねるほど。教会は日常生活の一部なのだ。

 教会では、中産階級の人も大企業の重役も、保安官も退役軍人も、中小企業の社長も医者も、弁護士も政治家も、”キリスト教の信者”という平等な立場で、様々なバックグラウンドの人々が繋がっている。そのため教会の慈善活動に参加すると、対等な人間関係で、しかもポジティブなネットワークが一気に広がるのである。

 キリスト教徒ではない外国人が教会の礼拝に参加したら少々怪しまれるかもしれないが、教会主催の慈善活動は、宗教や宗派に関係なく、あらゆる参加者を歓迎してくれる。これはイエスが信者たちに語った「良きサマリア人の話」に由来するといわれる。その逸話は、強盗に襲われて半殺しにされ、道ばたに置き去りにされた旅人を、ユダヤ教司祭やレビ族(司祭を補佐した一族)の人間は無視して通り過ごしたが、ユダヤ人の中で地位が低く蔑まれていたサマリア地方の人が、旅人を介護して面倒を見てくれた、というものだ。

 キリスト教徒、特に南部のバプティストたち(プロテスタント最大の教派)は、このa good Samaritan(良きサマリア人)の教訓話が大好きだ。教会に行って、ボランティアで慈善活動に参加したい旨を告げ、“Because I'd like to consider myself a good Samaritan.”「私は良きサマリア人でありたいと思っているからです」と言えば、牧師からも信者からも間違いなく即座に歓迎されるだろう。


 よい意味でも悪い意味でもコネがモノを言う南部でビジネスを成功させたいなら、教会のネットワークをフル活用して、信頼を築き上げよう。訴訟社会のアメリカでは、万が一、詐欺やセクハラなどの濡れ衣を着せられて訴えられた場合でも、南部では「牧師に勝るcharacter witness(性格証人)はいない」ということも忘れてはならない。教会を通じて善意と善行に基づいた人間関係を広げれば、必ず南部でビジネスの勝者になれるだろう。

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この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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