契約社会のアメリカで「信じてはいけないこと」

契約社会のアメリカで「信じてはいけないこと」


 前回のコラムでもお伝たえしたが、アメリカは契約社会であり、何事においても契約書を中心に物事が動く。そのため契約書を作成する弁護士には、最初から細かく全てを伝え、たとえ分厚くなっても、すべてがそこに記載された契約書を作成することをお勧めする。なぜならこの国では、契約書に記載されたことは、それがどんなに細かくても守り、守れない場合には法廷で戦うことになるからだ。

 たとえば、「オフィスのエアコンの風の当たり具合が仕事を害するので、設置場所を3センチ下げるか、もしくは5センチ下げるべきか?」という内容ですら契約書を交わして、その協議を行う。お互いが譲れない場合は、何度も書類が行き来して、最終的に両者がサインを入れるまでに長く時間がかかることもある。

 また、契約書の英文には専門家が“含みを持つ英単語”を巧妙にセンテンスに入れ込んで意図的に文章の意味を曖昧にすることなどもあるので、契約書を読むときは、そういう可能性まで全てを理解して承諾するまで同意するべきではない(サインするべきではない)。

 アメリカで交わす契約書は、どんなものも分厚い。なかでも、アメリカの企業が従業員を雇用する際に各人との交わす契約書などは、気が遠くなるほど詳細な項目が羅列されている。例えば、「オフィスでランチタイムに飲食をした場合のゴミは、オフィスのゴミ箱には捨ててはならず、持ち帰るか、外で捨てるように」などと記載されていることがある。こうした規定があると、従業員たちはランチにジップロックに入れたサンドイッチや、簡単なランチボックスを持参し、ゴミが出ないにする流れになる。そのため、オフィスの環境維持的にも望ましい状況が保てるのだ。

 日本の場合は、口約束でも大体のことは守られ実行されるケースが多い。例えば、「明日電話します」と言った場合は、90%以上の確率で電話がくる。急用などで電話ができない場合は、その旨を伝えるメッセージが送られてくる。しかし、アメリカ人の「明日電話します」は、過去の経験から換算すると守られる割合は20%くらいだ。彼らには契約書に基づいて仕事をするという背景があるので、「口ではなんとでも言える」というマインドがある。何かを言うことでその場を明るくしたり、物事をスムーズに進めたりする。しかし、その「口ではなんとでも言える程度のこと」を、多くの日本人は言葉通りに信じてしまうので、結局物事が進行しない事態になると、信用できないと言い出す。多くの日本人は「アメリカ人に嘘つかれて、騙された」と嘆くが、彼らにとって、何かを適当に言うことや軽い嘘は日常であり、悪気はないのである。

 コミットメント(約束)も容易に信じてはいけない。書類にサインがなされるまでは、「何か言っているな」程度に思って、その言葉に右往左往するべきではないだろう。オーバートークな相手には、最初から契約書という「書面上での討論」にする方が、ストレスが少なくてお勧めだ。

 そして、アメリカ人は証拠があることを信用する。ビジネスシーンで相手を説得する材料として、エビデンス(証拠)が非常に重要であり、目で見えるビジュアルな証拠はアメリカ人への交渉に効力を発揮しやすい。エビデンスは統計や証拠資料などを写真と分かりやすい文章を使って作成しておき、必要であればいつでもiPadなどで見せられる体制を心がけたい。アメリカでは、その話題が出たらいつでもその場で簡単なプレゼンテーションができるように、書類や資料をデジタルで持参しておくことは必須である。

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