アメリカでの営業はエレベーター・ピッチ

アメリカでの営業はエレベーター・ピッチ


 日々、日本からたくさんの方々がアメリカ市場に営業に来る。弊社も市場販路構築の依頼をはじめ、様々な要望に対応させて頂くが、やはり日本との違いにみなさん驚かれる。

 私は、日本はもちろん、アメリカをはじめ、これまで十数カ国で販売を経験してきたが、日本市場での販売が最も簡単だったと感じている。それは私が日本人であるからだけでなく、日本はアメリカとは異なり民族の多様性が少ない点や顧客の要望内容にもブレの範囲が少ない点、そして商品販売における重要事項は品質、価格、納期であることが明確だからであろう。

日本より厳しい営業市場

 殊にアメリカを含めた海外では、まずアプリケーションの多様性ならびに世界中の競争相手がひしめき合っている市場にて、営業内容が全く異なる。他のメディアでもお伝えしていることだが、まずはアプリケーション自体が相当に数多く存在しており、日本で想定している用途では事が足らなくなることが多いことを認識しなければならない。そのため、様々な現場の理解をより深めておく必要がある。海外では下記の式が基本になる。

アプリケーション(多数) x 品質(松竹梅) x 価格(松竹梅)

 アメリカ市場で成功しようとする場合、まずは多数のアプリケーションの「どのセクターに焦点を絞るか」が重要だ。また、品質レベルも、松レベルだけを打ち出して品質が良いと連呼するだけでは全く理解されない。アメリカ市場における価格は世界で最も厳しいために、それぞれにおいて松竹梅の様々なマトリックスを用意しておくことをお勧めする。

サプライチェーンが勝負の鍵

 前述の要件を仮に満たしたとしても、次にサプライチェーンの構築が課題となる。まずは膨大な需要に呼応する生産体制が必要だ。産業製品でも日本の人口の3倍近い市場を想定しているようではNGだ。製品によっては30倍近い市場規模の差異が存在することを理解すべきだろう。多くの場合、引き合い段階で生産キャパを大幅に超える需要に対応する可能性への応えを、協業等のリソース・プラットフォーム構築を通じて用意しておくことをお勧めする。

株主・投資家志向の営業

 日本では技術(製品)から商談に入るケースがほとんどだが、アメリカでは同様に重要なのが、前述したように投資対効果をはじめとする顧客へのビジネス面でのメリットだ。アメリカに来る多くの日本企業は、実際になぜ日本市場で売れているのか、真に理解している人が少ないように感じる。商社や代理店任せで機能や品質がいいから売れていると思っているかもしれないが、実際には温度差があるケースが多々ある。アメリカ市場では、日本の中堅中小企業の経営者でも、ジャックウェルチGE前会長に売り込むような姿勢で、真のメリットや、なぜ採用しないと損をするのかをピンポイントで打ち出す必要がある。

エレベーター・ピッチ

 アメリカでは、よほどのプロジェクトや長期的なインフラ・プラント系の商売を除いて、何回も商談を重ねることはない。到来したチャンス、その一瞬を真剣に捉えて、最初で最後の勝負だと肝に銘じて営業をするべきだ。その後、返事がないのは、返事をどのようにしてよいのか、つまりは響かなかったためであり、相手がルーズだからではない。互いの時間を無駄にしないためだ。次のチャンスは二度とないと思って、その時々の機会を最大限活かしていただきたい。相手は皆、多忙を極めている方々なので、エレベーターの中で共に過ごす数分間で全てを打ち出して仕留めるくらいの周到な準備が必要である。

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この記事の寄稿者

慶應義塾大学法学部法律学科卒業。学生時代は日本起業家協会の学生会長を務める。伊藤忠商事大阪本社・宇宙情報産業機械部門に勤務後、1999年よりシカゴのアイティエー・インク (I.T.A., Inc.) にジョインし、2005年より社長。日本の産業分野における対米進出支援、商社業務、リサーチ・調査、IT/テクノロジー支援を中心にニッポンのアメリカ事業部としての支援プラットフォームを構築。また、米国マイノリティ承認を取得し、大手企業へのCSRの一環であるサプライヤー・ダイバーシティ向上を支援している。

米オバマ大統領直轄ホワイトハウスのアジアアメリカ・メンバー(2年間)、 経済加速化イニシアチブに参加。他にも5つの団体で幹部や理事、ジェトロ・コーディネーター等に従事。支援しているインターンは500名以上。

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